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【妄想企画】海竜博物館

※注 今回の話は、公民連携の企画案でもありますが、具体的な話なのでいわき市を知っている方だとイメージしやすいかと思います

いわき市は、フタバスズキリュウという日本で最初の恐竜の骨の化石が出た地域だ。昔のドラえもんの映画「のび太と恐竜」のピースケのモデルのなったことでも知られている。厳密には陸上生物しか恐竜とは呼ばないようだが、フタバスズキリュウが出たことで、日本でも恐竜の骨が出るんだ!とその後の発掘や研究が盛り上がり、日本でも多くの恐竜化石が発掘されていったことは間違いない。

海竜の里センター

さて、そんなフタバスズキリュウが発掘されたいわき市久之浜町の大久川のすぐ近くに、「海竜の里センター」という公共施設がある。できたのは、1991年なので、33年前だ。今回は、この施設を巡る話をしていきたい。

海竜の里センター 外観
なぜか関係ない観覧車とブラキオサウルス滑り台とその他恐竜オブジェ
室内には一応フタバスズキリュウの復元模型 顔がかわいくないw

いわき市では、この度、観覧車などの電動遊具が壊れたことを受け、そもそも利用者数の減少からの赤字経営だったこともあり、この施設の行政による運営を2023年度末で終了し、民間活用主体を探すサウンディングを行っている。

写真を見て貰えると分かると思うが、何も学べることもなければ、楽しいことも何もないのだ。お金を落とすような場所は観覧車しかなかった。これで赤字になるのは仕方がないだろう。

いわき市海竜の里センターの利活用に関するサウンディング型市場調査の実施について
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/16977861

行政は、人口減・税収減の時代に合わせ経営のスリム化を図るため、こうした不採算施設を整理することを積極的に行っている。そんな背景もある。

この施設は、このまま行くと、誰でもいいからと家賃を払ってくれる民間に払い下げて、デイケアセンターとか事務所などに使われるのが関の山だろうと想像に難くない。せっかくのフタバスズキリュウの産出地が、なんとも勿体ない。。

ということで、私ならこうするという再建策をこのnoteでは、考えてみたいと思う。タイトルにもしたが、私なら「海竜博物館」にする。なぜそう考えるのか、以下を読んで頂ければ多少伝わるのではないかと期待して記事を書いてみる。

まず最初に、比較対象として、恐竜で盛り上がる福井県の恐竜博物館がどんな状況なのか、少し見ておきたい。

福井県立恐竜博物館

公式ホームページ

2023年のリニューアルの内容の分かりやすい紹介記事

2024年1月で通算入館者数1300万人突破
https://www.chunichi.co.jp/article/834797

入館者数年度別推移
https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/museum/entry.pdf

コロナ前でも年90万人が訪れる施設となっていて、2023年のリニューアルや北陸新幹線の開業、恐竜ホテルや恐竜列車など、まちをあげての企画やPRなどの要因もあるので、2024年は、どこまで観光客を伸ばせるか注目が集まっている。まあ、私が言うまでもなく恐竜は、人気があるコンテンツということが分かるだろう。私も子供のころは夢中になって、各地の展覧会に連れていってもらったし、化石堀りなども当然やっていた。子供が見たいとなれば、その親も一緒になって来ることになるので、その経済効果は極めて大きいものだと想像できるだろう。

さて、いわき市の化石関連施設を比較すると心が折れそうになるが笑、現実を受け止めないといけない。次にいわき市の数字を見ていく。
ちなみに、いわき市のスパリゾートハワイアンズの入場者数は、最近では年150万人くらいを推移しているので、地方にある施設としては、かなり健闘していることが分かる。

海竜の里センターの入館者数

海竜の里センターは、年間で、令和3年21,690人 、令和4年22,454人、 令和5年  2,827人(遊具の稼働停止)と発表されている。
肌感覚では1日10人も来ていたか怪しい印象があるので、令和5年の数字は想像通りでもある。むしろ観覧車があったときにも、こんなに利用者いたのか数字の取り方が怪しい気さえする。

石炭化石館ほるる

石炭化石館
エントランスには、フタバスズキリュウの全身骨格と産状化石のレプリカ

フタバスズキリュウの全身骨格レプリカがある、いわき市常磐湯本町にある石炭化石館ほるるは、1984年に出来た施設だ。入館者数は、ネット上で見つけられた数字だと平成29年84,004人、平成30年87,703人ということになっている。福井の恐竜博物館の10分の1にも満たない。

