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In Flames - Foregone


後々の新型コロナウイルスの猛威やツイッターにおけるイーロン・マスクの暴挙を予言していた、前作の”マスク”アルバムこと『I, The Mask』から約4年ぶりの新作『Foregone』は、著名な邦ロックバンドやラウドロック勢に著しい影響を与えていた近作のオルタナ路線から一転、それこそ元インフレのオリジナルメンバーであるギタリストのイェスパーと現Dark Tranquillityのミカエル・スタンネ率いる、シン・フレイムスことThe Halo Effectのセンセーショナルな登場に触発されたのかは定かではないが、少なからず元メガデスのギタリスト=クリス・ブロデリックが加入した影響もあるのか、いわゆるヨーテボリ・スタイルのオリジネイターとしてのプライドと、オルタナではなくヘヴィメタルとしての音楽スタイルに回帰していることだけは唯一の事実と言える。

初期インフレを司る「音」、すなわち寂寥感溢れるフォーキッシュなアコギのアルペジオという露骨な匂わせイントロの#1に次ぐ、まさにメロデス回帰を堂々宣言するような#2”State Of Slow Decay”からして、初期インフレやDimension Zeroに肉薄するデスラッシュ風味の→「デッ…デレッ」←この単音リフにメロイックサイン不可避。

ハッキリと申し上げてしまうと、いわゆるヨーテボリ回帰と胸を張って呼べる”匂わせ曲”は実質その一曲だけで、それ以降はインフレの皮を被ったいつものモダンなヘビメタやってる印象。近作よりはデスメタリックにヘヴィなのは紛れもない事実だが、それと曲の善し悪しはまた別の話。少なくとも、新メンバーのクリスによる叙情的なギターソロが豊富に盛り込まれた本作の楽曲陣は、より多くのメタラーの耳に受け入れられるハズ。

なんだろう、今現在のソニーがグローバル企業であるのと同じように、イェスパーが脱退した00年代後半以降のインフレは半分アメリカの資本が流れたグローバルバンドで、同じ北欧という意味でもアンスラックスのロブ・カッジアーノが加入したデンマークのVolbeatも同じ境遇と言える。なので、あくまで”匂わせ”程度のヨーテボリ回帰に過ぎないのは致し方ない事でもある。中には、こんな中途半端にヨーテボリ回帰するくらいなら、色々と揶揄されながらも極東のバンドに影響を与えるくらいには個性とオリジナリティだけは確かにあった、いわゆるナヨーテボリ・スタイルを最期まで貫いて欲しかったと思うファンも少なくないかもしれない。

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