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🎬御法度 感想

大島渚監督が"衆道"を軸に新選組を従来とは違った視点で描く。大島渚監督の遺作。

公開当時、劇場鑑賞したが今ひとつ理解が及ばず再度鑑賞。完全に内容を忘れていたので新鮮な気持ちで観られた。

新選組という男だらけの集団にあって、加納惣三郎という妖艶な青年を中心に男同士の男色のベクトルが入り乱れる様子を、ビートたけし演じる土方歳三の視点で彼が語るように描いている。

作品全体として当時衆道が決して禁忌とまでは思われてなく、あくまで好みの問題として捉えられている空気感がしっかりと描かれているところは興味深い。
ただ、土方歳三は新選組という集団の中で衆道が広がっていくことを好ましくないと思っていて、近藤勇にもきびしい視線を投げかけ続ける。

映画は大胆な解釈で惣三郎と何人かの隊士の関係を男色を匂わせながら描いていく。
田代彪蔵や湯沢藤次郎はもとより、近藤勇も惣三郎に魅力を感じているし、井上源三郎との関係性にも明らかにそれが匂わされている。
惣三郎は浅野忠信が演じる田代彪蔵に衆道を教えられたと解釈されているが、果たしてそうなのか?
惣三郎には明らかに生来の猟奇的気質があり、土方が最初に受けた「初めて人を斬ったのではない」という印象のとおり、男性を魔性のように惹きつけながら手にかけてきたのではないのか?と疑った。

新選組という人を斬ることを目的として集まった人々の高揚感が、何かのきっかけで男色や嗜虐性に向かって解き放されていく姿は新選組映画としては新解釈であるがリアルに思えた。

語り部である土方歳三の視線が一般の観客に一番近いはずだったのが、ラストに近藤勇と土方歳三の関係性にも男と男のつながりとして視線が向けられ、新選組が潜在的に持っていた衆道の存在まで迫っている。

映画は20年以上も前の作品だと思うと大胆に思えるが、同性愛に対する社会的情勢も変わった今、大島渚監督が同じ題材で撮ったらどんな映画になったのか、興味は尽きない。

結ばれた者同士が最後に交わした言葉は何だったのか?見返してもはっきりとはわからないのだが、あえて表現しなかったことで愛の深さが切なく思え、観る者にいつまでも深く想像させる。

惣三郎役の松田龍平がデビュー作らしく初々しいが、妖艶なムードを醸し出している。
すでにベテランの風格の監督であり俳優のビートたけしが土方歳三を演じ、その存在感がラストの沖田総司を見送る視線の無常感を見事に際立たせる。

坂本龍一の新選組映画とは思えないリリカルな音楽が、男同士の微妙な心の動きを控えめに表現する。

ワダ・エミの衣装に彩られた新選組とそれを取り巻く人々の美しい姿の映像は印象的で、映画に彩りを与え映画全体を記憶に残るものにしている。

新選組という組織を男たちの熱く、そして悲しく切ない愛や嫉妬、したたかさなどそんな人間臭い感情で描き切った男性同士の普遍的な集団の中での愛の物語。

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