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【短編】お姫様と金色のマリ

とてもうららかな春の日の朝
とある国のお妃様がお姫様をおうみになりました
そのお姫様は、それはそれは美しく、誰もが一目見ると目が離せなくなるほど可愛らしいお姫様でした
窓の外では、小鳥たちもお姫様の誕生を祝福する歌を楽しげに歌うのが聞こえてきます
お姫様の誕生と同時に空には大きな虹がかかり
世界中の全ての存在がお姫様の誕生を心から喜んでいるように感じられました
そんなお姫様のベットの脇にはそれはそれは美しい金色のマリが置いてあるのが見えます
それは、お妃様が愛しい我が子のために誕生の祝いとしてお姫様にあげたものでした
この金色マリは、もともとはお妃様が、お妃様のお母さんからもらったものでした
そして、お妃様は、もともとは隣の国に住んでいた平民でした
特に裕福でも、貧乏でもなく平凡な暮らしをお妃様は送っていました
ただ一つ、平凡ではなかったのは、お妃様がマリを操らせたら誰も太刀打ちできないほどの腕前を 持っていたことでした
お妃様が、お母様から受け継いだ金色のマリを 
自由自在に美しく操る様は、誰もの目を釘付けにし、そして、なんとも言えない幸せを見たものに 感じさせました
そんなある日、そのお妃様の美しくマリを操る様をみた家来が、隣の国の土産話として王子様に その娘の話をお聞かせしたところ、大いに王子様の好奇心を刺激したらしく、その娘とマリを見てみたいと王子様が言い出しました
そこで、家来は 、すぐさま隣の国へ引き返し、娘に王子様にそのマリを見せて欲しいと頼みました
娘は、少し迷いを感じましたが、金色のマリを 一つだけ持って、家来に連れられて隣の国へ行ったのでした
そして、王子様は、娘の素晴らしいマリさばきに 心を奪われました
何度も王子様が、娘のマリをみたがったので、娘は一日また一日と王子様の国への滞在が伸びていきました
そして、結局、娘は、そのまま王子様のお妃様になったのでした
そして、今、お妃様は、お姫様をおうみになって 金色のマリは、かつてのお妃様がそうであったように娘であるお姫様へと贈られたのでした
それから、お姫様は、国中の人から愛されて、すくすくとそして美しくお育ちになりました
そして、16才になったお姫様は、まるで太陽のように光り輝くほど美しくなられました
お姫様の誕生をお祝いする会には、国中から沢山の人が呼ばれて、盛大にお祝いが開かれました
お祝いの会に参加した人たちは、それぞれお姫様の前に出て、お祝いの言葉を述べました
その中に西の森に住む魔女がいました
西の森に住む魔女は、お姫様の前に出るとありったけの言葉を尽くして、お姫様へお祝いの言葉を 贈りました
そして、最後にこう付け加えました
「僭越ながら申し上げます
今朝、私の夢の中に神様が出ていらっしゃいまして、お姫様が、結婚相手をお決めになる時には、お姫様の持っていらっしゃる金色のマリが大いに役に立つだろうとおっしやいました
わたくしには、詳しいことはわかりませんが、これはお伝えしなければならないことのように感じましたので、無礼を承知でお話させていただきました」
そういうと西の森に住む魔女は深々とお辞儀をしました
お姫様は、それを聴くと、にっこりと美しく微笑むと 
「ありがとう」
と、西の森に住む魔女にお礼をいいました
お姫様は、西の森に住む魔女の言葉を信じました
なぜなら、金色のマリをお姫様が持っているのを知っているのはお城の中にいる人以外は知るはずのないことだったからです
そして、16歳の誕生日を境にお姫様には、いろんな国の王子様から結婚の申し込みがたくさん舞い込みました
毎日のように次から次へとお姫様の元へ王子様が 会いきました
そこで、お姫様は西の森に住む魔女から聞いた話を思い出しました
お姫様は、会いにきた王子様たちにポンと軽く 金色のマリを弾いて投げました
ところが、どうしたことでしょうか
フワリと宙にまった金色のマリは、王子様が手に取ろうとするとスルリと王子様の手をさけるように逃げていきます
王子様が、必死でおいかけても金色マリに指一本も触れることはできないのです
それは、どんな人がやってみても結果は同じでした
そして、お姫様は、これが神様からのお告げなのだわ
と感じました
何十人何百人とお姫様に結婚を申し込む王子様が 現れましたが、金色のマリを手にできるものは 現れませんでした
そして、お姫様もどんな素敵な王子様が現れても 結婚を承諾することはありませんでした
それを見た王様とお妃様は、少し不安を感じていました
このままでは、お姫様は誰とも結婚しないのではないか
と思ったからでした
そして 王様は、一つのお触れを国内外に出しました
お姫様と結婚したいものは、身分に関係なく申し込むことを許す
というおふれでした
そのお触れを聞いた若者たちは、こぞってお城に 押しかけました
しかし、結果はみんな同じでした
金色のマリを捕まえられるものは誰もいなかったのです
そんなある日、貧しいなりをした一人のレンガ職人がお姫様の前に現れました
お姫様が、軽く金色のマリを弾くとフワリと金色のマリは宙を舞いました
そして、めんくらっているレンガ職人の腕の中に 
すっぽりとおさまったのです
それを見たレンガ職人以外のものは驚きを感じました
今まで、何十人何百人と見てきたけれど、金色のマリに指を触れる事ができたのを見た事がなかったからでした
そんなことを知るよしもないレンガ職人は、美しい金色のマリをお姫様に返さなければならないけれどどうしたらいいのだろう
と、目を白黒させて、周りの様子をドギマギしながら伺っていました
実は、このレンガ職人は、お姫様に結婚を申し込みにきたわけではありませんでした
お城のレンガがヒビが入って壊れているから直してほしいと頼まれて、修理にきたところ、お城の前にはたくさんの人が並んでいて、それがお姫様に結婚を申し込みにきた人たちの順番待ちの列だとは知らずにお城に入るために並んでしまっていたのでした
突然、舞い込んできたお姫様との結婚話に最初は レンガ職人は、何が起こったのかわかりませんでした
レンガ職人は、何度も何度もお城の人から説明を聞いて、やっとことの次第を理解しました
そんなレンガ職人の姿をお姫様は微笑んで好ましくみておられました
レンガ職人は、最初はかなり戸惑いを感じていましたが、レンガ職人も一目見ただけでお姫様の事が好きになっていたので、お姫様とレンガ職人は 結婚することになりました
お姫様とレンガ職人の結婚は、盛大に国中の人から祝われました
そして、結婚した日にも二人のかたわらには、あの金色のマリがありました

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