「怪異屋御門怪異譚 流言飛語」(男2:女2)

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怪異屋御門怪異譚シリーズ2作目
1作目(怪異屋御門怪異譚「鬼」)はこちら↓
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4人シナリオ 上演時間 約45~50分

登場人物
土御門 政方(つちみかど まさみち)・・・男性 雑貨屋御門もとい怪異屋御門の店主。

若道 霊華(わかみち れいか)・・・女性。お店の看板娘。巫女の家系

叉木 紅葉(またぎ もみじ)・・・女性。何か問題を抱えて店に訪れる女性

兎川 清浪(とがわ しょうらん)
……兎(巧みに色んな情報を聞き出す。情報収集に長けている)
……川(川とは流れる水。流とは根拠の無いもの。不確かなという意味がある)

【本文】
清浪:「はぁ〜。やっぱりおかしい…なんでこんなことになってるんだ…」
清浪:「一体…何がどうなってるんだ…」

ーーータイトルコールーーー
清浪:「怪異屋御門怪異譚 流言飛語(りゅうげんひご)」
霊華はカメラで和装の紅葉をパシャパシャと写真を撮っている
霊華:「あぁ〜、いいねぇ…いいねぇ…」
紅葉:「あの…もうそろそろ開店時間なので…この辺で終わりに…」
霊華:「その困った表情もいいよぉ!はぁ〜捗るぅ!!」
政方:「うーん…聞いてないねぇ」
紅葉:「もう!聞いてくれないなら霊華ちゃんのことなんてほっといて私、着替えてきますね!!」

霊華:「怒った顔も良い!!」
政方:「ほんとにただのエロおやじと化してるね」
スタスタと更衣室に向かう紅葉
紅葉:「それじゃ着替えます!!」
霊華:「ちなみに更衣室に一緒に入っても??」
紅葉:「ダ・メです!!!」
バタンと扉が閉まる
霊華:「あぁ〜…」
政方:「ほら、霊華ちゃん開店時間だから開けてきて」
霊華:「はぁ〜い」
開店しようと扉を開けようとすると外から扉が開けられる。
霊華:「わっ!!」

政方:「霊華ちゃん!?大丈夫かい?」
清浪:「あっ!!すいません!大丈夫ですか!?」
霊華:「あいたたた。大丈夫ですよびっくりしてコケちゃっただけなので」
清浪:「どうぞ。捕まってください」
霊華:「ありがとうございます」
政方:「(一息つく)…で?まだ開店前なんだけど君は誰で何用で開店前に入ってきたんだい?」
清浪:「あっすいません。怪異屋という看板が見えたのでもしかしたらここなら僕の悩みを解決して頂けるのではないかと思ったので……」
政方:「なるほど…そういうことか。じゃあ、奥で話を聞こうか」
清浪:「は、はい!」

――――奥に行く一行――――
政方:「それで?君の名前は?」
清浪:「あっ!申し遅れました!」
紅葉:「(被せて)もう霊華さん!着替えるのめちゃめちゃ大変じゃないですか!おかげで開店に遅れちゃったじゃないですか〜もう!」
清浪:「……あれ?」
霊華:「紅葉ちゃん!紅葉ちゃん!お客さんいるから!!シーッ!!」
紅葉:「え?って…あれ?…もしかして…」
清浪:「また…ぎ…?」
紅葉:「…兎川くん!?」
清浪:「やっぱりそうだ!叉木じゃないか!」
紅葉:「え?え!?どうして兎川くんがここに!?」
霊華:「えっと…もしかしてぇ~お知り合い…?」
紅葉:「うん。高校の頃の同級生!でも、なんで兎川くんがここに!?」
政方:「彼が開店前に店内に入ってきて霊華ちゃんを怪我させそうになったんだよ」