石炭の坑道も体験できるが、子供には本当に暗くて怖い・・

これは不都合な真実であるが、石炭化石館があるいわき市常磐湯本町は、化石とは何の関係もない。常磐炭鉱の展示施設をつくるとなったときに、炭鉱だけでは企画が弱いとなって、ちょうど見つかったフタバスズキリュウをくっつけて、石炭化石館になったそうだ。

まあ、炭鉱の展示だけで人が呼べないのは理解はできる。子供のころ、何度もこの施設にいったが、恐竜ゾーンの次に、地獄巡りのような地下の暗い炭鉱ゾーンを抜けないと帰れないつくりになっていて、動く炭鉱夫の人形も怖すぎて、いつもダッシュで駆け抜けていたという記憶しかない笑

もう一つこの施設が勿体ないと思うのは、地獄の炭鉱ゾーンを抜けた先にあるお土産売り場だ。そこには、いわき市にも、フタバスズキリュウにも関連するものは何も売っておらず、関係のないティラノサウルスのぬいぐるみとか、どこからか仕入れた化石のレプリカとかが並んでいるのみだ。いわき市に来たのに、わざわざ買いたいと思えるものが何もないのだ。

観光施設は、大きく分けると、入場料、飲食、お土産の3つが収益のポイントになるらしい(ディズニーランドとかを想像すると分かりやすい)。そこに行かないと買えないものがお土産として売っていたら、例えばフタバスズキリュウの骨格模型とか生体模型とかがあったら、私なら大人になった今でも欲しいと思うのだが。。

ちなみに、細かい収支は公開されていないので経営状況の想像をしてみると、高く見積もった収入は、子供料金や割引を無視した一般入館料590円×約86000人=約5000万円に対して、支出は人件費など運営に必要なお金は指定管理料として公費が8300万円が毎年使われているので、毎年3300万円ほどの赤字を出す施設ということになる。(実際はもっと赤字ではないだろうか。。)

アンモナイトセンター

海竜の里センターから車で10分ほどのところには、アンモナイトセンターという施設がある。ここは、フタバスズキリュウも産出した双葉層群という約8,900万年前、白亜紀の地層で、海洋生物の化石がめっちゃ出る地層が露出していて、巨大なアンモナイトがごろごろ出ている場所をそのまま屋根をかけて保存展示していて、建屋の隣には、体験発掘もできるようになっている。全国から小学校などの研修旅行などを受け入れたり、いわき市の小学生たちなら、一度は発掘に来た事があるくらい楽しい場所だ。
入館者数は、令和4年で14,777人と公表されている。

アンモナイトの出る地層をそのまま展示している
発掘体験が楽しい

双葉層群の価値

アンモナイトセンターで少し触れた双葉層群の価値は、以下の2冊の書籍を読むとよく分かる。

いわき市の北に広大に広がる双葉層群は、実はほとんどが手つかずで残されている。愛好家などが、自分で地層が露出したところを探して掘ったりして化石を収集しているくらいのものだ。本当は、もっとクビナガリュウが出てきてもおかしくないし、実際に鉄腕DASHという番組では、TOKIOがクビナガリュウを発掘していて、いわき市に寄贈されている。これまで少なくとも8体のクビナガリュウ(部分化石だろうか)が出ているという話もある。

クビナガリュウの化石寄贈/TOKIOの城島さんら
https://www.shikoku-np.co.jp/national/life_topic/20020712000738

これらは、誰かが価値を認めない限りは、一見すると、ただの山だったり沢だったりするだけだ。

フタバスズキリュウの産出地


そして、海竜博物館へ

さて、以上の状況を踏まえて、私なら海竜の里センターを「海竜博物館」としてこう活用するという話を最後にしたい。

まず、現在築40年の石炭化石館ほるるは、いつまで耐用年数があるのか分からないが、建物は永久には使えない。いずれは取り壊しや再建築の話も出るだろう。しかも赤字施設である。であれば、私なら、化石とも産出地とも関係のない湯本町に置いておくのはやめ、化石の展示収集研究をする施設は、現在の海竜の里センターのある久ノ浜町に移設する。

その上で、最低限まずは、きちんとフタバスズキリュウの展示をする。今の石炭化石館の展示は、エントランスにあるものの、説明が足りずに正直素通りするだけだ。当時の海はどんな状況だったのか、どんな生物だったのか、産出地はどんな場所で誰がどんな苦労をして発掘したのかなど、伝えるべきことも、知れば楽しいことも沢山あるが、何ひとつ分からないのが残念でならない。化石だけでなく生体を復元した模型やARでの展示などもほしい。

