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舞台「しびれ雲」 感想

ケラリーノ・サンドロビッチさんの戯曲「しびれ雲」を観に行った。初めての本多劇場、上演時間3時間半という大作であったが、長時間であることを感じさせることなく、没入した。

SNSでの感想を見ると「多幸感」という言葉がたくさん見られる。私も見終わった後、あたたかい、幸せな気持ちになった。
この多幸感は何なんだろうと考えたところ、「ダイバーシティ」が1つのキーワードなんじゃないかと思う。この作品に出てくる人は本当に色んな背景があって、家族構成だけみても

・3世代同居
・母娘2人暮らし(シングルマザー)
・夫婦2人子なし
・兄妹の2人暮らし
・シングル(婚歴なし)
・シングル(死別)
・シングル(離別)

とさまざま。これにLGBT、ケアの必要な人(初期の認知症?)、異邦人(外国人?)などの要素が加わる。

あの小さな島にみんなそれぞれ事情のある人が住んでいて、時々小さなイザコザを起こしながらもお互いを受け入れ、最後は「ごめんちゃい」と許しあいながら暮らしている。

緒川たまきさん演じる波子さんという人物がいるのだけど、もうほんと菩薩というか、受け入れ力が半端ない。突然島にやってきた記憶のないフジオに対しても、ちょっと様子がおかしいおじいちゃんに対しても、特別動じる様子もなく誰に対しても同じように接する。

おじいちゃんは少し認知能力が弱ってきていて、少し面倒を起こしたりする。でもそんなおじいちゃんのおかげでフジオくんは誕生日を祝ってもらえることになり、伸男くんも誰にも打ち明けられない秘密を打ち明けることができる。打ち明けた後のおじいちゃんの「おめでとさん」というリアクションに伸男くんも救われたに違いない。

みんな仲間のひとりとして受け入れられ、誰かの役に立っている。そんな世界に人は幸せを感じるんじゃないか。愛に溢れた物語だった。

役者さんもとても魅力的。先ほどあげた緒川たまきさん始め、ともさかりえさんもかわいかったし、みなさんいい役者さん。
そして個人的に応援している井上芳雄さんもプリンスオーラは封印して田舎の純朴な青年役を好演していた。それにしても2作連続で記憶を失った人物の役がくるとは、そういう役に向いているのだろうか?透明感?(笑)

「来年はいい年になるといいね」というラストもじんわりとくるものがあり、観劇納めにふさわしい作品だった。



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