清浪:「うっ…す、すいません…」
紅葉:「ねぇねぇ霊華ちゃん。もしかしてだけど…政方さん怒ってる?」
霊華:「政方さんって自分はルーズな癖にルールとか守らない人嫌いだからね。」
紅葉:「あぁ〜。なるほど…」
政方:「はぁ〜ちょっと横槍が入っちゃったからもう一度聞こう。改めて君の名前は?」
清浪:「すいません。僕の名前は兎川 清浪(とがわ しょうらん)と申します。叉木とは…まぁ、さっき彼女が言っていた通り高校の頃の同級生です。」
霊華:「ほほぉ〜後で高校の頃の紅葉ちゃんのこと聞いてもいいですかぁ〜?」
紅葉:「ちょっと霊華ちゃん!」
清浪:「…?いいですよ」
霊華:「よっしゃ!」
紅葉:「兎川くん!」
清浪:「別に減るもんじゃないし良くないか?」

紅葉:「減るの!私のSAN値が減るの!!」
政方:「はいはい。楽しい会話に華を咲かせてるところ悪いけど彼の話の続きを聴かせてくれないか?」
清浪:「あっ!そうでした。」
「えと...あのぉ…信じてもらえるかわからないんですが…」
政方:「はぁ〜君は僕の事をバカにしているのかい?」
清浪:「いえ!そんなことは!」
政方:「ここを怪異屋と認識していたよね?ということは奇々怪々な事象を専門としている場所なんだよ」
清浪:「そうですね。ちょっと僕自身が信じられなくて…つい。」
紅葉:「まぁ普通は信じられないよね…」
清浪:「(苦笑)…僕は今、ある高校の教師をやっていまして…」
紅葉:「高校の教師!?すごいね!」
清浪:「あはは。ありがと」
「それで、僕の勤めてる高校では噂がよく飛び交ってまして…最初は真実味がある噂から始まって時が経つにつれて身も蓋もない噂が流れるようになったんです。」

霊華:「わぁ〜高校生あるあるですよね。他人の噂が気になったり尾ひれはひれが付いて拡(ひろ)まったりするのって…」
清浪:「えぇ。まぁただの噂であれば問題は無かったんです…」
政方:「…予期せぬ事態が発生したんだね?」
清浪:「ええ。実はその身も蓋もない根拠もなにもない噂も実現するようになったんです。」
政方:「全くもって荒唐無稽(こうとうむけい)な噂でも?」
清浪:「えぇ。」
霊華:「でも、そういう噂って何かしらきっかけがあるもんじゃないですか?火のないところに煙は立たないとも言いますし」
清浪:「まぁ…もしかしたらそうかもしれません。しかし、全くもってありえないことも実現しているので…」
紅葉:「ありえないこと…?」
清浪:「そう。例えば…小学生時代に流行った学校の七不思議で人体模型が動き出すってのがあっただろ?」
霊華:「あぁ〜あったあった!真夜中に鳴る音楽室のピアノとかあったねぇ」

清浪:「はい。その噂が流れ始めたある時その人体模型の顔が動いたんです。」
紅葉:「怖っ!!」
政方:「…まるで嘘から出た誠だね」
清浪:「そうなんです…その後も噂を流す度にそれが実現するようになったんです。」
政方:「ふむ…なるほど…」
清浪:「最初こそ実害はなかったんですが…」
霊華:「実害が出てしまったと…」
清浪:「はい…」
政方:「それは学校に居る時だけ起きるのかい?」
清浪:「そうです。」
紅葉:「政方さん。これってその学校の土地が丸々呪われてるとかですかね…?」
政方:「まぁ可能性はあるかもね。けど、それは現場に行ってみないと分からないかな」

清浪:「でしたら今度の木曜日に来られますか?その日、学校の鍵閉めを任されているので学校を見るにはちょうどいいかと…」
政方:「ふむ…まぁ百聞は一見にしかずとも言うし行ってみるのもいいかもね」
霊華:「夜の学校に忍び込む…!はぁ〜なんだかいけないことをしてるみたいでドキドキしますね!」
政方:「まぁ実際、部外者が学校に入っているからいけないことではあるんだけどね」
清浪:「その時は僕が処罰されるだけなのでお気になさらず…」
紅葉:「悪さをしに行くわけではないから大丈夫だとは思うよ」
政方:「そうそう。物色する訳ではなく見て回るだけだからね。そこまで時間も取らせないよ」
霊華:「ちなみにその働いてる高校はどこなんです?」
清浪:「洛明(らくめい)高校ってところです。」
紅葉:「洛明高校って進学校の名門校じゃん!」
政方:「へぇ〜そんなに有名なの?霊華ちゃん知ってる?」
霊華:「もちろん知りません!」

