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韓国映画の強みを読み解く2冊「 韓国映画100年史 」と「 韓国映画ベスト100 」【 映画本の紹介 】

「 韓国映画ベスト100 」寺脇研


2007年刊行。今だから読み直したい本ですね。当時、文部省、文化庁で働いていて韓国と映画交流を手がけた、寺脇研さんによる韓国映画の魅力を伝えるための100のセレクト。

「 JSA 」から「 グエムル 」まで、とあるように、13年前に書かれたものなので、懐かし作品を思い出せました。自分が観ていたのは20作品ほどでしたが、見落としていた面白そうな作品を発掘できたのが嬉しいです。

巻末の、時の人ポン・ジュノ監督との対談も、今読むと、清々しさと、今日を予見したような言葉を見つける面白さがありました。

願わくば、寺脇さんには、続編〈「 グエムル 」から「 パラサイト 」まで〉を書いて欲しいと思うんだけど、どうでしょう?


「 韓国映画100年史 」鄭琮樺


1897年に植民地朝鮮に活動写真が導入され、1903年に東大門の器械倉庫で初の上映からすでに100年以上が経ちます。2019年で100年。

日帝時期の朝鮮映画人はハリウッドを目指すが、現実には日本映画を参考モデルにし、在朝日本人との協同で映画を作ったりしたそうです。その草創期に、彗星のように現れたのが羅雲奎の「 アリラン 」(1926)で、これが朝鮮映画の発火点となりました。

通読して分かったのは、韓国映画の歴史は、植民地→朝鮮戦争→南北分断→維新独裁→金融危機という時代状況においての、強制化された近・現代化という「 暴力 」の渦中で栄枯盛衰を繰り返してきたことです。

また、それは、植民地支配/民族独立、独裁/民主化、封建・近代化/自由・個人主義との対立軸が織りなした、集団と個人、上層と下層、男と女が、複雑に絡み合いながら深化されていく過程でもありました。

今年のアカデミー賞受賞のときから、考えていた韓国映画の強みとは何かという問い。その一つは、確固たる映画観客(2013年からは2億人観客=一人当たり4回以上)の存在はもちろん、常に国家や制度と緊張関係にありながら、同時に大衆のための興行性も満足させてきたこと。つまり、ジャンル映画にとらわれず社会の苦悩を連動させてきたことにあるのかも知れませんね。

映画史の100年は、そのものがまるで映画のようでした。(完)

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