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傑作ルポ3選「 凶悪、文庫X、でっちあげ 」ジャーナリズムの教科書【 本の紹介 】


「 凶悪  ある死刑囚の告発 」新潮45編集部

映画「 凶悪 」を、二回目に観なおして、慄然としたのは、実際の事件を、ほぼ忠実に再現しているノンフィクションであると知ったこと。

そして、最近、さらに驚いたのは、すでに原作があって、事件の詳細が死刑囚の告白と、筆者の取材によって明らかにされ、事件の首謀者が裁かれていたということでした。

文字通りの世間知らずだけれど、世間には知らずに済ませたいこともありますね。人間のなかにひそむ「 凶悪 」な部分なんかは、特に。


「 殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件 」清水潔

「 文庫X 」として書店に並び、世間を騒がせた本の正体。記者の執念が、「 冤罪事件 」を解決し、「 真犯人 」を探し出しました。それでも、野放しにされたままの殺人犯。一体、何が起こっているのでしょうか。

これは、今、読まなければならない本です。ジャーナリズムの極致がここにあります。


「 でっちあげ 」福田ますみ

「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』」という目を疑うような見出しの記事を読んで、誰が当の教師の無罪を信じるでしょうか。

メディアに吊し上げられ、一時は停職に追い込まれ、妻や子どもの安全まで脅かされるようになった、極悪非道の教師の顛末を描いたルポ。

・・・では、ありません。

そもそも、児童に対して体罰もいじめも自殺教唆も、存在しなかったのです。それらは全て事実無根であり、すべて当の児童の嘘、もっと言えば嘘を仕向けたモンスターペアレント(この呼称は好きでないが、あえて呼ぶ)の虚言だったのです。

学校と保護者のいびつな関係性(教師は保護者から一歩下がることが大事?)、事なかれ主義の管理体制、マスメディアと報道の在り方を問う本書。

10年に及ぶ裁判により、無実=冤罪が証明されたことだけが救いではありますが、失われた時間は戻りません。

マスコミ関係者、教育関係者はもちろんですが、ふだん事実不明の情報に晒されている私たち(一般人)こそ、戒めに読んでおきたいですね。

(完)

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