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詩133/ 詩の繭

何も見えない
漆黒の夜道を

何も見えない
光の海の中を

前が見えない
土砂降りの中を

目を開けていられない
激しい嵐の中を

彼は
感覚だけを
道しるべにして
生きている

一番
敏感な粘膜を

闇に晒し

光に晒し

雨に晒し

風に晒し

体の奥深くで
激しい拒絶反応を起こしながら

絹の糸を
口から吐き出し

躰の周りに
純白の繭を張る

それは
自分を司り
自分の心を護るための

そして
高い空へ羽ばたく姿に
その身を変えるためのもので

破って飛び去った後には
もう彼には
必要の無いものになる

だが
彼の世界に住む
別の自分が

破れた空っぽの繭を
見つけて拾い集めては
その糸を撚り上げ

何も語らず
ただ黙々と
言葉の反物を紡ぎ続ける






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