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OMOは果たして顧客に体験を提供しているのか?

株式会社アイリッジ取締役の渡辺智也(わたなべともや)です。
※Twitterもやっています!

これまで、CHOOSE SHIBUYA、b8ta TOKYO、明日見世、Meetz STOREなどのOMOストアを視察してきました。
今回はそれらの経験をふまえたOMOの現在と未来について、自分なりの考察を記したいと思います。

<目次>
1.OMO店舗の新しさと物足りなさ
2.OMOが発展するために今後求められること

1.OMO店舗の新しさと物足りなさ

OMO=Online Merges with Offline、すなわちオンラインとオフラインを合わせる、ということですが、これまで視察してきた多くの店舗では、オフラインつまり対面やリアルで商品に触ることができたり、体感を得たりできる一方、実際の購入はスマートフォンから、という流れが中心でした。
そのうえで、商品をその場で持ち帰ることができるケースもあれば、オンラインストアで購入して数日後に自宅に配送されるというケースもある、というのがスタンダードなOMO店舗の運用でした。
オンラインストアしかなかった(リアル店舗を持たなかった)店舗と接点を持てる機会が増えたことは、買い物をする場がリアルだけでなくオンラインにまで広がった昨今では目新しいことだったといえそうです。

一方、実際に商品に触れる、説明を聞くことができる、という点以外に新しさがあったか、と問われると疑問符がつきます。
「オンラインで購入するものが試着できます」…確かに今まではオンラインでしか販売できなかった商品が試着できる!ということは、店舗側の視点だとすごいことかもしれません。
でも、顧客側の視点だと、オンラインの商品、オフラインの商品という区別はなく、「試着して決めるのは普通のことではないか?」と思うこともあり、顧客にとって「新しい体験」になっているとはいえないようにも思います。

また、商品のストーリーはコンセプトに共感できるものの、それを最後は自分のスマホでいろいろと登録させた上で購入させるプロセスは、せっかく盛り上がった商品購買欲が下がってしまうこともあります。実際、店舗で見たときは「お、いいな!」と思っても、スマホで商品を表示させているうちに、「よくよく考えたらいらないよな」と思って購入を躊躇ってしまうこともありました。
お店で店員の方に話しかけられたくないという人にとってはいいのかもしれませんが、最後のひと押しがほしい人やタイミングの際には、この購買体験はあまり良いとは思えません。

そのようにとらえると、ただ単純にオンラインでの買い物導線をスムーズにすることや、商品をおしゃれに陳列することだけでは体験としての物足りなさから脱却できない、ということになり、今までこだわっていたポイントではないところに着目する必要がありそうです。

OMOとして「新しい買い物体験を」とうたってお店の中での購入プロセスをデジタル化すればいいのではなく、商品の特性によって様々な接客のあり方や購入のあり方を提供していく、という方がいいように感じました。

2.OMOが発展するために今後求められること

このように、お店の目的が商品を購入することではなく、商品の魅力を伝える場として考えると、そこでの最適な顧客体験は今までの小売という考え方の延長線上ではないところに次なるヒントがあるかもしれません。商品の背景にあるストーリーやブランドコンセプトを感じてもらったり、商品を体験してもらったりすることは商品を購入しやすい場とは別の視点が必要になると思うからです。

商品に限らず、リアルな場所に行って何かストーリーを感じてもらったり、体験してもらったりするということを考えると、水族館とか博物館の体験にも似ているかもしれないと思いました。

たとえば、水族館では動物の生態を理解してもらうために工夫を施しているところもあります。展示するアプローチを変えて、巨大な水槽の中で実際の海での生活が一目でわかるような展示がなされ、それを見た私たちが「へぇえ、そういう生活をしているのか!知らなかった!」と驚くことに似ているかもしれません。

また、たとえば、博物館で古代人の発明する力がどのような道具につながり、それが私たちの生活にどのように関連づいているかということを展示物を閲覧するだけではなく、VRやARを通じて臨場感とともに知り、「へぇえ、そういう視点もありなのか!ためになった!」と目からうろこが落ちることに似ているかもしれません。

つまり、もはや、売り場の作り方やオンラインショップの構成を工夫するのではなく、視点や見せ方、気づきの与え方のところに焦点が移っていく、ともいえそうです。
「新しい買い物体験」というならば、この「体験」を通して顧客に感動を提供するということについて、考察を深めることが重要そうです。
そしてそれは、百貨店や小売り店、オンラインショップではない、思ってもいなかった場所にヒントがあるのかもしれません。

というわけで、今後も引き続きOMO店舗の動向を気にしつつ、新しい体験を求めて様々なフィールドに視察に行ってみたいと思っています。乞うご期待!

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