スポーツ万能だった俺は高校にはサッカー推薦で入学した。
当然、入学前からサッカー部の練習に加わった。
そして一年生の時にすぐにレギュラーを獲得し、
毎週行われる他校との練習試合に汗を流していた。
そんなある日、サッカー部の先輩から、
『俺のバイクをお前買わないか？』と言われて、
『え？バイク持ってるんですか？』
『あぁSUZUKIのマメタン(50cc)だけどな』
『マメタン？知らないな？今度見に行ってもいいですか？』
『おぉいつでもいいぞ』
『じゃあ今日の帰りでもいいですか？』
『え？お、おぉ急だな。まぁいいぜ』
と言うことで帰りに早速、先輩の家にお邪魔した。
立派な一戸建てのモダンな大きな家の端っこに、
赤い小さなアメリカンタイプのオートバイが置いてあった。
『先輩！あれっすか？』
『そうそう、こいつ。なかなか可愛い奴だろ？
基本的にノーマルだがハンドルだけはノーマルからチョッパータイプのものに変えてある。カッコいいだろ？』
俺はそのバイクに見惚れていた。
”なんか丸く赤い小さなタンクがいいな。まるで可愛い女の子見たいだ”
『気に入りました！俺、買います。いくらで売ってくれますか？』
『ん〜そうだな？可愛いいサッカー部の後輩だしな？８万円と言いたいが５万円で売ってやるよ。』
『えっ〜！３万円ぐらいになりませんか？』
『バカいえ５万円でも安いくらいだぜ。３万円じゃ売れんな。どうする？』
『わかりました。じゃあ５万円でいいです。でも今は金が無いんで少し待ってください』
『わかった。じゃあ二週間待つから金揃えてくれ。もし二週間たっても金が出来ないようなら他の奴で欲しいと言ってる奴がいるので悪いがそいつに売るぜ？』
『了解っす！』
とは行っても言ったものの、
どうやって金を工面するかこの時はまだ悩んでいた。
猶予が二週間しか無いので日雇いのバイトを何日かやるしかないなと思い、
友達連中に何かいいバイトはないか聞いて回った。
色々出てきたが俺は楽そうで日払いで一日1万円もらえる
”よみうりランド”でのバイトに決めた。
おなじ中学出身の友人と二人でやりたいので、
バイトの話を持ってきた”K”に二人同じ日にバイトが出来るかどうかを聞いてもらったら、OKだったので当日駅で待ち合わせ、
二人で朝早くから”よみうりランド”へと向かった。
よみうりランドに着いてみると、
まだ開演二時間前だと言うのに物凄い行列ができていた。
『な、なんだこの行列は？』
俺たちは行列に並んでいる人に
『あの〜すいません、今日は何かあるんですか？』
『えっ！知らないの？松田聖子のコンサートがここであるんだよ』
『えっー！』
驚かずにはいられない。
なにせこの時代は松田聖子の全盛期で物凄い人気だったのだから。
（続く.....）