政方:「いいドヤ顔だね」
霊華:「へへん!」
紅葉:「この地域トップの偏差値の学校で文武両道で色々な分野で成績を残しているエリート校ですよ」
政方:「へぇ〜そうなんだ」
霊華:「わぁ〜興味無さそぉ~」
政方:「だってそんなもの飾りでしょ?偏差値が高い学校を出てもあんまり将来に関係なくないかい?」
霊華:「捻くれてるなぁ~」
紅葉:「いやいや、そういう名門校の方が大学とかの枠は広いんですよ!」
政方:「そっか…まぁ勉強できたところで将来、必要なのはコミュニケーションと愛嬌だよ。」
霊華:「でも、企業とかが見てるのって学歴とかですよね」
政方:「そりゃあ、短い時間でコミュニケーションとか愛嬌が良いとか判断できないからね」
霊華:「じゃあ、学歴必要じゃないですか?」
政方:「…ふむ。確かに」

政方:「さっき言ったことは訂正するよ。最終学歴は必要だ。」
紅葉:「最終。なんですね」
政方:「あぁ。過程が1番大事だなんて言う声もあるが結局、見てるのは結果なんだよね。だから、その言葉自体は嫌いでは無いがそれを自身の隠れ蓑(みの)のように吐き捨てる奴らは嫌いだね」
霊華:「わぁ〜...」
紅葉:「今日の政方さんいつもより荒ぶっていませんか?」
霊華:「ね。どうしちゃったんだろうね」
清浪:「それで…あの…」
政方:「おっと…放ったらかしにしてすまない」
清浪:「いえ…」
政方:「では、木曜日の夜何時頃がいいかい?」
清浪:「そうですね…だいたい21時頃だと確実に大丈夫かと…」
政方:「OK。じゃあ今週の木曜日21時に洛明高校正門前集合で」
霊華:「はーい」
紅葉:「はい。わかりました。」

清浪:「お待ちしております。」
――――間――――
―――木曜日、洛明高校正門前―――
政方:「ふむ…ここか。」
紅葉:「見た感じ何の変哲もないただの学校ですね」
政方:「そうだね。」
霊華:「にしても夜の学校に潜入…くぅ〜!ワクワクしてきましたね!」
紅葉:「ワクワクしてるのは霊華ちゃんだけだよ」

―――校内からトコトコと小走りでくる清浪―――
清浪:「お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください。」
政方:「お邪魔するよ」
紅葉:「お邪魔します…」
霊華:「おっじゃましまーす!」
清浪:「では、校内案内しながらって感じでいいですかね?」
政方:「あぁ。それで構わない」

―――校内をする清浪―――
霊華:「……結構、年季の入ってる学校ですね」
清浪:「まぁだいぶ昔からある学校ですからね。」
紅葉:「そういえば兎川くんはなんの教科を担当してるの?」
清浪:「僕は現代国語を担当してるよ」
紅葉:「確かに本読むの高校生の頃から好きだったもんね」
霊華:「何か担当してる部活とかありますか!」
清浪:「僕は運動はからっきしで本の虫だったので文芸部を担当してます」
政方:「兎川くんは生徒から気に入られてたりするのかい?」
清浪:「どうなんでしょう…?ただ、まぁ色々と相談を受けたりはします。ですが、気に入られてるかどうかは分からないですね」
政方:「そうか…ふむ…」
霊華:「どうかしたんですか政方さん。」

