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今の「学び」の姿をめぐる一冊

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
皆さんは、小中学校時代のこと、覚えてますか?
本格的に自分が社会と交わりはじめる機会である初等・中等教育は、人格形成においても非常に重要な時期です。
また、そうした子どもに対し教育する側の責任も大きなものです。

本書は、全国での非常にユニークな学校教育の取り組みを取り上げた一冊です。



全5章で構成される本書は、各章でそれぞれの教育機関を取り上げます。
特徴的なのは、次の構成です。

本書では、各学校からそれぞれ1名の先生(※子どもの村とサドベリースクールでは、「先生」ではなく、「大人」や「スタッフ」と呼ばれます)にナビゲーターとしてご登場いただくことにしました。

旅立ちの前に

「はじめに」では、(一般的な学校の姿に対する)「「あたりまえ」が揺さぶられ、自分の立っていた場所が、否応なく地殻変動させられるその瞬間が。自分の知っていた世界がいかに狭く、ちっぽけであったかを突きつけられるその一撃」が、本書で紐解かれると述べます。


第1章 「北九州子どもの村小学校・中学校」

第1章で取り上げられているのは「北九州子どもの村小学校・中学校」です。

きのくに子どもの村学園は、元大阪市立大教授の堀真一郎(1)氏が1992年に設立した私立学校である。(中略)
教員は子どもたちから「先生」ではなく「大人」と呼ばれており、子どもたちからニックネームや「さん」付けで呼びかけられる。毎週、すべての児童・生徒と大人が集まる全校ミーティングが開催されることも大きな特徴である。

本書18P

ナビゲーターの方の、次の一文が胸を打ちます。

承認というのは、能力の承認ではないのですよね。どうしても、成長する子を見るのはすごく嬉しい。ただ、やはりそれだと、能力主義に陥りかねないところがあるので、もちろん能力の承認もあっていいけれど、まずは能力の承認というよりも存在の承認でなければいけないなということを、日頃、頭のどこかに置くようにしています。

本書69P

第2章 「伊那市立伊那小学校」

第2章で取り上げられているのは「伊那市立伊那小学校」です。

伊那小学校は、長野県の南部、伊那市の中心部にある公立小学校である。創立は1872年(明治5年)で150年以上の歴史がある伝統校である。今から40年以上前、1978年から総合学習が学びの中心に据えられ、自然豊かな環境の中で子ども主体の教育が実践されている。

本書79P

本校では、なんと教員がその時々の子どもたちの状況に合わせて柔軟に時間割を変えているとのこと。授業の終了時刻の時点で、授業がクライマックスを迎え、子どもたちの集中力が続いているならば無理に授業を終了せずに、区切りの良いところまで延長されるのです。

ナビゲーターの方は、本校での自身の学びを次のように語ります。

やる気を教師の尺度で測っては駄目で、そこを信じるというか、いかに子どもの今を見取るか、内を探るか。そこを私はこの伊那小に来て学んだと思います。

本書119P

第3章 「三河サドベリースクール・シードーム」

第3章で取り上げられているのは「三河サドベリースクール・シードーム」です。

1968年にアメリカのボストンに創設された私立学校サドベリー・バレー・スクール(SudburyValleySchool)。その教育理念に共感し、同様の理念の下で運営している学校が、「サドベリースクール」である(1)。本書で取り上げる三河サドベリースクール・シードームは、「子どもを全面的に信頼する」サドベリーモデルに共鳴し、数年の準備期間を経て、2011年に愛知県岡崎市に開校された。

本書140P

サドベリースクールのルールは、皆で話し合いのもとに「変更できる」ことが特徴です。そのルールがコミュニティにとって不要だと感じられれば、皆で話し合い、必要に応じて可変することが可能な校則です。
ナビゲーターの方は、本校での学びの特長を次のように語ります。

自分の学びの場の環境を、自分が整えるというか。そこにも自分の責任があるということ。それが、学びの主体は自分自身だと思うところにもつながる。

本書184P

第4章 「横浜シュタイナー学園」

第4章で取り上げられているのは「横浜シュタイナー学園」です。

横浜シュタイナー学園は、シュタイナー教育を実践する全日制の小中一貫校。2005年に開校し、ユネスコの理念を実現する学校として、2011年にはユネスコスクールに認定された。

本書197P

シュタイナー学校は、すべての教科を芸術的に学ぶことが特徴です(算数でさえ!)。ナビゲーターの方は、本校での方針を次のように語ります。

大人がそこまでの話をしなくても、自分がこうしようと思わないで、子どもがどうしたいのかをお手伝いするということが一番大事。

本書248P

シュタイナー教育は、JMAMでも次のようなわかりやすい解説書が発刊されています。その革新的な教育手法を、ぜひご一読ください。


第5章 「教育観を磨くということ」

まとめの第5章「教育観を磨くということ」では、これまでのユニークな各校の教育方針を通し、さらになお著者陣は(教育分野において)「ユートピアは存在しない」と語ります。

果たして、その趣旨は?

その答えはぜひ本書でお確かめください!

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