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疾患解説25~まとめ

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各領域を代表する「名医」による疾患解説です。 胃がん、大腸がん、狭心症、脳梗塞、脊椎・脊髄疾患など代表的な25疾患について解説しています。 (『名医のいる病院2023』から転載)
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記事一覧

健診による早期発見が大切 胃がん

疾患の特徴逆流性食道炎やピロリ菌が原因  部位別に見たがんのうち、国内における罹患者数・死亡数ともに多いのが胃がんです。  胃がんは胃の最も内側の粘膜で生じ、進行に伴い粘膜下層、固有筋層と胃壁内へ広がり、最終的には他の組織へと転移していきます。  主な原因は2つ。最も多い理由がピロリ菌の感染ですが、衛生環境の整備や除菌療法の普及により、近年は減少傾向にあります。一方、増加傾向にあるのが逆流性食道炎を要因とする食道胃接合部がんです。食生活の欧米化による肥満の増加を背景に、胃

早期発見で根治が期待できる 大腸がん

疾患の特徴早期発見・治療につながる内視鏡検査が発達  大腸がんは国内で最も罹患数が多いがんです※。40〜50代から増加し始め、高齢になるほど罹患率も高くなるのが特徴です。ただ近年は世界的な傾向として30代の若い患者さんも増加しており、原因解明が急務とされています。  生活習慣の欧米化による高脂肪・低繊維食をはじめ、飲酒、喫煙、肥満などが発生要因と考えられています。また「リンチ症候群」や「家族性大腸腺腫症」のような遺伝性疾患から大腸がんに至るケースも一部にあり、家族歴(近親

検査技術の向上で早期発見が増加 肺がん

疾患の特徴CT検査の普及で早期発見・早期治療が可能に  肺を構成する気管支や肺胞の細胞のがん化である肺がんは、細胞の形態と細胞障害性(殺細胞性)抗がん剤の効きやすさから小細胞がんと非小細胞がんに大別され、非小細胞がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分類されます。  小細胞がんは肺野や肺門で発生、増殖が速く、転移や再発しやすいがんです。腺がんは主に肺野で発生、最も患者数が多い肺がんですが、小型で初期に発見できれば治癒しやすいです。扁平上皮がんは肺野・肺門で発生、喫煙との

遺伝や女性ホルモンの影響も発症リスクに 乳がん

疾患の特徴女性が罹患するがんで最も数が多い  女性のがんの中で一番患者数が多い乳がん。11人に1人の女性が罹患するといわれており、日本での患者数は年間約9万5000人を数えます。乳房の中にある乳腺に生じるがんであり、乳房のしこり、皮膚表面のひきつれ、乳頭からの血液分泌といった症状が現れます。  乳がんの発症には、さまざまな要因が考えられ、そのひとつが女性ホルモンの過剰です。初潮年齢の低年齢化と閉経年齢の高年齢化が進んだことで生涯における生理の回数が増え、女性ホルモンの影響

新規薬物療法を含めた集学的治療が重要 肝がん(肝細胞がん)

疾患の特徴肝細胞がんの原因は肝障害にあり  肝臓は、腸管から吸収した養分を利用しやすい成分に変えたり、有害物質を解毒・排出したりするなどの重要な役割を担っています。そして、肝臓に発生するがんの総称が「肝がん(肝臓がん)」です。 「肝がん」は、肝臓の細胞が、がん化して発生する「原発性肝がん」と、大腸がんなどが肝臓に転移して発生する「転移性肝がん」に分けられます。原発性肝がんの中でも、肝細胞から生じたのが「肝細胞がん」で、胆管細胞から生じたのが「肝内胆管がん」です。  一般に

手術の安定、化学療法の日進月歩で治療が進歩 膵がん

疾患の特徴予後の悪い、難治がんとして悪名高い  膵がんは自覚症状に乏しく、進行が早いため、早期の発見と治療が難しい難治がんとして知られています。早期の膵がんは、かなり精密な健康診断をしないと、見つけるのが困難です。具体的には、腫瘍マーカーを含む採血や造影剤を使用した精密なCT検査、MRI検査が必要になります。 さらに小さながんを発見するには、超音波内視鏡(EUS)が最も有用です。  前述の検査で膵のう胞(液体の入った袋状のもの)が見つかれば、膵がんに進行しやすいIPMN(

切除手術をベースに放射線・化学治療と連携 食道がん

疾患の特徴周囲の臓器に浸潤しやすくリンパ節にも広がりやすい  食道は、喉と胃の入り口をつなぐ管状の臓器です。食道がんは一般的に食道を覆っている粘膜から発生し、粘膜下層、筋層へと広がっていきます。食道は体の中央部に位置し、多数の主要臓器に接していることから、食道がんは周囲の臓器に浸潤しやすく、リンパ節にも広がりやすいという特徴があります。  初期には自覚症状は、ほとんどありません。飲食時の胸の違和感やつかえ感、咳、声のかすれなどが複数あったら、食道がんが疑われます。がんが大