政方:「いや…気にしなくて大丈夫だよ」
霊華:「そうですか…」
紅葉:「あっ…化学室。もしかしてここが例の人体模型の顔が動いたって言う場所?」
清浪:「そうだよ。いやぁあの時はプチパニックになったね」
霊華:「ちなみに政方さん。」
政方:「なんだい?」
霊華:「何か感じますか?」

政方:「全くもってなんにも」
霊華:「私もです」
紅葉:「てことは元凶はここじゃないってことですかね?」
清浪:「では、違うところに行きましょう」
政方:「…うーん」
紅葉:「どうしました?」
霊華:「早く着いてこないと置いてくよ〜」
紅葉:「あっ!待って!政方さん行きましょ」
政方:「あ、あぁ。」

―――場転―――
清浪:「ここは音楽室です。」
霊華:「うわぁ!音楽室って意外と広いですよね。いやぁ〜ギターとか弾けたらかっこいいなぁとか思って選択授業で音楽取ってたなぁ〜」
紅葉:「音楽の授業にギターとかあったっけ?」
霊華:「え?うちの高校ではあったよ〜!」
紅葉:「えっ!羨ましい…」
政方:「それで霊華ちゃんはギターは弾けたのかい?」
霊華:「聞いて驚かないでください!」
霊華:「…………全く弾けなくて先生に匙を投げられる程でした!!」
紅葉:「よく単位取れたね……」
霊華:「授業は真面目にやってたから担当の先生が大目に見て単位をくれたって感じだったよ!」
紅葉:「きっと諦めなければギター上手くなるよ」
霊華:「そうかなぁ……?紅葉ちゃんも一緒にやってくれる…?」
紅葉:「もちろん!」
清浪:「ちなみに…政方さん。いかがですか?」
政方:「……ここもなにも感じないな」
清浪:「そうですか…」

清浪:「あと…思い当たる所は…屋上ですかね…」
霊華:「えっ!屋上!?屋上に行けるんですか!?」
清浪:「ええ。基本的にお昼の休憩の時しか開けないんですけどね」
紅葉:「今のご時世で屋上を開ける学校って珍しいね」
清浪:「まぁ、お昼に教師が1人はいることになってるから滅多なことは起こらないよ」
政方:「じゃあ、とりあえず案内してもらってもいいかな?」
清浪:「わかりました!」

―――屋上―――
霊華:「わぁ〜屋上だぁ〜!広ーい!」
政方:「霊華ちゃんもう夜で我々はお忍びで入ってるんだからはしゃがないの」
霊華:「はーい」
紅葉:「でも、霊華ちゃんがはしゃぐ気持ちもわかるなぁ。ちゃんと雨が凌げるように屋根ついてるし床は人工芝なのかな?くつろげるし、なんだかワクワクするの分かります」
清浪:「僕もここの屋上は好きなんですよね。何かあった時や悩み事がある時はこっそりここに来て遠くの景色を眺めてます」
紅葉:「それで政方さんいかがです?」
政方:「やっぱりそうか…」
清浪:「ここに何かあるんですか!?」
政方:「この学校は何も憑いてないし呪われてもない」
清浪:「へ…?ど、どういうことですか!?」
政方:「とりあえず、今日はもう遅いし兎川くんも学校を締めなきゃならないからお暇しよう。」
清浪:「そんな!答えがわかってるなら直ぐに教えてくださいよ!」
政方:「明日!お店で待っているよ」

政方:「霊華ちゃん。そんな屋上でごろごろと転がって満喫するのはそれぐらいにしてそろそろ帰るよ」
霊華:「はーい。」
紅葉:「兎川くん。別に政方さんは意地悪で黙秘してる訳じゃ無いと思うよ」
清浪:「だ、だけど!」
霊華:「ここで長引かせてもきっと政方さんは応えてくれないと思いますよ」
紅葉:「じゃあ、また明日お店で待ってるね。」
政方:「さぁ、解散としますかぁ~」
清浪:「あの...本当にこの土地のせいじゃないんですか!?」
政方:「君もしつこいねぇ。さっきからそうだって言っているじゃないか」
清浪:「じゃ、じゃあなんで学校内で囁かれた噂が現実になるんですか!?」
政方:「(溜息)これだけ言ってあげるか...呪われてるのはあなただよ。兎川 清浪(しょうらん)。」
清浪:「えっ…?」
政方:「だから、今回の元凶は君なんだよ」
紅葉:「えっと...どうして兎川くんが元凶になるんですか?」

