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ARCHIVE~まとめ

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過去に発行され人気を博した記事をお届けする「ARCHIVE」をまとまめました!
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記事一覧

【手術の名医たち】脊椎脊髄手術 多くの症例に触れて培った技術で患者にとって最も負担の少ない手術を 田村 睦弘

毎日多くの手術に立ち空間的な認識力と技術を磨く近年、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、側弯症などの背骨の疾患に対し、背中の大きな切開や、筋肉の剥離を抑えた低侵襲手術が行われている。田村睦弘医師はそうした治療を積極的に取り入れ、6000例以上の脊椎脊髄手術を手がけてきた。現在では内視鏡を用いたMED(脊椎内視鏡手術)や、後方からの低侵襲固定術(MISt手術)、体の横から椎間板ケージを挿入するXLIF(腰椎側方進入前方固定術)など、幅広い手技を導入し、一人ひとり患者にあわせて使い分け

【手術の名医たち】脳疾患治療 脳血管内治療の発展と共に歩み最新手技の確立に力を尽くす 石井 暁

黎明期から脳血管内治療に触れその普及を確信する腕や太ももから通した管を通じて、脳内の血管を治療する脳血管内治療。近年では、脳動脈瘤や脳梗塞に対する重要な治療手段として広く行われるようになってきた。医師になって以来、その発展とともに歩んできたのが石井暁医師だ。石井暁医師が研修医だった頃は、脳動脈瘤に対するコイル塞栓術のための機器が国内に導入されたばかりという、脳血管内治療の黎明期にあたる時期だった。当時既に、脳動脈瘤に対して開頭手術は確立されていたが、脳の奥深くに生じたものなど

【手術の名医たち】心臓手術 洗練されたチームでより無駄のない手術を目指す 田端 実

ボストンで出会ったMICSを心臓外科医としての強みに心臓手術における、目覚ましい進歩の一つとして、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁の疾患や心房細動などの手術の際に、大きく開胸することなく心臓にアプローチするというMICS(低侵襲心臓手術)が挙げられる。この手術をライフワークとして取り組んでいるのが田端実医師だ。心臓血管外科は、執刀医として独り立ちするまでに時間を要すると言われている。そうした状況の中、若くしてMICSを含めた心臓手術に精通し、現在42歳で年間300例を超える心臓手術を

【対談 勝田 紘史 × 城 勇太 × 堀島 行真】プロスポーツチームドクターの担う役割

選手の健康を総合的にサポート 「勝田先生には、チームとしてもう3年近くお世話になっています。チームドクターの大切さは、最初の1年目から実感しました。怪我や故障をする前から医師のフォローを受けられるのは、選手にとって大きなメリットです」と堀島選手は語る。  トレーニング中、怪我や故障を生じる選手は多い。そうしたリスクを避け、選手のパフォーマンスを維持・向上させるために、医学的な観点からさまざまなアドバイスを行うのが、チームドクターの役割の一つだ。  「例えば、『トレーニング

【名医インタビュー】患者目線で歩み続ける 医師たちの軌跡 出沢 明/脊椎内視鏡手術

高度かつ独自のテクニックを要求されるPED 腰の痛みや痺れを引き起こす、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの脊椎脊髄疾患。その治療において、内視鏡を用いてわずか8mmの切開で行う「PED(経皮的内視鏡下椎間板摘出術)」を国内に導入し、脊椎内視鏡手術の発展を担ってきたのが出沢明医師である。  PEDの最大の特長は、その低侵襲性にあるだろう。極めて小さな切開で、患者の負担を抑えて治療でき、早期に社会復帰して積極的に身体を動かすことまで可能だ。  「背中の筋肉へのダメージを防げる

【名医インタビュー】患者目線で歩み続ける 医師たちの軌跡 平川 和男/人工股関節置換術

最小侵襲手術の名手に全国から患者が押し寄せる 鎌倉市の一角に、国内で最高峰と称される人工関節置換術に特化した医療機関、湘南鎌倉人工関節センターがある。北は北海道、南は石垣島まで、同院には全国から患者が押し寄せ、手術は3カ月先まで予定がいっぱいだという。  従来、20cmほどの大きな切開で行われてきた人工股関節置換術。それを平川和男医師は7~8cmほどと極めて小さな切開で行う。カーテンを開くように筋肉を分け入り、その空間で人工股関節を設置する。皮膚だけでなく、筋肉や靱帯もほと

【名医インタビュー】患者目線で歩み続ける 医師たちの軌跡 酒向 正春/リハビリテーション

脳神経外科医からリハビリ医に転身 ねりま健育会病院(東京都練馬区)の回復期リハビリテーション病棟の廊下には、100mを優に超える真っ直ぐな廊下が伸びている。そこを車椅子で通りかかる高齢の患者一人ひとりに「調子はどう?」「痛みは?」と気軽に声をかけていく酒向正春医師。多くの患者が病室から出て、談話室に集まって会話やテレビを楽しんでいる様子に眼を細める。  「この長い廊下は病院の象徴的な存在です。患者さんが普段の生活の中で自然とリハビリができる環境になっています」  1本の廊

