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女性から広がるパラレルキャリア/副業トレンド

 サラリーマンの他に、もう一つの副業を持つワークスタイルは、政府が推進する「働き方改革」のテーマとしても掲げられるようになったが、米国では20代、30代の若い世代がパラレルキャリア(本業と副業の両方を持つ)を目指す「サイド・ハッスル(Side hustle)」というムーブメントが起きている。ハッスルは“お金を稼ぐ”という意味のスラングだ。

彼らは、リーマンショック以降の不況で、就職難を経験していたり、多額の学生ローンを抱えて社会人になった世代である。そのため、一つの会社に依存することのリスクを肌で知っており、収入源は分散して築いたほうが賢いと考えている。 加えて、「仕事は楽しくなくてはいけない」という価値観も併せ持っているのが特徴である。

サイドハッスルの副業ネタは、本業に関連した知識やスキルを高められるものや、好きな趣味を収益化できるもの、在宅で行えるオンラインビジネスなど、幅広い分野で考え、実行されている。多額の資金を投じる副業でなければ、失敗しても傷は浅く、生活に困ることもない。そうした、柔軟な発想と行動力からは、定年後の生き方を模索している中高年者が見習うべき点も多い。

【好きなことを副業にするサイドハッスル】

 米国ではサイドハッスルに適した仕事の特徴として、以下のような項目が挙げられている。すべてに合致する仕事はないと思うが、この中の幾つかに当てはまることが望ましい。お金のためだけに、嫌いな仕事を続けることは苦痛だが、自分の夢や目標に関連したテーマを見つければ、副業へのモチベーションも変わってくる。

○本業の空き時間を臨機応変の活用できる仕事
○自宅に居ながらできる仕事
○本業のリスクヘッジとなる収入が見込める仕事
○自分が強い興味や関心を抱ける仕事
○自分の経験や得意な能力を高められる仕事
○いまの本職や起業の人脈形成に役立つ仕事

たとえば、飲食業で起業したいという目標がある人にとって、レストランでアルバイトをすることには、時給以上の価値がある。店のスタッフとなることで、給料を貰いながら、飲食店の調理、接客、マーケティングや経営ノウハウを学ぶことができるためである。

本業と並行しながら、毎週決められた時間に働くのが難しいということであれば、フリーランスの立場で関われる仕事を見つけることもできる。店の経営に関心のある人からは、店内の様子や接客態度を覆面調査する「ミステリーショッパー」の仕事が副業として人気だ。

米国には、ミステリーショッパーのオンデマンド人材を採用している調査会社が多数あるため、その中から信頼できる業者に登録をして、指示に従った調査を行う。調査のクライアントは、その店のチェーン本部やオーナー経営者である場合と、ライバル企業の場合がある。

ミステリーショッパーの仕事は、顧客を装いながら店内の調査を行い、スマホのカメラで店内を隠し撮りすることもある。1回の調査にかかる時間は約30分で、報酬相場は7ドル前後。調査の結果に対しては、クライアントからのレビューが付き、高評価の調査員ほど仕事が増えていく仕組みだ。この仕事は、小売店や飲食店で起業したい人にとって、報酬を貰いながら、他店の経営状況をリサーチできる利点がある。

【サイドハッスル・ムーブメントの社会的背景】

 米国で、若者層からサイドハッスルの副業ブームが起きている要因には、中高年層と比較して、パートタイムで働く者の割合が圧倒的に高く、しかも大学時代に借りた学生ローンの返済に追われていることがある。大学授業料の高騰により、米国の学生ローン残高は1兆ドルを超している。

日本でも若者の非正社員率は高いが、それに加えて、男性と女性の年収格差が大きく開いているのが特徴。20歳から35歳までの労働人口で、正社員の職に就けない女性の割合(非正社員率)は5割近くになり、男性のように年収は伸びていかな傾向が顕著にみられる。よって、男性と女性では2倍以上の年収格差が生じている。

こうした状況から、日本でもサイドハッスルのムーブメントが起きるとすれば、男性よりも女性、それも若い世代から積極的な動きが出てくると予測するのが妥当だろう。既にその動きは、メルカリなどを利用した個人売買で副収入を稼ぐ女性が増えていることからも読み取れる。

《海外の女性が手掛けているサイドハッスル例》
・バーチャルアシスタント
・美容ブロガー
・ファッションブロガー
・ヴィンテージアパレル、手芸品の販売
・ソーシャルメディアコンサルタント
・フリーランスのWebデザイナー
・ジュエリーデザイナー
・旅行ブロガー
・パーソナルトレーナー
・ライター
・IT分野のコンサルタント
・ウェルネスコーチ
・インテリアデザイナー
・メイクアップコンサルタント

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