政方:「そりゃあ、ここに元凶が無ければ兎川くんしかないじゃないか」
霊華:「政方さんまた言葉が足りてないですよ。」
政方:「うっ...失礼。」
霊華:「まぁ、今日は遅いですしまた明日にしましょ」
清浪:「し、しかし!」
紅葉:「兎川くん明日にしよ。さすがに夜遅くまで学校が開いてると近隣住民も不思議がってしまう。そうなったら校外でも噂の影響が出るかもだし。」
清浪:「うぅ...わかった...」
「では、土御門さん明日またそちらに伺います」
政方:「あぁ。首...いや、耳を長くして待っているよ」

―――解散する一行―――
――翌日、怪異屋御門の扉が開かれる――
霊華:「いらっしゃいませ。」
清浪:「失礼します」
政方:「来たね。待っていたよ」
清浪:「はい...」
政方:「さぁ、店の奥へどうぞ」
清浪:「はい...」

―――店の奥―――
――紅葉が部屋で荷物整理をしていた――
紅葉:「あっ!兎川くんいらっしゃい!」
清浪:「叉木...」
紅葉:「どうしたの?」
清浪:「あっ...いや、なんでもない」
政方:「さぁ、そこのソファに座って」
清浪:「はい。」
政方:「その様子だと眠れなかったみたいだね」
清浪:「当たり前じゃ無いですか!責任が僕にあるなんて言われて寝られる訳無いじゃないですか!おかげで今日は仕事に手がつきませんでした」
霊華:「それは災難でしたね」
清浪:「でも、僕が原因だとしたら災難でしたと言えなくて...」
政方:「おや、それは殊勝(しゅしょう)な心掛けだね。ここで肯定の言葉を吐いていたら何、被害者面(ひがいしゃづら)しているんだって言うところだったよ。」
紅葉:「でも、実際呪われてる訳だから被害者じゃないんですか?」
政方:「おや、鬼に呪われた紅葉ちゃんの口からその言葉が出てくるとはね」
清浪:「...鬼?」

政方:「あぁ~そういえば言ってなかったね。紅葉ちゃんは前に鬼に呪われたんだよ」
清浪:「ど、どういうことですか...?」
政方:「まぁ、百聞は一見にしかず。紅葉ちゃん見せて上げられるかい?」
紅葉:「・・・これが鬼に呪われた証拠」
清浪:「えと...その頭にあるのって...角?」
政方:「紅葉ちゃん。彼に君の事情話しても良いかい?」
紅葉:「ええ。構いません」
政方:「端的に説明すると紅葉ちゃんは自ら命を絶とうとしたんだ。」
清浪:「自ら命を...!?どうして!?」
政方:「色々あったんだよ」
政方:「まぁそれはおいといて話を進めるよ」
政方:「それで彼女は鬼に呪われた」
政方:「つまり、僕が言いたいのは呪われるという事は何かしら本人にも原因があるってことなんだよ」
清浪:「僕に原因が...?」
政方:「あぁ。何か心当たりはないかい?」
清浪:「...いえ。全然」

政方:「じゃあ、何か願いが破れた。もしくは願いが叶わなかったことはあるかい?例えば、高校の頃とか...」
清浪:「えっと...高校の頃といえば昔、好きだった人に告白出来なかったって事ですかね...」
清浪:「けど、それが何か...?」
政方:「多分だが、君は兎の怪異に憑かれている」
霊華:「兎ってなんだか可愛い」
紅葉:「でも、私みたいに姿に影響出てないですね...」
政方:「基本的に姿形に影響出ることのほうが珍しい事例だよ」
紅葉:「そうだったんですね。」
政方:「さぁ。兎川君の話に戻ろう」
政方:「君は高校生の頃、当時の願いを叶えられなかった。その頃は何も無かった。」
政方:「まぁ、普通に過ごせばこういうことにはならなかったんだ。だが、なった職業が悪かった」
政方:「君は教師になった。ましてや高校のだ」