【最新医療最前線】世界初の装着型サイボーグ「HAL」~「IT医療革命」の最前線で縦横の活躍:山海 嘉之

―医療用HALでは治療が困難とされる難病にも対応しているんですね。  画期的な点は装着することで人をサイボーグ(体の一部を機械に置き換えた人間)化して、身体の一部のようにHALが機能することです。体に埋め込まなくても効果を出すことができ、「装着型サイボーグ」と呼んでいます。  医療現場では、医療用HAL下肢タイプを用いて神経・筋疾患患者の身体機能を改善・再生するための「サイバニクス治療」が行われています。  2016年、日本では脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮

【肝胆膵の名医】腹腔鏡下手術で肝胆膵領域に挑む がん治療のリードオフマン 伴 大輔×島田 和明

かつては困難だった肝胆膵外科手術も安全に行うことができるようになった―肝胆膵(かんたんすい) がんの難しさと、その理由を教えて下さい。 伴 肝臓・胆道・膵臓の外科治療は、それぞれに難しさは異なります。一概にはいえないのですが、難治性がんが多いということが挙げられます。肝臓にできるがんの種類や状態によって、外科切除だけでなく、ラジオ波焼灼、薬物療法、放射線治療などの方法があるなかで、最も適した方法を選択しなければなりません。 膵がんは外科治療だけではなく、抗がん剤治療と組

【心疾患、大動脈疾患の名医】「選択」と「集中」をモットーに 24時間365日の診療体制で心疾患の多くの症例をこなす 畑 正樹

厚生イズムが作り出す柔軟で自由な診療体制―心臓血管外科と循環器内科の連携は日常ですか。 今では全国どこの病院でも内科と外科による循環器疾患治療の共同作業を行っており、それを「ハートチーム」といいます。当院では昔から実行しています。週1回の合同カンファレンスは普通ですが、当院は廊下ですれ違ったときや医局にいるときでも垣根なく話し合っています。「毎日がカンファレンス」です ―垣根のない自由な風潮は、どのようにしてできあがったのですか。 理事長の目黒泰一郎先生が作った「選択

【消化器内視鏡の名医】わが国の消化器内視鏡手術を、けん引する「大圃組」 大研 研

オンライン受信相談で患者さんの手間を省いた―NTT東日本関東病院は2020年8月からオンライン受信相談をスタートされました。最初は消化管内科のみでしたが、どのような意図で始められたのでしょうか。 患者さんの手間を省きたいという気持ちですね。以前からセカンドオピニオンを求めて遠方から訪れる方が多かったんです。ただ、消化管内科の場合、わざわざ来ていただかなくても地元の医療機関で撮影した写真を見るだけで、おおよそ適応かどうかがわかります。 がんは基本的に粘膜(表面)で発生し、

【脳神経外科の名医】「 患者のためにベストを尽くす 」 技術を培った心の姿勢 谷川 緑野

「手術を極めたい」師との出会いが原点に脳血管の一部がこぶのように膨らむ脳動脈瘤は、破裂するとくも膜下出血を生じ、死に至る場合もある危険な疾患。この脳動脈瘤の手術の名手として、数々の難症例を治療し、国際的にも注目されているのが谷川緑野医師だ。 「脳神経外科で重要なことは、医師の『ハート』だと考えています。困難から逃げず、患者のためにベストを尽くすという心の姿勢。そうしたハートは、技術にも当然表れます」 そう語る谷川医師の原点には、師となるもう一人の「名医」がいた。 旭川医

【小児心疾患の名医】小さな子どもたちを救うため、 低侵襲手術を極め続ける 高橋 幸宏

手術時間の短縮こそが低侵襲そのもの東京・府中市の榊原記念病院の3階廊下には、場に不似合いな人工心肺装置がひっそりと置かれている。約60年前の発表当時最新鋭とされた装置で、ドラムセットのように大きい。この装置の開発は心臓手術を飛躍的に前進させたが、患者の全身循環を人工的に維持するため、手術が長時間に及ぶと身体への負荷を避けられない。この負荷を「侵襲」というが、高橋幸宏医師を支えてきた信念は「低侵襲手術」の一言に凝縮される。 「手術そのものが侵襲であることに加え、全身の臓器発

【肝胆膵がんの名医】肝胆膵外科の進展の中、高度な技術と患者本位の姿勢を培う 上坂 克彦

病変周囲の構造を立体的に把握する能力が求められる肝臓や胆道、膵臓に生じる肝胆膵がんは、治療が難しく予後も厳しいことから難治がんの代表とされている。その手術を専門とし、特に難関といわれる肝門部胆管がん手術の実績も重ねているのが上坂克彦医師である。 肝胆膵外科の難しさ。上坂医師は理由として臓器の構造の複雑さを挙げる。「肝臓や膵臓の内部には細胞が詰まっていて中が透けて見えません。その上、肝臓には動脈や静脈、門脈などの血管や胆管が通い、周囲に臓器が密接しています。出血を避けながら