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🎬ザ・ホエール 感想

体重272キロの超肥満で一人暮らしで引きこもりの男性チャーリー。病気で余命わずかな彼が最後に出会う人々との5日間。

"ハムナプトラ"シリーズのブレンダン・フレイザーの復活で話題になった作品。

272キロまで太りまともな生活すらできないチャーリーだったが、それはゲイのパートナー・アランを失ったことが原因だった。
チャーリーには過去アランを選んだため妻子を捨てた過去もあるのだが、娘のエリーが突然彼の部屋に現れる。
SNSなどで人を傷つけてしまうエリーとチャーリーがどうなっていくかが話の主軸なのだが、決して映画はチャーリーの親子関係を描くだけではなく、パートナーを失ってしまったゲイ男性の絶望と孤独も描かれている。

チャーリーはおぞましいと思われてしまう猜疑心で看護師のリズ以外限られた人としか会わないし部屋から一歩も外に出ないので映画は完全な密室劇。
もともとは舞台劇らしいので納得なのだが、それゆえにカメラはチャーリーからいっさい離れることはなく、揺れ動くチャーリーの心理を残酷なまでに映し出していく。

劇中『白鯨』についてのエッセイが何度も読み返されるのは、チャーリーが白鯨=モビーディックで、エリーが異常なまでに白鯨を追うエイハブ船長だという暗示なのだろうか?
終始キリスト教的な教義に触れる宣教師のトーマスは、チャーリーに自分が神に見捨てられた異形な存在であることを強調させる役どころか?
トーマスに翻弄され、どこかで神の救済を拒み自分の過去を肯定したり否定することを繰り返すチャーリーなのだが、そのあたりにもどこか『白鯨』の引用があるのかもしれない。
残念ながら『白鯨』未読ゆえ考察不可能です。

結末は単純では割り切れない人間の、それでも救いなのだが賛否は分かれそうかな、と思った。
観る人それぞれの立場や置かれている状況によっても全く感じ方は違ってくるのだろうが、あの展開だとチャーリーがゲイである必然性がなくなるのでは?と疑問が残った。
極めて複雑な人間の救済を描いた作品として評価されるべき映画だとは思うが、個人的にはこの物語のそもそもの設定であの結末にどんな感想を持ったらいいのか、悩んでしまった。
ピザの宅配人ダンの残酷さを考えると、そのシーンだけでも設定の必然性がわからなくはないのだが。

どうしても超肥満の極端な人物像に引っ張られてしまうが、「老い」という視点に置き換えると、より自分に近くなるように思えた映画ではある。

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