見出し画像

不動産大家と比較したスモールビジネス買収の投資利回り

 近年では、サラリーマンの副業大家が急増したが、全国的な空室率の上昇で家賃相場は下落していることから、大家の投資利回りはそれほど高くない。中古のアパートを取得して、満室にしたとしても表面利回りは平均7%前後しかない。

「利回りが7%」ということは、物件の取得金額を回収するのに14年以上かかることを意味している。さらに、空室が生じることのマイナス分と建物の修繕費などを差し引けば実質利回りはそれよりも低くなり、大家業の魅了は薄れてくる。

一方、日本ではまだ少ないが、売りに出ているスモール事業を、個人が買収して副業をスタートするケースが海外では増えてきている。スモールビジネスのM&Aでは、年間を通した実質利益の2~5年分が譲渡金額の相場になっている。不動産と同じ方法で計算をすれば、M&Aで取得した事業の利回りは20~50%となり、大家業よりも投資効果は遙かに高い。ただし、売りに出ているビジネスには欠点も隠れているため、それを事前に把握して解決できる方策を立ててから購入することが重要になる。

《不動産大家の利点と欠点》
○大家の仕事量は少なく、副業として手掛けやすい(不労所得)
○物件を売りたくなった特にには、次の買い手を見つけやすい
○不動産自体の価値(主に土地)は消滅しにくい
×部屋数により家賃収入の上限値は決まってしまう
×地震などの自然災害で資産が毀損するリスクがある
×類似物件の増加による家賃相場の下落

《スモールビジネス買収の利点と欠点》
○事業買収後の努力により、収益を無制限に伸ばすことが可能
○不動産よりも投資効果が高い事業案件を見つけやすい
○不動産と比べるとスモールビジネス買収の平均相場は安い
○ゼロから起業して事業を軌道に乗せるまでの時間を短縮できる
×経営者の手腕により事業の成否が分かれる
×事業が失敗した時の換金価値はゼロになってしまう

M&Aに適したビジネスの特徴としては、法規制によって既得権益が守られている業種や、固定客との関係が強く築かれている、事業運営のマニュアルが確立していることなどが挙げられる。日本のスモール事業買収では、医療や介護分野のビジネスが主体だが、海外では売買されるビジネスが多業種に及んでいる。その中でも、無店舗で行えるスモールビジネスの人気が高まっている。

たとえば、米フロリダ州ウィンターパークで移動販売をするフードトラックは、開業から6年の業歴で、年間売上が約15万ドル、トラックや調理器具などを含めた設備(5万ドル相当)、5名の従業員を含めて 9.9万ドル(約1,100万円)で売りに出ている。人気料理のレシピや、トラックの巡回先、固定客と繋がっているソーシャルメディアのアカウントもそのまま引き継げる。こうしたビジネスを購入することも、近年の独立スタイルとして浮上してきている。

フードトラックの経営は、自分が店長として働くことの他、信頼できるスタッフに店長を任せる方法もある。事業取得後に売上を伸ばすことができれば、買値よりも高く事業を売却する、という出口戦略もある。

JNEWS 公式サイト
■関連記事:開業医と調剤薬局を対象にしたスモールM&A
■関連記事:医療クリニックの売買価値とM&A仲介ビジネス
■関連記事:副業オーナとしての店舗経営とスモールビジネス
■関連記事:規制緩和される市街化調整区域を狙った不動産投資

■この記事はJNEWS会員向けレポート「JNEWS LETTER」の冒頭部を抜粋したものです。公式サイトではJNEWS LETTER無料体験購読の申し込みも受け付けています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?