霊華:「...?でも政方さん教師がどう関係あるんですか?」
政方:「教師っていうのは否(いや)が応(おう)でも生徒の話を聞く職業でしょ?悩みを聞くにつれて悩みを持っている生徒達と願いを叶えられなかった自分が重なっていたんだろう」
清浪:「そんなことは!」
政方:「君がそう思っていても君の深層心理。つまり無意識下で意識をしていたんだよ」
政方:「そして、無意識に生徒達の願いを叶えたいと思った...違うかね?」
清浪:「確かに悩みを持っている生徒達の悩みは解決したい。でもそれは普通、教師ならそうじゃないですか?」
政方:「皆が皆。君みたいな教師だったらきっといじめなんて無いのだろうね...」
霊華:「兎川さん。あなたは優しいですね...」
清浪:「いえ、そんなことは...」
政方:「だが、そこを兎の怪異に目を付けられた。いや、見初(みそ)められたと言った方が良いかな」
清浪:「見初められた...?」

政方:「気に入られたということだよ」
紅葉:「どういうことですか?」
政方:「人にも例えられる事が多いでしょ?」
霊華:「あぁ~ウサギ系女子って奴ですよね。」
政方:「お。霊華ちゃん説明頼めるかい?」
霊華:「えぇ~!そこまで知らないですけど確か、好きな人にはとことん尽くすわりに、警戒心が強いから人見知りする人って感じで守りたくなるような人...だった気がします」
政方:「そそそ。そんな感じ!」
霊華:「政方さんテキトー」
政方:「まぁまぁ。」
紅葉:「それで、今回のことと兎にどんな関係があるんですか?」
政方:「兎と願い、噂は密接な関係にあるんだ。」
清浪:「...?」
政方:「兎はどこに住んでいると思う?」
清浪:「えっと...森とか原っぱ...とか?」
政方:「違う違う。それは野生の兎だろう?そうじゃない。」
霊華:「...月...ですか?」

政方:「さすが、霊華ちゃんだ。色んな伝承に兎は月にいると言われている。」
政方:「そして、兎川くん。君は月に願ったんじゃないか?『生徒達の願いを叶えたい』と...」
清浪:「...そうですね。よく帰りが遅くなることがあって、そういう時に空を見上げると...月があったので生徒の悩みが解決するようにと願ったことは良くあります。」
政方:「その行為が兎の怪異に見初められたって事だよ。他人の幸せのために願う献身的な姿にきっと、心打たれたのだろうね。」
紅葉:「そして尽くすため、今回のようになんでもかんでも叶えたってことですか?」
政方:「そういうことだ」
政方:「そして、兎というのは情報収集能力に長(た)けているんだ。言葉として兎耳(うさぎみみ)や鳶目兎耳(えんもくとじ)という言葉があるくらいだからね」
政方:「ただ、ここまで大規模になったのは兎川くんが本を読むことが大好きだったことが仇(あだ)になったのかもね」

霊華:「また説明が抜けてるせいで皆、頭に『?(はてな)』が浮かんでますよ。ちゃんと説明して下さい」
政方:「おっと、失礼。」
政方:「つまりだ。兎川くんに憑いている兎は兎川くんを通して願いを叶えている。」
政方:「そして、人間とは何の生き物かわかるかい?」
霊華:「はい!」
政方:「はい、霊華ちゃん」
霊華:「哺乳類です!」
政方:「合ってるけどそれは生物学上のだね。ただ、今回聞いていることは違うよ」
紅葉:「なんだろう...?」
政方:「何かを考えるときに思い浮かべるものは何をまず思い浮かべる?」
紅葉:「う~ん...映像?」
政方:「惜しい。それは結果だね。」
清浪:「文字...つまり、言葉ですか?」
政方:「正解だ。兎川くん。」