進行が比較的ゆるやかでも油断は禁物 前立腺がん

疾患の特徴男性のがん罹患数第1位 PSA検査が有効  前立腺は男性のみが持つ栗の実大の臓器で、そこに発症するのが前立腺がんです。年間約9万5000人が罹患し、男性の中では肺がん、胃がん、大腸がんと並び、頻度の高いがんのひとつとなっています。「高齢化」「食生活の欧米化」などを背景に、患者さんの数は増加傾向にあります。  前立腺がんは他のがんに比べ、ゆるやかに進行し、予後も良好なケースが多いという特徴があります。早期は自覚症状に乏しく、進行すると頻尿や排尿障害、血尿などの症状

生体の恒常性を保つ腎臓にできる 腎がん

疾患の特徴早期発見には画像診断が有効  腎臓は、そら豆のような形をした握りこぶし大の臓器で、腹部の左右にひとつずつあります。血液の浄化や尿を媒介しての老廃物の排出、体液の調整など、生体の恒常性を保つための役割を担っています。尿は腎臓内にある腎実質という組織で生成され、腎盂にたまった後、尿管、膀胱へと送られます。   その腎実質の細胞が、がん化して悪性腫瘍になったものを「腎がん(腎細胞がん)」といいます。同じ腎臓にできたがんでも、腎盂(尿の通り道)にある細胞ががん化したもの

患者数の増加する婦人科がん 卵巣がん

疾患の特徴自覚症状が出にくいため早期発見・治療が難しい  卵巣に生じる悪性腫瘍である卵巣がん。日本では患者数が増加傾向にあり、年間約1万3000人が新規に罹患しています。罹患率は40代から高くなり、ピークを迎えるのは50~60代です。  初期の卵巣がんは自覚症状が出にくいため、患者さんの約半数は、病期が進行した状態(Ⅲ~Ⅳ期)で見つかります。有効な検診も確立していないため、早期発見・早期治療が難しい疾患です。子宮頸がん検診の際、超音波検査で卵巣の確認もすることをお勧めしま

再発が多い疾患 膀胱がん

疾患の特徴血尿が出たらご用心 早急に泌尿器科を受診  膀胱はへその下あたりに位置し、尿をためて排出する役割を担う袋状の臓器です。膀胱の内側は尿路上皮という粘膜で覆われており、膀胱がんのほとんどは、この部分から発生します。  進行するにつれ、尿路上皮の下にある筋層や膀胱外の組織に広がっていきます。深達度によって「筋層非浸潤性がん」と「筋層浸潤性がん」に大別されます。膀胱がんは多発して生じることが多く、治療が終わっても高頻度で膀胱内に再発するのが特徴で、継続した定期検査が必要

大半は乳頭がん。進行度や大きさで治療方針を決定 甲状腺腫瘍

疾患の特徴良性と悪性があり、鑑別が重要  甲状腺は喉ぼとけのすぐ下にあり、気管を前から取り囲むように位置する内分泌臓器です。蝶が羽を広げたような形をしています。骨や神経、精神などの成長・発育や新陳代謝を促すホルモンを分泌します。  甲状腺に発生する腫瘍は20〜50代の女性に多く見られます。良性と悪性があり、それを鑑別することが重要です。良性はしこりが柔らかく、押すと動きやすいのが特徴です。悪性は触ると、硬くギザギザとしていて、押してもなかなか動きません。  甲状腺腫瘍は症

放置すると心筋梗塞につながる 狭心症

疾患の特徴血液が足りない!という心臓からの危険信号  心臓はポンプのように拍動して、全身の臓器に血液を送る重要な器官です。同時に、自らの筋肉にも血液を送り届け、動力源にしています。心筋に血液を送る血管が、心臓の表面を走る冠動脈です。狭心症とは、この冠動脈が動脈硬化などで狭くなることで、血流が滞り、心筋の血のめぐりが悪化して起こる疾患です。狭心症は数種類に大別できます。  労作性狭心症は運動や力仕事をして、心筋に十分な血液が送れないことで起こります。症状は胸痛や胸が締め付け

心臓の弁の異常でポンプ機能が悪化 心臓弁膜症

疾患の特徴心臓のポンプ機能の悪化で寿命を縮めるリスク  全身に血液を送り出し循環させている心臓は、筋肉でできた4つの部屋に分かれています。それぞれにある4つの弁が、ポンプのように血液を一定の方向に送り出します。  弁が開きにくくなる狭窄症と、閉じなくなり逆流する閉鎖不全症を、総じて心臓弁膜症といいます。心臓のポンプ機能が悪化し、全身に十分な血液が送れなくなります。  初期の自覚症状としては息切れや胸の違和感、痛み、疲れやすさ、めまいなどが挙げられ、特に運動負荷がかかると症