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『スターティング・オーヴァー』を読んで人生の可能性を知る




割合としてだいたい60%くらいの人が、人生をもう一度やり直したいと思っているそうです。気持ちはわからなくは無いのですが、戻れたからといって確実に人生が好転する保証はないのでちょっと怖いなあと思います。

三秋縋さんの小説『スターティング・オーヴァー』の主人公は、割合としての後者、40%の方。

つまりやり直したいしたいなんて思ってないわけです。
それなのに突然、20歳の誕生日に10年の時を巻き戻されるわけです。

今まで読んだことのある物語って、「あの時に戻れたら……!」とか「なんであんな事件が起きたんだ?」みたいなものを解消するために過去に戻るみたいなのが通例だったんですけど、なんとこの主人公、やり直す前の人生も幸せだったから、「同じように過ごせばまた幸せになれるっしょ」「変わらないことが一番の幸せ」みたいな気持ちで、1周目と同じ出来事をなぞろうとするんすよ。

まじで?

いやいや、君20歳までのすべての記憶を持ちながら、やり直せるんだよ?
億万長者にさえ慣れてしまうんだよ?
期限付き全知全能ゼウスだよ?

そんな感じで、はいはいそれじゃあ同じ人生を楽しみながらやってくださいみたいな気持ちで、読み進めるんだけど、だいたい20ページくらいでそれが上手くいかないことを知る。

そりゃそうだよね。
人生には運とか、色んな人の状況も相まって、現在ができあがってるわけだから、全く同じ通りにいくとは限らない。

でもある程度の道筋は辿らなくちゃいかなくて、1周目の人生の「代役」が立てられてるわけです。しかもそれを他人として見るわけです。自分の幸せだった人生を傍から見ることになるんですよ。

僕だったら辛すぎて引きこもるか、その人と交わらないようにできるだけ違う進路とかを選んでしまうかもしれない。

さてここまでで40ページ。

残り180ページくらいあるんだけど、どうすんの?

主人公絶望してるぜ?
いける?主人公動ける?

というわけで、結末がどこに落ち着くのかってところは読んでいいただくとして、読んでみて思ったのは今まで上手くいったからってこれからも良いとは限らないってこと。

例えば世の中にうまくいくライフハックみたいなものって溢れてるけど、昔は良くてもそれが今の状況で自分に当てはまるかはわからないみたいな。

けど、それは逆もしかりで、悪かったとしてもこれからも悪いとも限らない。

というわけでちょっとだけ希望を持てる一冊です。

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