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The Ocean - Holocene


現代ジャーマンメタルの代名詞こと、The Ocean Collectiveの約3年ぶり通算10作目となる『Holocene』は、近作のテーマとして掲げてきた地質学における先カンブリア時代から顕生代にかけての紀を描いたダブルアルバムの『Phanerozoic』に続く、地質学の最終章を飾る完結編となる「完新世」という地質時代のうちで最も新しい時代を題材としている。彼ら曰く、パンデミック以降に急激な変化が求められ始めた現代社会に蔓延る不安や孤独感、そして陰毛論をはじめとする反知性主義の台頭を憂いた作品とのこと。

近二作のモダンな傾向を踏襲するように、それこそスティーヴン・ウィルソン/Porcupine Treeを象徴とするポスト・プログレッシブ(Kscope界隈)を経由したダーク・アンビエント~エレクトロな打ち込み要素をはじめ、著しく現代的な音作りを表層化させながら、さしずめ「ポストメタル化したPT」とばかりの洗練されたサウンドメイクを展開している。

本作においても、バンドと交流の深いヨナス・レンクス率いるKATATONIAのBサイドさながらのアンビエント~オルタナティブな側面を強調する#3”Sea of Reeds”を筆頭に、地味にKATATONIAの正統なフォロワーとしての立場を確立している彼らだが、シャンソン歌手さながらの女性ボーカルをフィーチャーした#6”Unconformities”の確かな存在感も、アルバムの強度を高める絶妙なアクセントとして抜かりないソングライティング能力の高さを示す。

一方のメタルパートはメタルパートで、まさに現在のKATATONIAが理想とするオルタナティブ・メタルを体現したような4”Atlantic”では、TOOLの影響下にあった前作の(ヨナスをフィーチャリングした)超大作の系譜にある、それこそ現代ポストメタルのトレンドである「マツコの知らない黄金のキザミの世界」に入門しつつあるキザミを取り入れており、正しい意味で「完新世」を音楽的に表現している。また、持ち前のヘヴィネスにおいてもスウェーデンのCult of Luna的なスラッジというよりも、USのThouやLiturgyに代表される最新鋭のポストメタルの硬度に数値を合わせている。中でも、クラシック・スタイルのThe Oceanと現在進行系のThe Oceanの邂逅が実現した#7”Parabiosis”は本作のハイライトで、兎にも角にも現代ポストメタルとしての精度と解像度が高すぎる。

初期The Oceanの静謐さ溢れるクラシカルな地層と、全く新しいThe Oceanの地層を違和感なく溶け込ませることに成功しており、地質時代それぞれに区分された様々な地層の個性的な特性と自身の流動的な音楽スタイルが高次元でマッチアップした、理想的なコンセプト・アルバムここに極まれりな一枚となっている。久々に会心の一撃を食らった気がするほど、ここにきて三度の傑作を出してくるあたり流石としか他に言いようがない。

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