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読書感想『恋する寄生虫』は現代のアダムとイブ

聖書でこの世界の最初の人間と言われるアダムとイブ

互いに対立の関係にある家に生まれ恋に落ちるロミオとジュリエット

そして『恋する寄生虫』の高坂賢吾と佐薙ひじり

このふたりでなければならなかった物語がまた1つ誕生していました。

2台の空気清浄機が置かれた1DKの部屋にアルコール消毒液をばらまき、ラテックス手袋、サージカルマスクを常備、「他人」が関与しているものすべてが不潔に思える極度の潔癖症を抱え、職場でも上手く振る舞えずに、職を転々としている高坂賢吾。

人と目を合わせることができない視線恐怖症を抱え、ヘッドホンをすることでなんとか日常生活を送りながらも不登校の女子高生、佐薙ひじり。

社会復帰を目指して、ふたりでリハビリを行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる、というのがだいたいのあらすじ。

最初は険悪ながらも、徐々に心をかよ合わせていくふたり。

「そうかな。二十七歳にもなってキスのひとつもしたことがないって、
ちょっと笑えない?」
(中略)
佐薙は高坂の肩を両手で掴み、マスク越しに唇を重ねた。
「これで我慢しなさい」
p94

うおおおおお。なよなよした男と強気な女の子のカップルっていいよな。

くっそ、コロナ期間中に若いカップルがそんな事をしてたとは聞いていけ好かねえとか思ってたけど、ごめんな、そんなのもアリだともうぜ。

良かったな出会えて……お前ら、今まで辛かったと思うけどこれからは幸せになれよ……。と僕の中の菩薩が優しい目をしたのも束の間。


ふたりが惹かれ合ってるのは寄生虫のせいっす。

頭の中の寄生虫がお互いに惹かれ合って、その宿主である君たちにも影響与えてるっす。

なん…だと…。

ついでに言うと、潔癖症だったり、社会に馴染めなかったりしたのも寄生虫のせいっす。

なん…だと…。

こいつらはお互いにこいつらじゃなきゃいけないんだよ。神はなんて残酷なんだ。いや作者か。

もうこのあとは、どうにか幸せになれと思いながらページを捲ることになる。正座して祈りの気持ちを込めながら一枚、また一枚とめくる。と、気づけば読了である。

正直虫とか苦手な人は注意かもしれない。
専門レベルの寄生虫の話がわんさか出てくる。

寄生虫なんて、普段頭の片隅にも置いてないから知識としてだいぶ新鮮だったけど、虫だけはホントだめ、虫のことを考えるくらいなら血の池地獄にでも落ちるくらいの人は結構きつい。

それにしても、映画のキャストが林遣都と小松菜奈か。

うん。大正解。


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