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🎬灼熱の魂 感想

突然亡くなった母の謎の遺言書。
双子の姉弟が意図せず全く知らなかった母の激動の人生と残酷な真実に迫る。

カナダの母子家庭で育ったアラブ系の双子の姉弟ジャンヌとシモン。
突然亡くなった母ナワルが残した遺言書に書かれていたのは、自分たちの「父」と「兄」を探すこと。
静かに母が亡くなったところから始まる物語は、変わり者と言われながらも平凡だと思っていた母の予想もしていなかった過去の人生と、内戦が引き起こした残酷な真実に迫っていくことになる。

劇中母のナワルの故郷の国名は当初ハッキリとは示されないが、首都がベイルートであることからレバノンであることがわかってくる。
「レバノン内戦」については、子どもの頃ニュースなどでよく聞いていたのだが、ほぼ無知識。
ドラマをより理解するためネットで概要を読んではみたものの、それぞれの勢力関係や外国の介入などがとにかく複雑で、簡単には理解できなかった。
映画の過去を描くパートの混乱がリアルだったことがよくわかった。

当初姉のジャンヌだけがレバノンに行き母ナワルの足取りをたどっていくのだが、知らなかった母の人生が内戦に翻弄された波乱の連続だったことがだんだんとわかってくる展開はミステリー調で引き込まれる。

途中過激で残酷な銃撃描写もあり、後のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品『ボーダーライン』を彷彿とさせるが、基本的には物語中心の展開。
しかし、やはりドゥニ監督独特の不穏な雰囲気は初期の本作でも健在で、『ボーダーライン』シリーズや『DUNE』のムードをすでに漂わせている。

最後にナワルの死、遺言書、双子の兄弟の「父」と「兄」というバラバラに見えていたピースが一つの真実として解き明かされるのだが、その事実にはショック。
激しい動揺、憎しみ、深い愛が激しく交錯するラストには、めまいすら感じた。
ドゥニ監督が意図的に劇中にばらまいた伏線が、信じられないほど残酷な一つの事実に集束するストーリーテリングは見事。

内戦という現実の中で懸命に生きた女性の人生と、いつまでも癒えない深い傷を描いたラストはかなりショッキングだが、今世界中で起こっている戦争や内戦の憎しみの連鎖が何をもたらすのかを深く考えさせられる佳作。

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