「ジョージ、言葉のアドリブ」vol−1 「ロシア人はなぜあのプーチンを信じるのか?」


バットマンクラブで演奏するイゴール・バットマン
もはやトンデモ本とは言いがたい近未来小説だ。

6年前にモスクワのトップジャズクラブ「バットマンクラブ」でジャズライブを堪能した。CDを買ってサインも頂いたオーナーでバンドリーダーのサックス奏者「イゴール・バットマン」の演奏はほんとうに素晴らしかった。ロシア人の音楽的芸術性の高さは言うまでもない。バットマンもクラシック教育を受けさらにバークリー音大を出てGワシントンJRやW・マルサリス、Eゴメスとも共演したりレコーディングしたバリバリのジャズSAX奏者だ。ちなみにSゲッツはウクライナ移民の子だし、Bエバンスはウクライナ系ルシン人の血を引いているのは有名な話だ。

 バットマンもアメリカとロシアの二重国籍をもって世界のジャズ祭に出演したり、2000年にはクリントン元大統領やプーチン大統領の前でも演奏しクリントン元大統領は「私のお気に入りだ」と絶賛したらしい。その後も西側とロシア交流のイベントを企画したりさまざまなジャズ祭も主宰した。

 しかし、このアメリカ文化を象徴するような自由なジャズを愛するバットマンは、プーチンを信奉しその後の2014年のクリミア紛争でも熱烈にプーチンを支持していた。与党統一ロシアでの政治活動にも積極的に参加している。

 TVなどの日本のメディアでは多くは「プーチン支持者は国営放送のプロパガンダを信じるお年寄り」や「ネットで海外情報にアクセスしない世代」「ソ連崩壊を体験した貧しい世代」たちで政府の情報統制に操られている、と安易に指摘している。

 まるで自由な情報を与える日本のテレビジャーナリズムを自画自賛しているにも思えるが実態はだいぶ違うだろう。逆にTVの前に鎮座するお年寄りたちに軽々な二次情報や思い込み情報を「ロシア専門家」や「コメンテーター」と称する人たちがワイドショーなどで垂れ流す方がある種の情報コントロールかもしれない。

 国際ルールを無視して侵略戦争を始めたプーチンの罪が甚大なのは誰の眼にも明らかだ。しかし、アメリカで自由なジャズを学び二重国籍でアメリカ文化もロシア文化も熟知しリアルな国際情報もネットや西側メディアで得ているバトマンのような人物がなぜあのプーチンを支持するのか。 

 その本質を見極めないと、このウクライナ戦争だけには留まらず戦争の連鎖は止まらない、という悲しい事実を歴史が証明して見せたのではないだろうか。NATO東方拡大に反対しこのリスクを予感したアメリカの識者たちも、同じ思いだろう。

ちなみにアメリカでベストセラーになった「2034 米中戦争」。昨年末日本でも出版されたが、当時は戦争近未来エンターテイメント小説、の程度に思っていたが、これはまさに日ごとにリアリティを感じるようになってきた。核攻撃という最悪のシナリオも決して否定できないからだ。

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