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(マイルドな)「空気を読まない人」が、やはり組織には必要だ

 キラキラしたスタートアップには、優秀でステキな人が多いと思う。みな考えかたが多様性に富み、とても大人だ。全員で一丸となって協力することが得意だし、ノリもいい。だから、「ビジョンで一つになる」チームが作れるし、その結果、そのチームの眩しさに憧れ、さらにまた優秀な人材も入ってくる。そういう会社は、SNSを使っての採用もとても強い。

 しかし、会社が順調に伸びているときはいい。多少ハードワークな状況になってもチームの雰囲気は良いままだし、基本的にみなポジティブなので、社内であからさまな愚痴を聞くこともなく、前向きに、一生懸命に働くことができる環境が維持される。

 ところが、なんの前触れもなく、ある日突然優秀なメンバーが辞めるというような事態が発生する。ついこの間まで、何の不満も漏らすことなく、前向きにバリバリ働いていたのに。そして、それに続くかのように優秀なメンバーの離脱が目立つようになり、それに連動して会社の業績もだんだんと悪くなってくる。その結果、またさらに退職者が増えることになる。

 これは、よくある、ある時期までとても順調だったスタートアップが、原因不明の理由で突然に崩壊し始めるという例だ。トップのカリスマ性が強く、「ビジョン」「世界観」などという言葉が大好きな組織に多い。

 真の原因は何であろうか。それは、会社内でタテマエやお題目が重視されるあまり、「前向きでない人間は人ではない」みたいな空気が強く醸成されてしまったという要因が大きい。そう、「空気」である。言い換えれば社風とか、今ふうにいうと社内カルチャー、ともいえるかもしれない。

 採用ページでも、「会社のメンバー紹介」には、「みんな他者のことを思いやり、他責ではなく自責で、率先して自分で課題を解決できる人ばかり」などと書かれている。そのような「採用・組織ブランディング」がいつのまにか社内メンバーへの無言の圧力となり、会社に対して「何かふつうにモノを言う」ことさえネガティブな姿勢だと思われるようにになってしまう。何かしらの意見を言うことは、会社や経営陣に対する愚痴になるという、とても極端なとらえ方をされてしまうのだ。


 ふつう、スタートアップは、「大企業の硬直した文化」を反面教師とし、空気を読む、忖度する、というカルチャーとは反対の方向を志向する。確かに、役職や肩書きに縛られないとか、フラットな組織文化を実現しているという意味では、それはある一定程度は実現できているのかもしれない。

 しかし、会社のメンバーとして「常にいい人」であることを期待されると、そしてそれに応えようとするあまり、(トップや上層部を含む)他の同僚に対して一切の否定的な発言がしづらくなり、どうしても前向きな、あたりさわりのない発言しかできないようになる。つまり、自分たちが嫌ってる「空気を読む」文化を、大企業とはまた別の形で体現してしまっている状況になるのだ。


 実際、「臆せず、きちんとモノを言えるメンバー」がいる組織は強い。全員が全員ではなく、ある一定数そういう人がいるだけでもいい。そういうメンバーが、普通は言いづらい「率直な意見」を正面からきちんと述べることにより、経営陣は自分たちの誤りに気づき、他のメンバーも、組織に対して自分の意見を言いやすくなる。

 そして大切なのは、その発言が、「きちんと考えられた上での」率直な意見であるということ。タイトルに「マイルドな」と付けたのはそういう意味。

 真性のKY(空気読めない)人材は、しばしば人の感情を完全に無視した発言をしてしまう。そういう発言は、チームの雰囲気を極端に悪くする。そんな人が多い組織は、別の意味で崩壊してしまう危険性が高い。

 人の感情にはきちんと配慮した上で、それでも必要と思うことは、空気を読みすぎずにきちんと進言できる。こういう人材は、特に今の時代においてとても重要だ。部下には指示が多く偉そうだが上層部に対してはやたらおとなしいマネージャーがいるが、そういう人材は論外。部下だけにではなく、トップや上司に対して臆せずモノを言える、そういう人材こそが組織には本当に必要なのだ。

 空気を読むというのは、悪くいうと、リスクを取らない姿勢をつらぬいているともいえる。その方が波風も立たず、自分の身も安全だ。誰からも恨まれることもない。

 しかしそうやってメンバー全員が「いい人」を演じてお互いに空気を読みすぎていると、冒頭の例のように、組織内部に(誰も指摘しない)問題が累積してしまう。そして、それがある日突然、「大きな問題」として急激に噴出してしまうのだ。


 だからこそ、空気を読まない人、それもいい感じにマイルドに、そういう人の存在が組織にとっては大切だ。空気を読まないこととマイルドであることのバランスは難しくはあるが、それこそ、人間としてのバランス感覚であり、これができる人こそが真に優秀な人だと思ってる。

 そういう人間に率先してなれること、また、会社がそういう人材を多く受け入れられること、目指したいものである。


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