りおんさん書

これまでのCMは単なる序章だった。日清CMアオハルかよ。最終回に感じる業界安定トップの傲慢。

 2017年、日清食品による有名アニメ作品のif「もしあのキャラクターたちが現代日本の高校に通っていたら?」を描くCMが放送された。すでに目にされた方も多いだろうと思う。

 これまで、キキがトンボに届け物をする「魔女の宅急便編」、読者モデルとなったクララにコンプレックスを感じるハイジの「アルプスの少女ハイジ編」、文化祭のステージでマスオさんが……という「サザエさん編」と続き、本来の設定とは違う描写について賛否はあれど、それなりに話題にはなったようである。

 そしてついに、シリーズ最終回編が公開された。

キキの勇気。ハイジの葛藤。サザエの決意。
次の主人公は、あなたかもしれない。
たとえ世界で何が起ころうとも
誰も青春を奪うことはできない。

そして最終章へ
ちゃんとの思いをちゃんとする
HUNGRY DAYS
カップヌードル

 この予告編に続いて公開された本編は、しかし、期待外れなどという言葉では言い合わらすことなどできはしない代物だった。

 この最終回で、キキとトンボの出会ってから仲良くなる流れハイジとクララの関係性、そしてサザエさんとマスオさんが共に過ごしだ時間の長さ、それらに比するものを持ちようのない、バックボーンを持たない(少なくとも視聴者が知りようのない)オリジナルキャラを用いて描かれたのは、彼らが、ニュースどころか周囲の状況すら目に入らず自分たちの世界に没頭するというギャグアニメであった。

 キキの勇気。ハイジの葛藤。マスオの決意。果たして彼らは、それらを受け継いだのだろうか?当人たちにその意識はなくとも、製作側が描き方として意識し、それが視聴者に伝わっているのだろうか?少なくとも、私にはそういったものは感じ取れなかった。

 恋は盲目とは言うものの、これは行き過ぎた描写であると思う。例えばこのCMがシリーズなどではなく単発であったなら、大ヒットとまではいかずとも「まあそういうのも(ギャグとしては)アリっちゃアリだよね」程度の評価は得られたのではないだろうか。

 しかし、今回このCMはシリーズ最終回と銘打たれている。そして、これまでシリーズに出演してきたのは宮崎アニメ「魔女の宅急便」、名作として名高い「アルプスの少女ハイジ」、そして放送開始から60年近くにもなろうかという国民的作品「サザエさん」である。

 それら借り物のキャラクターを使ってこのCMシリーズで描かれたのは、今回のようなギャグシーンではなく、賛否あるオリジナル要素ではあってもキャラクターたちのIFを描いた「原作通りではないが、ありえたかもしれない真面目な恋愛ストーリー」であった。

 それらを総括するはずの最終回が、この有様なのである。今回最終回編が公開されて以来、私見ではあるが騒ぎ立てるのはニュースサイトばかりで、例えばTwitterの一般ユーザーの間でトレンドワードに入るなど話題になってはいないように感じる。もちろんそれがすべてではないにしろ、日清食品という企業は、このCMを企画した人々は、今回のCMシリーズで、もしかしてハイジやキキやサザエさんを「使ってやった」とでも思っているのではないかという疑念さえ抱いてしまう。有名作品を客寄せにし、踏み台に使った挙句がこのざまなのだから。

 もし皆様が、このCMについて盛りあがっている人たちをご存知ならばご一報いただきたい。ただ、私の狭い視野に入らないだけで世間一般、視聴者の大多数にはこのCMが大絶賛されているのだとしても、私は今回のCMシリーズ、いや最終回視聴以前よりもカップヌードルを購入しようと思ってはいない。ただそれだけの話である。 

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