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日々是暴食★トラウマめし【第5食】 極東ロシアで味わうボルシチとペリメニ

「日本から1番近いヨーロッパ」ウラジオストク

 もはや遠い過去のようだが、極東ロシアの港町・ウラジオストクが気軽な旅行先として注目されていた時期があった。きっかけは2017年に沿海地方で実施された電子ビザの導入で、手続きが面倒だったロシアの極東地域へインターネット申請だけで簡単に行けるようになったのだ。

郊外にあるウラジオストク国際空港
空港内には軍用機のような機体も

「日本から1番近いヨーロッパ」の謳い文句は当時よく喧伝されていた。実際に成田から2時間で着いたのでめちゃくちゃ近く、国内旅行感覚で行ける全くの異世界という意味では宣伝の通りだった。私は19年のG・Wに4泊でウラジオを訪れたのだが、航空券とホテル代で約7万円。今考えたら安いよなあ…。

 その後はというと、20年3月にANAの直行便が就航したが世界的なコロナ蔓延とかちあい、すぐに運休。そして昨年からのウクライナ侵攻で事実上ロシア全土へ観光旅行に行くことは不可能となってしまった。

 侵攻前は観光スポットでもあったウラジオの軍港は、緊張感溢れる軍事演習の場に。いまや米国を睨む最前線基地となり、ある意味本来の姿へ戻ってしまった。極東地域から前線へ、若者たちが兵士として駆り出され戦禍に倒れていると思うと何ともやるせない(プーチンのク●ったれ!、である)。戦前のウラジオの平和な市民生活の様子とロシア料理の魅力を今こそ振り返りたい。

シベリア鉄道の終着駅

ウラジオストク駅を中心に繁華街が広がる

 空港からウラジオストク駅までタクシーで約1時間。古代ロシアの宮殿を模したと言う、堂々たる駅舎が見事だ。ここがシベリア鉄道の始発駅で、ユーラシア大陸を横断してモスクワまでを6泊7日で結ぶ。日露戦争の時にはシベリア鉄道でじゃんじゃん戦車や兵士が送り込まれたのに、それでも勝ったご先祖さまはすごいのだ。

ロシア風の特徴的な外観の建築も見もの
街には港で勤務する軍人の姿が多い

 海沿いを散歩。特徴的な建築様式であるロシア正教の教会がかわいい。金角湾沿いを散歩していると露海軍の艦艇が停泊していた。詳しくないのでこの艦がなんのかわからないが『丸』とかを読んでいる人なら大興奮で写真撮りまくりスポットなのかもしれない。しつこいが、ここへ来るはずだったバルチック艦隊をほとんど日本海に沈めたご先祖様はすごい…。

ロシア海軍の艦艇。観光船に乗るとよく見える
軍事施設と日常生活が地続きに共存する

 歴史公園のような一角に設置されているC-56潜水艦の博物館を覗いてみた。中はとにかく狭い。魚雷のすぐ横にベッドがあるの嫌だなあ…。これじゃ熟睡できないな。歴史ある軍港都市だけに、軍事関連の博物館や施設がとにかく多いのでマニアにはたまらんだろう。

かつて使用された潜水艦が博物館に
展示品が並ぶが説明文がロシア語だけでほぼ読めず
魚雷のすぐ隣にベッドが

ソ連時代から続く大衆食堂

 さて歩いているうちに腹が減ったので何か食べたい。ガイドブックでオススメされていたロシアの大衆食堂『スタローヴァヤ』へ入ってみた。ビュッフェスタイルのファミレスのような店で、ソ連時代から庶民の店として存在するらしい。

スタローヴァヤのチェーン店
ビュッフェ形式で好きな料理を選べる
値段は安めでまさに庶民の食堂

 陳列された料理はいずれも色味が鮮やかで目移りする。うーん悩む…1人旅だし取りすぎて残すことだけは避けたい。メニュー表示はキリル文字のみだが見れば何かわかるので助かる。選んだのはボイルされたイカ、サラダ、マッシュポテト、ソーセージ、黒パン、豚肉のステーキ(だと思う)、ぶどうジュース。これで552ルーブル(約850円)、安い!

これで約850円。ボリュームはけっこうある

 ロシア料理は独特な酸味が特徴的だ。特に黒パンはずっしりした密度の味わいの中に爽やかな発酵感があり料理を引き立てる。これは美味い。「ロシア料理、口に合うじゃないか」と井之頭五郎のように心の中で呟きながらまたたく間に平げてしまった。さあ歩き出そう。

数分おきに運行されているケーブルカーで高台の展望台へ
観光客以外に日常の足で使う地元の人も

 ウラジオに行ったら誰もが行く鷲の巣展望台へケーブルカーで登ってみる。日本で有名なケーブルカーといえば、高尾山、箱根、六甲山とかか? 国内では一度も乗ったことないので、ケーブルカー童貞はウラジオで捨てることとなった。それにしてもロシア女性の美しいことよ。男はゴツゴツとしたヒョードル的な〝漢〟ばかりなのに、女性は派手なヒールやグラサンが似合うオシャレ女子ばかり。そういう国民性なのかもしれない。

金角湾にかかる黄金橋とウラジオ市内が一望できる

 素敵なお姉さんたちを横目に展望台の上まできた。金角湾にかかる黄金橋がドーンと目の前に現れる。2012年に完成したゴールデン・ブリッジは極東地域経済発展の象徴。ある意味プーチンの威信もこの橋の上にドーンっと乗っかっている。中国、韓国、日本人の観光客で賑わっていた展望台も今はさぞや寂しいのだろう。

ロシア伝統料理をアテにビールをぐいっと

観光客で賑わっていたペリメニの有名店(現在は閉店した模様)

 夕食はロシア風餃子、ペリメニが美味しいと評判の『ロシュキ=プロシュキ』へ。ペリメニ、ニシン酢漬け、ボルシチとこれでもかと典型的ロシア料理を食べてみた。やはり酸味がいい。ボルシチはそのまま食べても美味しいが、サワークリームをかけると味変してこれまた美味し。香草をのせると、さらにさらに味変してこれまた美味し。

サイズは小さいが肉汁たっぷり。日本人の口にもあうペリメニ(餃子)
ロシアの味噌汁、ボルシチ。ビーツたっぷりで体に良さそう

 そして最も「ハラショー!」だったのが生ビール。ロシア人はウォッカばかり一気飲みして早死にするもんだと思っていたので、ビールなんて酒のうちに入らないんじゃないかと思っていたが、近年はクラフトビールが流行して国内で様々なビールが醸造されているのだとか。商品名は失念したがサッパリとして口当たりのいいビールはすいすいいけちゃうライト系。ヒョードル兄貴たちはこれじゃ物足りないんじゃない? と疑念も湧いたが若者の嗜好は変わっているのだろう。

 すっかり酔っ払ってホテルの部屋へ戻ると、内線の電話が鳴った。こんな夜中に? 受話器を取ると「スペシャル・セクシーガール、OK?」と〝スペシャルな夜を楽しめる女の子を派遣しまっせ〟と男の声。そういえばロビーに化粧ばっちりのやけにエロいお姉さんたちがいた。そういうホテルなのですな!

空港を出たとこで客引きにもらった名刺。男たちにとってもハラショーな街であった

続く

【写真・文】バーガー菊池
岩手県出身。花巻東高校卒。 実話ナックルズ編集部在籍の編集者。不良からエロまで何でもやります精神の何でも屋。注射を打ちながら毎晩暴飲暴食を繰り返すハゲ巨漢。

https://twitter.com/kikuchi_BURGER