政方「つまり、人は言葉の生き物だ。」
政方:「何かを考えるとき思い浮かべるときはまず、言葉を思い浮かべる。」
政方:「そこから、派生して映像や画像のようなものを浮かべる。」
紅葉:「なるほど...つまり、本をよく読む兎川くんは本の文字を映像として浮かべることに秀でているからその兎川くんを通して色々と叶えている兎が噂を叶えやすくなったと...そういうことですね?」
政方:「そういうこと。」
清浪:「な、何か対処する方法とかないんですか!?例えば...祓うとか!?」
政方:「う~ん。そうだねぇ。」
政方:「祓うのは正直、得策とは言えないなぁ...」
紅葉:「どうしてなんですか?」
政方:「愛と憎しみは紙一重っていうでしょ?言葉にも愛憎というくらいだし。」
政方:「その兎は兎川くんが好きで尽くしている。それを無理にひっぺがえしたらどうなると思う?」
霊華:「恨みをもって襲いかかってくる...そういうことですか?」

政方:「そういうこと」
霊華:「ということは...今回は私の巫女装束の出番はないってことですね」
政方:「なんなら今回は僕らに出来る事はなにもないよ」
清浪:「そ、そんな...」
清浪:「じゃあ、僕はずっとこのまま...」
政方:「他にも方法はあるよ。」
清浪:「そ、それはなんですか!?」
政方:「学校の教師を辞める」
政方:「生徒のために動いている兎川くんの行動に兎は好きになったんだ」
政方:「だったら、教師を辞めて生徒を捨てたって兎に失望させればいい」
清浪:「いや、でも...」
紅葉:「政方さん。他の方法ってないですか?教師は兎川くんの昔からの夢だったんです...それを捨てろっていうのは...あまりにも辛すぎます...」
政方:「はぁ~。他の方法だ。」
政方:「兎と共存し、コントロールする。」
清浪:「コント、ロール...?」
政方:「あぁ、コントロールだ」

紅葉:「怪異をコントロール出来るんですか!?」
政方:「まぁ、今回のように怪異に見初(みそ)められなければ出来ない芸当だけどね」
清浪:「その方法って...?」
政方:「まず、叶えてくれたことに感謝する。そして、叶えなくていいものは叶えなくていいとちゃんと優しく言ってあげる。」
「要(よう)はありがとう。ごめんねをちゃんと伝えた上で取捨選択をするってことだ」
清浪:「なるほど...わかりました!そして、決めました!」
「僕は願いを叶えてくれるこの兎と...生きていくことにします!」
霊華:「きゃー!!なんかプロポーズを聞いているみたいでキュンキュンしました!」
紅葉:「確かに。プロポーズみたいで...私もドキドキしました!」
政方:「まぁ、君ならその兎と上手くやっていけそうだな。」
清浪:「はい!頑張ります!」

―――清浪お店から出て行く―――
霊華:「にしても対処方法がなんだか...恋人との生活みたいでしたね。」
政方:「共存するっていうのはそういうことなんだよ。」
霊華:「なんか、それって簡単に出来そうですごく難しいですよね。恥ずかしさとかで上手く伝えられなくなりそう。」
政方:「でも、言葉にしなきゃ伝わらないからね...言葉とは相手を傷つける刃にもなり得て相手を救うことができる偉大なものなんだよ。ただ、それを操る人間もそれを知っていなくちゃならないんだ。」
霊華:「なんか...政方さんってたまに心に刺さること言いますよね」
政方:「何々~?霊華ちゃんもしかして僕に惚れたかい?」
霊華:「はいはい。ホレタ。ホレター」
政方:「わぁお。清々しい程に棒読みだね」
紅葉:「でも、これで上手くいくといいですね」
政方:「まぁ、彼なら上手くやると思うよ」

