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crushed - extra life


おいら、フィメールボーカリストの歌声の波長がTrespassers Williamのロッテ・ケストナーに近ければ近いほど問答無用に好きになっちゃう人間だから、このショーン・ダーカンとブレ・モレルによるLAの男女二人組ユニット、その名もcrushedのデビューEP『extra life』の音楽性もドンのピシャだった。

というのも、リードボーカル担当のブレ・モレルのロッテ・ケストナー顔負けの潤いを保湿したメランコリックな歌声と、UKレジェンドMassive Attackの名盤『Protection』の影響下にあるメルヘンチックなシンセの浮遊感が漂う王道的なトリップ・ホップ、同LA出身の代表的なバンドであるHAIMさながらのソフィスティ・ポップ、それこそヤシの木(パームツリー)が道沿いに延々と連なるロサンゼルスらしいアーバンな匂いと今の季節感とシンクロする倦怠感、そして白昼夢のごとしモノクロームの世界観が同カリフォルニアはサンフランシスコ出身のdeafheaven界隈(Whirrなど)と否が応でも共振する点も含めて自分の好みにドンピシャで軽く感動してたら、(クレジットを見ると)どうやらex-deafheaven現Whirrのニック・バセットくんが(ミキシング)エンジニアとして関わってて、流石に運命を感じざるをえなかった、流石に。また、サンフランシスコのシューゲイザートリオのWeekendのメンバーでもあるショーンは、Kayo Dotのトビー・ドライバー率いるVauraの”虹色おっぱい”こと『The Missing』のビジュアル面を手がけた人物らしくて俄然運命を感じた。

ex-D F H V Nのニックんが携わっているだけあって、90年代のトリップ・ホップ~ドリーム・ポップ~90年代のシューゲイザーのオルタナ三銃士からの影響が色濃い、音響的な意識の高さを伺わせるリバーブを効かせたネオサイケ風のギターが揺らり揺らめく王道中の王道オルタナの中に、要所(主にイントロやアウトロ)でローファイ/ヒップ・ホップ的な装いを垣間見せるのも凄く現代的っぽいというか、俄然ロスっぽいアーバンな雰囲気を漂わせる。

オープニングを飾る#1”waterlily”からして、某トレイシー・ソーンさながらのブレ・モレルのフォーキーなほどに抒情的な歌メロとアトモスフェリックなシンセを揺らめかせながら、(ノスタルジーとメランコリーが共存する)さながらマッシヴ・アタックの『Protection』リバイバルのトリップ・ホップナンバーで、90年代オルタナ然としたギターが鳴り響くイントロから確信犯のショーン・ダーカンがボーカルを担当するネオアコ風の#2”coil”、韓国の宅録系SSWのDella Zyrと共振するネオサイケ風のローファイ仕草をバックに、俄然ロッテ・ケストナー的なメランコリズムを発揮するモレルの内省的な歌声が映える#3”milksugar”、そしてアレンジ面で『Protection』をリバイバルしながらLA代表のHAIMを想起させるダルい倦怠感とアーバンかつアダルティなムードが充満する#4”bedside”と#5”respawn”、そして在りし日のWhirr一味あるいは同カリフォルニアはサクラメント出身のDeftonesを彷彿とさせる、ネオン輝く華やかな都会の裏側に潜むモノクロームのダークサイドを妖しく照らし出す#6”lorica”まで、さながらHAIMの三女アラナ・ハイムが主演を務めたポール・トーマス・アンダーソン監督の映画『リコリス・ピザ』のシークレットサントラみたいな世界観すら感じる充実のデビュー作。


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