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クローゼットから溢れる、ひと夏の恋

最近すっかり肌寒くなり、秋服・冬服を着る季節になった訳だが、シーズンが変わる度、私はクローゼットの前に立ち尽くして思う。

(え、全然服なくない……??去年の今頃何着てたんだっけ……?)

無論、目の前にはたくさんの服がある。クローゼットには、溢れんばかりにニットやスカートが掛けられている状態だ。でも、着たい服がないのだ。

とはいえ、毎シーズン思っていることなので対処法はわかっている。そう、服を買いに行けば良い。ということで、この前の祝日と先週の日曜、私は立て続けに洋服を買いに行った。

2日間も買い物に費やせば、さすがに満足する枚数の洋服が買える。特に2日目に行ったLOWRYS FARMでは、とびきり可愛いワンピースを2着も見つけてしまった。

(うわ〜、どっちにしようかな……)と1万円と書かれた値札を見ながら悩みつつ、とりあえず試着室に入る。中でワンピースに着替え、試着室を出ると、その途端に店員さんがぱぁっとした笑顔で駆け寄ってきて「え〜!!ほんっっとうにお似合いです〜!!」と、ちょっとこちらが引いてしまうほどの勢いで褒めてくれた。でも、そんなに褒められたら満更でもない。すっかりほくほくとしてしまった私は、結局2着ともお買い上げした。

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というわけで、今私の部屋のクローゼットには買いたての「新しい服」がたくさん並んでおり、ほぼ毎日何かしらの「新しい服」を着られる状態なのだが、これがめちゃめちゃいい。

理由は単純で、「新しい服」というだけでテンションが上がるからだ。毎朝(今日は何着ようかな〜)とクローゼットの前でうんうんと考えているとき、もちろんその日の気温や、誰と会うか、どこに行くかといったことも大事な判断材料となる。でも、それ以上に「新しい服だから」というただそれだけの理由が、私にとっては何よりも有力なのだ。

ちなみに、この前買った中で最も安価な服は、GUで購入した990円のトップスだ。流石のGU、超がつくプチプラなわけだが、そのトップスですら、家で初めて袖を通すときはとびきりわくわくしたし、鏡を見て(なんて素敵な洋服なんだろう……!)とにやついていた。つまり、安いか高いかに関わらず、私にとって「新しい服」にはそれだけの価値があるのだ。

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そんなことを考えていたとき、これは何かに似ていると思った。そう、恋だ。新しい洋服に袖を通したときのときめきは、恋に落ちたときのそれと、完全に一致している。新しい服を着ていると、それだけで気分が前向きになるのと同様に、良い恋をしていると、それだけで人生が楽しくなる。

それに、恋愛において、一緒に過ごす期間が長ければ長いほど仲が深まることは、洋服においても言える。昔から着ている服は肌に馴染む感じがするし、着ていてなんとなく安心感がある。逆に、軽い気持ちで付き合った相手とは案外すぐ別れてしまうことが多いように、格安通販で勢いでポチッたプチプラ服は、結局あまり着ずに処分してしまうことも少なくない。

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考えれば考えるほど、恋愛と洋服に対する気持ちの共通点が見つかる一方で、ひとつだけ疑問があった。これらの気持ちが同じだとすると、冒頭に書いたように「毎シーズン、新しい洋服を買いたくなる」のはなぜだろう?

たしかに恋愛においても、長く付き合えば飽きが来るというか、マンネリ化することは多々ある。でも、流石に毎シーズン彼氏を取っかえ引っ変えしたいという願望に駆られる訳ではない。

しばらく考えていて、ピンと来た。おそらく、洋服とは、季節が終わると強制的に別れが来るからだ。夏が終わると、夏服は収納ケースの奥底にしまわれ、代わりに半年間しまっていた冬服が、クローゼットの手前側に並ぶようになる。

この「夏服・冬服」という概念を恋愛に置き換えて考えると、「夏用の彼氏・冬用の彼氏」ということになるだろう。夏用の彼氏と過ごした後、半年ぶりに冬用の彼氏と会うことを想像すると(うーん、なんか違うな……?)となるのは至極当然なことだと思うのだ。なぜなら、半年間も会わなければ自然と恋は冷めるし、半年間の夏用彼氏との恋愛期間を経たことで、私の好みや価値観も少なからず変わっているからだ。

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つまり、洋服に関して、私は夏が来るたび「ひと夏の恋」を繰り返しているのかもしれない。そりゃ、クローゼットもパンパンになるのがうなずける。なんと恋多き人生。自分の行動原理がわかった私は、妙に納得した。

きっとこれからも、私は夏が来るたび、冬が来るたび、新しい服に恋をしたくなるのだろう。そう考えると、クローゼットの中に溢れる洋服が愛しく思えた。さて、明日はどの服に恋をしよう。

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