他にもいわき市で産出する海洋生物の化石は、クジラやアンモナイトなど、周辺からも沢山産出しているので、これらもまとめて展示をする。

そして、近隣は双葉層群がある化石が出る地域なのだから、アンモナイトセンターとも連携ができるし、私有地となっている山や沢にもたくさんの発掘ポイントがあるので、それらも許可を得て発掘ツアーを組むようにする。発掘はアマチュアの愛好家の協力を得てガイドになってもらう。これは、さながら探検隊のようなワクワクするものになるだろう。
触れてこなかったが、実は、この辺りは、琥珀の産地としても有名で、化石堀だけでなく、琥珀の発掘も面白いコンテンツである。

ここまで企画を膨らませると、海竜博物館は、双葉層群を巡るジオパークの玄関口となる位置づけと言えるだろう。海竜博物館を拠点として、双葉層群の発掘にも出るし、取れる化石の収蔵や研究や成果の展示もしている施設だ。現場の近くだからこそ、研究者による発掘や調査や研究も進むだろう。
発掘ツアーに行っても簡単に化石が掘れるとも限らないので、悔しい想いをしつつ、ミュージアムショップでフタバスズキリュウのお土産を買って帰るみたいなことも想像できる。

ちゃんと双葉層群で発掘をするためには、もう一泊しようかという話にもなるので、今のいわき市観光の問題点である日帰りで済んでお金が落ちない構造から、宿泊や飲食でお金が落ちる構造にもなる。福井の恐竜博物館の年90万人までとはいかないかも知れないが、年30万人くらいが訪れる、化石コンテンツの集積地には育てられるのではないだろうか。コンテンツは集積して積み上がっていかないと意味がない。バラバラに点在しても効果が薄いのだ。

海竜の里センター自体も築33年なので耐用年数が迫る。仮の海竜博物館を今の古い施設で試験的にやってみて、耐用年数を超えたときには、そのときの海竜博物館としての状況を踏まえて、新築して規模を拡大するのかどうかという攻めの一手を打てるタイミングになるだろう。

行政の公共施設の運用を見ていると、どうも税収減の時代に合わせて縮小しようという力学が働きすぎて、なにもしない方向や、やめる方向、民間に売却して終わりみたいな方向になりがちだ。それも打ち手の一つではあるが、公共施設を活用して、積極的に観光客を増やしたり地域経済をプラスにするような稼ぐ公共施設にしようという方向は、本当は検討すべきものであるはずだ。公費を投入してもそれ以上のプラスがあるなら、本来は積極的に投資をしてもよいはずなのだ。

この企画は、民間で運営も可能ではないかと思っている。入館料、おみやげ、ツアーの運営など、収益のポイントが分かりやすいからだ。稼げる企画なら民間はやりたいのだ。今、いわき市の化石関連施設が、どこも鳴かず飛ばずなのは、企画力のなさに尽きると思う。本当は、こうすればもっと稼げるのに、、というものをまとめたのがこの投稿とも言える。
ただ、この企画は行政の協力なしには成立しないので、公民連携の形になるはずだ。石炭化石館との統廃合、フタバスズキリュウの復元骨格の移設や、双葉層群の保全や研究者の育成など行政にしかできないことが沢山ある。またお土産やツアーの企画などは、民間の方が得意だろう。だからこその役割分担で公民連携の企画がいいのではと思っている。

一つ問題は、石炭化石館から化石がなくなったら、ただの石炭館になってしまうことだ笑 私が子供のころ大嫌いだった地獄の坑道巡りしか残らない笑

そこは、本来は、本当に炭鉱の歴史を伝えるのに適切な手法の検討からすべきで、今の子供が怖がるだけで楽しくない施設が今のままでいいとは、私には思えない。そもそも石炭だけじゃつまらないと化石をくっつけたことからも、炭鉱の面白い展示手法を考えるのを諦めているのがよくない。別の場所に別の形でゼロから炭鉱の歴史を伝える場所は考えてもよいのではないだろうかと思う。

また、石炭化石館も耐用年数で施設自体をいずれ壊すことになるのなら、湯本駅近くに広大な土地が生まれるので、それこそ、J1を目指すいわきFCのスタジアム候補地としての活用もあるのではないかと思う。どこにどの施設があることが最適なのか、どこに何を集積させるのかという戦略が大事だという視点の話でもある。話が広がりすぎるので、この辺りで、妄想企画を終わりたいと思う。

ここまで読んで頂いた方は、駄文長文にお付き合い頂き、感謝いたします。極論や無茶もたくさん書いてますが、部分的にでも使えるアイディアは沢山盛り込んでありますので、少しでも地元が面白くなれば幸いです。。

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