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春の夜は

あっけなくホーム画面に設置してあった彼の誕生日までのカウントダウンは他の人のものになった。

人の心はうつろいやすく、そしてうつろったことさえ忘れていく。そうやって、みんな忘却しながらいきる。

そうしないと今を楽しめないからだ。いらなくなった感情は、そんなことあったっけ?というくらいあっさりと捨てられる人もいる。

たまには、なーんにも考えず音楽を聴いて歩きたい。

今日はなんとなく新宿方面へ。新宿御苑の隣をぷらぷらとヒップホップを聴きながら歩いた。

デジタルリトリート、まじで無理ゲーだと思うけど、意識するだけで結構楽になる。

日々いらない情報にさらされ…いや、自分から飛び込んでいっていると頭の中から何かこぼれ落ちそうになる時がある。

そんな時は、とにかく音楽を聴いて体を動かす。いらないものは見たくないし反応もしたくない。

今日はそんな夜だ。

ビールを買って飲んで、明日に備える。

『おまおれ』を読みながら、やっぱ柿次郎さんに惹かれてた理由なんかわかるわぁって、悦に入る。

春の夜って好きだ。ノスタルジックな大学時代の新聞配達を思い出した。

大体春の夜は風が強い。今日みたいな日が多い。

春の匂いがする早朝の夜、ノーヘル原チャで400部近く都内板橋区配ってた。

終わったら、夜桜を見上げてボケーっとして、あれはアレで楽しい時代だった。同年代の奨学生は何人かいたから、配達終わった後バイクに座って桜見て、なんか将来のこと色々喋ったりしてた。
 
桜の花がひらひら舞うんだけど、街灯の光に照らされて、それは綺麗だった。でもその分、雨が降るとぐちゃぐちゃになってた。

寮に住んでいた。仲間とと一緒に釜の飯を食べる。その後強烈な眠気が来るので、案の定昼まで当時同棲していた彼と寝てしまい、大学の午前の授業にはいつも出られずに終わっていた。

しかし四年間のうち2年でほとんどの単位を取得して、残りの2年はほとんどゼミで終わってた。

今思うと、配達と集金でクタクタになって勉強できなかった。もったいないなと心から思う。

時間とお金があったらまた大学に行きたい。なぜなら卒論を書いていないから。ゼミは取ってたけどね。そんな暇なんて、なかった。

新聞配達の仲間は10代から70代まで。チャリで板橋区の高島平とか配ってたじーちゃんとかいたからエグい。

とはいえ、事故った時とか、遊びに行く時とか、最高に楽しかった。

夜中に配達車でみんなでラーメン食べに環七に飛び出す。配達でそのあと走りまくるのでガッツリ食べても痩せていった。

環七にあったシロクマは、めちゃくちゃな大盛りで美味しかった。

たまには配達車で山下公園に遠出。でも真夜中すぎてなんも見えなかった。

事故って仙骨をあった時も大丈夫。みんなが協力して配達してくれた。なんだかんだ言って、助け合ってた。

みんなお互い様だから。家族みたいな環境で、仕事して学校行って、社会に出たもんだから、やっぱりそういう会社に入社した。

居心地が良すぎて、成長という意味ではそうなってなかったんだろうと思うけど、今でも新聞社は大好きだと言える。

春はいつも新聞配達の時代を思い出す。8年間一緒に暮らしたあの人は、元気だろう。

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