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ノス鉄でキテツは作れるか?


小さな私鉄の小さな気動車

 和歌山県御坊市に紀州鉄道という路線長2.7kmのミニ私鉄がある。そこで活躍していたのが、これまた可愛らしいサイズのレールバス・キテツ2だ。
 2024年1月現在、休車状態ではあるが車籍はまだ残っている。
 
 これをNゲージで作りたいと思って久しかったところ、ついに昨年末、ベースにうってつけのモデルが発売された。
 
 TOMYTECのノスタルジック鉄道コレクション第4弾(以下「ノス鉄」と表記)。この中の「富井電鉄キハ20形レールバス」が、キテツと同じLE-Car IIをモチーフにデザインされている。
 3種類のうち一つは、前頭部のカタチもキテツと同じだ。
 
 ただ、ノス鉄のフォーマットに合わせるべく、全長が短くデフォルメされている。
 果たしてノス鉄からキテツは作れるのか、検証してみる。

その前にTOMIXハイモ180

1996年に発売された有田鉄道ハイモ180キットを仮組したもの。大元をたどれば1986年に発売された富士重工LE-Car II完成品シリーズである。

 実はもう一つ、加工ベースの候補が手元にある。
 
 これまた同じLE-Car IIシリーズである、有田鉄道ハイモ180のTOMIX製キットだ。十数年前にたまたま見つけて、ベースにできると喜び勇んで買ったものの、意外に相違点が多くて手を出せず、塩漬けにしてきたのだ。
 
 『鉄道ファン』1988年10月号(通巻330号)の第3セクター鉄道特集に樽見鉄道時代の諸元表が載っている。
 主要寸法についてはキテツ1・2の北条鉄道時代(フラワ1985)にほぼ一致する。実車に関しては同等と見なせそうだ。
 
 TOMIXのキットは縦横ともに17mmの正方形断面。実車の面長な表情には一歩及ばないが、プロポーションに違和感はない。そもそも基本設計は、樽見鉄道仕様の完成品として発売された当時の1986年のもの。当時のモーターの大きさを考慮すれば大いに頑張っていると言えるだろう。

ノス鉄のレールバス

LE-Car IIをモチーフにしたと思しき、ノス鉄第4弾のレールバスの一種。加工前提であれば専用ケースに付属する未塗装車両として購入してしまうのが、実は最も確実な入手手段である。

 前面ガラスや乗降扉、五角形のライトケースなど個々のディテールに関してはこちらに軍配が上がる。
 側窓が二段窓となっているので、モチーフとして一番近いのは今は亡き三木鉄道ミキ180形といったところだ。
 
 問題はプロポーション。先述の短くデフォルメされた全長に加え、パッと見て縦につぶれたように見える顔立ちだ。
 
 しかしながら、意外にも横幅は17.1mm。TOMIXのハイモとほぼ同じ。面長どころか横長顔になってしまっているのは、天地方向が16.6mmと寸詰まりになっているせいだ。 

真横から見たノス鉄レールバス。中央部が一段上がった形状の車体裾に注目。

 さらに車体中央部が0.5mmほどせり上がっていて、そこに床下機器がハマり込む格好。既存のノス鉄用動力を使いつつ、車高を抑えるようにアレンジされた形だ。
 
 ノス鉄が大事にしているコンセプトは、おそらく「富井電鉄」としての世界観だ。LE-Carに似せることの優先順位は低いのだろう。

結局、種車にふさわしいのは?

ノス鉄レールバス(左)は路線バスである富士重5Eに準じた前面ガラスで、実在するキテツに近い。TOMIXハイモ(右)は観光バスベースの前頭部デザインなので印象が大きく異なる。

 まぁ、どっちもどっちではある。
というか、前頭部と側面ガラスの形状を考えると、ニコイチで作るのが一番楽なのだと思う。
 
 その上で、面長なプロポーションを重視するなら、TOMIXハイモをベースにノス鉄のディテールを移植する。
 加工の簡易化を優先するなら、ノス鉄をストレッチしてハイモの窓ガラスを移植する、といったところか。
 
 それでも、TOMIXハイモ単独から作る以外の選択肢がなかった従来に比べて、ノス鉄の製品化でキテツ模型化のハードルが下がったのは事実。
 むしろ、今となっては手元にハイモが残っていることの方がラッキーだ。

 機は熟した。覚悟を決めて作ることとしよう。

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