―――以下後日譚(演じても演じなくても良い)―――
――怪異屋御門の扉が開かれる――
政方:「(N)今回の後日譚。噂の事件が解決してから約一ヶ月が過ぎた頃。」
霊華:「う~ん。どうにも私スランプみたいです~」
政方:「おや、霊華ちゃんスランプなのかい?珍しい」
政方:「...ってなんのスランプなんだい?」
霊華:「そりゃあ決まってますよ!紅葉ちゃんの新衣装ですよ!!」
紅葉:「そんな声高らかにお店の制服改造宣言をしないでください!」
政方:「まぁ、紅葉ちゃんがこの店で働き始めて約3ヶ月になるけど毎週、毎週服が変わってるものね」
霊華:「スランプだぁ~。思いつく性癖ガン刺さりのエッロい服が十個しか思いつかないよぉ~。あぁ~。」
紅葉:「それはスランプじゃなくてネタ切れって言うんですよ!って十個も思いつくならスランプでもネタ切れでも無いじゃないですか!!」

――お店の扉が開く――
紅葉:「いらっしゃいませ~!」
紅葉:「あ!あなたは!」
政方:「おや、兎川くんいらっしゃい。」
清浪:「どうも。」
政方:「今日は何用だい?件(くだん)の事象があれから良くならないのかい?」
清浪:「いえ、あれから政方さんの言われた通りに叶えてくれたことに感謝したり、ちゃんと言葉にして伝えたりしていたら収まりました。」
紅葉:「おぉ~それは良かったね!」
清浪:「その後も感謝を伝えたりしていたら...」
政方:「ん...?」
清浪:「...おいでトーカ。」

――すると清浪の肩から赤目の白い兎が出てくる――
紅葉:「わぁ!可愛い兎さん!!」
清浪:「この子の名前はトーカ。願いを叶えてくれる兎で兎叶(トーカ)です。こうやって肩に乗ってくるのですがどうやら生徒には見えないようでしたのでこの子が願いを叶えてくれる兎の正体だとわかりました。」
政方:「へぇ~。こりゃあ珍しい。」
紅葉:「政方さん。この子が何かわかるんですか?」
政方:「式神だね。もしくは守護霊獣。兎川くんを守ってくれる存在だよ。」
清浪:「ええ。そうだと思いました。僕に危害を加えずこんなにも懐いてくれてるので直感的にわかりました。」
霊華:「ひーーらめいたー!!」
紅葉:「びっくりしたぁ~いきなりどうしたの霊華ちゃん。」
霊華:「紅葉ちゃんに次の着せたい新衣装!!」
政方:「因みに何を着せたいんだい?」
霊華:「バニーガール!バニー衣装を着せたいです!!」
紅葉:「今日はもう開店していますしこの通り制服着ちゃってますから着せられませーん」

清浪:「バニーガール...(ごくり)」
――すると肩からぴょんとトーカが飛び地面に着陸すると目が光った――
政方:「おっと...これは...」
清浪:「あっ!まずい!!」

――次の瞬間、紅葉の制服がバニーガールに変わった――
紅葉:「...へ?」
霊華:「バニーガールだぁ!!」
政方:「兎川くん。君、紅葉ちゃんのバニーガール姿イメージしたでしょ?」
清浪:「うっ...すいません。」
政方:「いや、良くやった。」
清浪:「えへへ...」
紅葉:「いやいや!良くないですよ!!ってちょっと霊華ちゃん!太ももをすりすりするのはいい加減止めて!!」
霊華:「この黒の網タイツと下に見える白磁(はくじ)のような肌が織(お)りなす黒と白のコントラストがもう、堪らないですなぁ」
紅葉:「もうっ!なんでいつも私はこんな目にあうの~~!!」
政方:「(N)さぁ、今回の怪異譚はこれで終わり。」
紅葉:「(N) 妖怪、物の怪、怪異でもし悩んでいたら怪異屋御門にお越し下さい」

霊華:「(N)あなたの話譚(わたん)を怪異屋御門にてお待ちしております」
清浪:「あなたの身近にも、もしかしたら怪異は潜んでいるやも知れませんね」
政方:「怪異屋御門怪異譚 流言飛語(りゅうげんひご)これにて了



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