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【映画評】ハワード・ホークス監督『ヒズ・ガール・フライデー』(His Girl Friday, 1940)

 Girl Friday とは Man Friday から派生した言葉で「忠実なる女下僕」ないし「会社で雑務をこなす女助手」といった意味だが、スクリューボール・コメディーたる本作では元夫で新聞社編集長のウォルター(ケイリー・グラント)を元妻で部下のヒルディ(ロザリンド・ラッセル)が振り回す。
 この2人のジャーナリストは、実際には無実の殺人犯を精神異常と鑑定させ死刑を回避したり、市長と判事の悪徳を暴いたりするが、それらは全て——善意からというよりは——特ダネを得んがための欲得尽である。さらには途中で犯人を救うために女性が窓から身投げするなど、同じH・ホークスの『赤ちゃん教育』などと比べると、笑ってしまっていいのかどうか悩んでしまう要素が多々ある。
 加藤幹郎が指摘するように、スクリューボール・コメディはトーキー普及後の1930年代に登場し、「身体」運動ではなく「会話」の妙で聴衆を魅了した。1940年公開の本作もその例に漏れず、主役2人が怒涛の口喧嘩を繰り広げる。字幕ではその機微をすべて拾い切れないだろうし、日本語話者はここでも笑うタイミングを逸してしまうかもしれない。まぁ、それでもヒッチコックのスクリューボール・コメディ、『スミス夫妻』(1941)よりはずっと笑えますけれどね。

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