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父の一周忌

2020年7月の4連休。ボクはコロナ禍の中、4か月ぶりに福岡への帰省を予定していた。父の一周忌の喪主を務めるためだ。しかしながら東京でのコロナウイルス感染者が急増しているため、帰省するかどうか凄く悩んでいた。ボクはPCR検査を受け、陰性を証明できたら福岡の皆んなに安心してもらえるかな、と考えるようになった。そして母親、家族、ご住職さんが心配されないようPCR検査を受けることにした。自主的に病院で検査を受けたため、費用は28,000円かかったが、安心して貰えるなら安いものだ。陽性だったときは保健所からすぐ連絡が入るらしい。少しドキドキしながら結果を待っていたが無事陰性を確認できた。これで少しでも皆んなの不安を取り除けるかな。そう思い、帰省を決めた。

4連休の初日、ボクは午前9:00に空港に到着。羽田空港の保安検査場前の人はまばらだった。東京は対象外となったが、GO TOトラベルキャンペーンが始まったので混んでると思っていた。やはり自粛の気持ちがはたらいているのだろう、ボクはそう思った。そして飛行機に乗込む。今回座席は窓側を予約した。ボクはいつもはすぐ飛行機を降りれるよう通路側の座席を予約する。でも今回はゆっくり景色を見ながら移動したかった。3人掛けの真ん中のシートは空いていた。約2時間のフライトを経てようやく福岡の街が見えてきた。4か月ぶりに見る福岡の街。嬉しさが込上げてくる。ボクは『帰ってきたばい、福岡。』そう心の中でつぶやいていた。

そして妻、娘と4か月ぶりの対面を果たす。もの凄く嬉しい。そして喜びが爆発。『会えるまで長かったー!』と純粋にそう思った。2人とも元気そうだった。安堵の気持ちも込上げてくる。やはりリアルの世界はいいな、ボクはそう思った。この気持ちはバーチャルでは味わえない。確信をした。

帰省3日目。父の一周忌の日がきた。母親、妹、弟とは会場で合流の予定。ボクは妻、娘と3人で電車、タクシーを乗継ぎ会場に向かう。到着はボクたちの方が早かった。一周忌の会場は福岡市内の教善寺。庭には大きな松の木が数本あり、きれいに整えられている。天気は快晴で風はほとんど吹いていない。松の木は悠然と立っていた。本堂の飾りは金色に輝いていてきらびやか。そして大きい。その豪華さに凄みを感じた。改めてそう思った。そんな観察をしているうちに、母、妹、弟が到着。全員揃った。しばらくしてご住職が本堂に入ってこられた。昨年の父の葬儀でもお世話になったご住職。お変わりないようだ。ご挨拶をしたあと、さっそく父の一周忌が始まった。お経を唱える声が本堂に響く。太く、きれいな声だ。素晴らしい。ボクは昨年もそう思ったことを思い出していた。そして焼香へと導かれる。ボクは心の中で父に話しかけながら焼香をした。そして家族が続いた。焼香の後もご住職のお経は続く。暫くしてお経が終わり、父の一周忌は終わった。ご住職にお布施をお渡しし、ボクの喪主としての役目も終了。ホッとした瞬間だった。教善寺を出る前に父に感謝の気持ちを伝えた。その後場所を移し、6人でお寿司屋さんでの食事。父の思い出話に花が咲き、懐かしい場面が思い浮かぶ。今日は天気予報は雨だったが快晴だった。父が晴れ男だったからかな、なんて話でも盛り上がった。6人が揃うことが久しぶりだったので皆んなの近況報告にも花が咲いた。楽しい食事会は2時間続いた。

そして4連休の最終日。妻と娘と大濠公園内のカフェで4連休最後の食事をとることにした。さほど待たずに入室できた。テーブルの間隔は広く空いていて、テラスに出るドアはオープンの状態。換気対策はばっちりだ。安心して食べれるかな、ボクはそう思った。ランチには食べ放題のパンもついていてお得感を感じた。ボクはオムレツのランチを、妻と娘はハンバーグランチをオーダー。食事をしながら話が弾む。皆、笑顔。ボクはこんな楽しい時間を過ごせることに感謝の気持ちをもった。

楽しい時間はあったという間に過ぎていった。もう福岡空港に向かう電車に乗らないと。カフェを出なければならない時間が迫っていた。この瞬間はとても寂しいが、もう単身赴任を7年もしているので対応できるようになった。ボクはそう思った。カフェを出ると青空が広がっていた。少しばかり涼しくしてくれる風も吹いている。心地よかった。妻と娘に見送られ、ボクは福岡空港に向かった。お互いに大きく手を振り合って別れた。2人を必ず幸せにするぞ、ボクはそう決意を新たにしていた。

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