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「教育格差」って何だろう?

 私たちが「みんまなプロジェクト」で解消したいと考えている「教育格差」。そもそも、この「教育格差」って何なのでしょうか?


「教育格差」とは、生まれ育った環境により、子どもたちが受けられる教育に差が生まれることです。例えば、世帯収入が低い家庭では、子どもの教育機会(塾や習い事など)が少なくなります。また、地方は都会のように塾や習い事の選択肢が多くなく、また情報量にも差があるなど、やはり教育機会は限定されます。生まれながらにして、教育に明らかな不平等が生じている状態、それが「教育格差」です。

教育格差は着実に広がっている

現在30代以降の日本人には、「日本は平等」というイメージが根強くあると思います。たしかに、1970年代の高度成長時代には、給料は上昇が続き、“一億総中流社会”が実現されていました。ところが1990年代に入ってバブルが崩壊すると、今まで右肩上がりだった給料も頭打ちとなり、特に2000年代には貧富の差は拡大。従来は経済格差の影響を受けにくかった“教育”にも、格差が表れ始めました。「教育が満足に受けられないなんて、発展途上国の話でしょう」と思うかもしれません。しかし、着実に教育格差は広がっています。

教育格差の原因は、ずばり「家庭の経済力」

日本財団による「18歳意識調査」で、全国の17歳~19歳男女1000人からとったアンケートによると、教育格差を感じる層の約3人に1人が、格差の主な原因は「家庭の経済力」であると答えています(図1)。

総務省「家計調査年報」の、2人以上の勤労者世帯の家計調査によると、特に塾や家庭教師などの補習教育費に顕著な差が出ていることもわかりました(図2)。
世帯年収が1200万を超える高所得者層では、教育費全体の支出は年間44.2万円、370万円の低所得者層では7.1万円。差が特に目立つのは補習教育で、高所得者層は12.5万円、全平均値は5.6万円、低所得者層は1.4万円と、両者が塾や習い事に賭ける費用には、約9倍もの差があったのです。

新型コロナによる教育格差の拡大

教育格差に追い打ちをかけたのが、2019年からの新型コロナです。学校が休校で学びがストップしている間にも、高所得者層は塾や家庭教師などの補習教育費を支払うことにより、学びを継続することができました。一方、低所得者層の“学び”は停滞したまま。勉強をせずに家でゴロゴロしていたり、ゲームをしていたりと、学習面での差はますます開いていきました。
また、コロナ禍では公立校と私立校のICT教材導入の差も浮き彫りとなりました。私立高ではいち早くICT教材を導入、もしくはすでに導入済みで、休校中の学びにもスムーズに対応することが可能でした。一方、公立校では原則自習、保護者が宿題を受け取りに学校へ行かねばならない事態が発生するなど、公立校と私立校の間の教育格差が明らかになったのです。

教育格差が進む先にある日本の現実

このように、日本の高所得者層が教育への投資を進める一方、低所得層は家計への教育費の負担が重く、学力差は拡大傾向です。低所得者層の子どもが塾に行けず、大学に進学することができず、就職先が限定されて低所得者となると、その子どももまた同じ道をたどるというスパイラルに陥ります。
もちろん、大学進学がだけがすべてではありません。趣味など勉強以外に打ち込めるものがあればよいでしょう。しかし実際は、塾同様習い事に通うことも難しく、テレビやゲームなどをする時間が長いのが実態です。

また、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、子育てや教育にかかる費用を考えて、子どもをあきらめる夫婦が多いこともわかっています。少子化に苦しむ日本において、出産をあきらめる夫婦が増えるということは致命的です。
子どものやる気と努力が報われる社会でなければ、人生に希望がもてません。本人が選ぶことのできない「生まれ」によって、将来の可能性が制限され、夢を見ることができない若者が増えている。それが、日本社会の現実なのです。

教育格差解消のための取り組み

日本の未来を担う子どもたちを、いかにして育てていくのか。包括的な視野が求められる中、教育格差によって満足な教育が受けられない子どもたちを対象にした取り組みは、放課後を利用した学習支援や、習い事の無料または低料金での提供など、各地で存在します。また、オンラインでの教育活動は、地域的な問題による教育格差への対策として有効です。
私たちも、オンライン学習教材「デキタス」を使った教育活動や、都立高校への講師派遣、学校外教育を受けることができる利用券を提供する公益法人「チャンス・フォー・チルドレン」への参画などに取り組んでいます。

まずはこれを読んでくれている方々に、「教育格差」の現実があるということを、知ってもらえると幸いです。