Lund大の『mRNAワクチンからの逆転写がー』が現実レベルでは起きないことを示すコメントの要約

上記コメントの要約を作っておこうと思います。
医学は専門ではありませんので、翻訳の拙さ等に関して医療関係者からのご指摘を歓迎します(^o^)。

【はじめに】

Aldénら(2022)が最近、Pfizer/BioNTech COVID-19 mRNAワクチンBNT162b2の細胞内逆転写をヒト肝細胞株(Huh7)[1]で報告し、mRNAワクチン接種者間での結果としての遺伝毒性について大きな懸念を引き起こしました。

新規COVID-19ワクチンは、当初からいくつかの論争に巻き込まれており、ヒトゲノムに組み込まれる可能性やヒトDNAを改変する可能性(遺伝毒性)に対する懸念は、反ワクチン運動家にも利用され、ワクチン接種に大きな影響を与え、世界中でワクチン接種を躊躇していることを裏付けるものとなってしまいました。

本稿では、最近in vitroで証明されたこのような現象が、何故生体内では臨床的に発現せず、従って健康な人に一般化出来ないのか、その理由を説明します。

【1】実験モデルが科学的に不適当

  • Huh7はINF刺激に反応し、in vitroでのウイルス感染と複製の研究に有望な細胞株ですが[2]、in vivo環境、特に包括的な細胞性・液性免疫反応の欠如を反映しません。

  • Aldénら[1]が採用した実験モデルは、BNT162b2 COVID-19ワクチンを含むmRNA治療薬の遺伝毒性を評価するには、科学的に不適当です。

  • ワクチンが注射部位を超えて分布し、結果として肝細胞に導入されることは、可能性があるとはいえ [3,4] 、mRNAがスパイク・プロテインに翻訳され、ワクチン導入肝細胞に対する免疫反応を惹起する結果となります。

  • 多くの場合、細胞障害性T細胞や抗スパイク抗体を介した健全な免疫反応により、ワクチン感染肝細胞は最終的に排除されるため、mRNAの逆転写はin vivoでは起こらないと思われます。

【2】現実的でないワクチン用量の使用

  • in vitroで使用されたワクチン用量は、in vivoで予想されるよりも遥かに高用量です。

  • 著者らは、in vitro実験で使用された0.5~2μg/mLのワクチン濃度は、in vivoでの肝細胞におけるワクチンの分布を反映していると主張しています。

  • in vitroで使用された培養細胞の密度と体積は、ヒトのin vivoにおける肝分布体積率を遥かに下回っています。

  • 更に、濃度の計算は、EMAの報告書[5]に引用されている薬物動態試験によるワクチンの18%の肝分布に基づいています。

  • 問題の薬物動態研究は、肝細胞における構造脂質の分布に言及しており、mRNAそのものではありません。

  • カプセル化されたmRNAをオフロードした後、ワクチン製剤から分離された脂質は肝臓で分配され、クリアされると予想されます。

  • EMAの報告書[5]で報告されている分布分画は、採用されているアッセイ方法の限界により、断片化したナノ粒子(分離した脂質)の分布とmRNAをカプセル化した無傷のナノ粒子とを区別することが出来ません。

【3】癌化した肝細胞を使った実験である

  • この実験では、ヒトの初代肝細胞とは大きく異なる培養肝細胞がん細胞(Huh-7)が使用されています。

  • 著者らは、Huh-7が活発なDNA複製を行ない、健康な肝細胞とは著しく異なる遺伝子やタンパク質の発現を示すことも論文で認めています。

  • 特に、RNA代謝に関与するHuh-7で発現が増加したプロテインは、in vitroで導入されたmRNAの逆転写を促進すると考えられ、これはin vivoの健康な肝臓では起こり得ないことです。

  • mRNA の薬理学とネイキッド mRNA と製剤化 mRNA の細胞内への取り込みに関する優れた概説は、 [6] に記載されています。

【4】COVID-19ウイルスは感染性のウイルス

  • レトロウイルスは細胞内で逆転写することが知られており、宿主ゲノムに組み込まれる能力を持っています。

  • SARS-CoV-2がその遺伝子配列の一部を宿主細胞のDNAに組み込む能力があることを支持するいくつかの証拠があります[7]。

  • しかしながら、レトロウイルスとは異なり、感染性のSARS-CoV-2ウイルスは統合されたサブゲノム配列から再生産されることはありません。

  • この証拠はまだ結論に至っていませんが、回復期の患者においてPCR検査陽性により非感染性ウイルスが長期にわたって検出されることを説明出来るかもしれません。

  • これはまた、かなりの数のCOVID-19患者に観察された《long-COVID》の背後にあるメカニズムを示唆するものかもしれません。

  • 古代のウイルスは、大昔に我々の祖先のゲノムに組み込まれて以来、暫くの間、ヒトのゲノムに潜んでいました[8]。

  • ヒト内在性レトロウイルス(HERVs)は、ヒトの全ゲノムの4〜8%を占めると考えられ、環境病原体に対する種の適合性を高める、我々の遺伝的進化の一部であると考えられています。

  • しかし、ウイルスのゲノムの残骸を運ぶことの健康への影響は十分に理解されておらず、一部はHIVのような疾患の原因となる可能性さえあります。

【結論】

  • 注射後のmRNAの分配と肝細胞への導入が不可能なわけではないが、ワクチン導入肝細胞に対する免疫応答(細胞障害性T細胞および抗スパイク抗体)が引き起こされることになります。

  • この反応は一過性で、「異常な肝細胞」に対して非常に特異的で、免疫細胞によって導入された肝細胞の除去につながると思われます:従いまして、mRNAの逆転写はin vivoでは不可能と思われます。

  • Aldénら[1]が発表したin vitroデータは、適切な動物モデル(例えば、トランスジェニックFischer 344 Big Blue® ラットのin vivo突然変異アッセイ等)でのin vivo検証を行わなかったため、誤解を招く可能性があります。

  • Aldénら[1]の現在の知見は、in vivoで証明されなければ、一般にmRNA治療薬に対する社会的信頼を損なう可能性があります。

  • COVID-19ワクチンの動物及び臨床評価で見られ、EMAの評価報告書[5]でも報告されているように、肝細胞の免疫介在クリアランスは、可逆的な機能的肝及び胆道作用(肝腫大、空胞化、γ-GT、AST及びALP増加)に繋がるかもしれないことに注意する必要があります。

  • 肝機能の変化のいくつかは、mRNA自体によるものではなく、ALC脂質(ワクチン製剤のmRNAをカプセル化するために使用)の肝細胞への長期蓄積に起因している可能性があります。

  • これらの肝影響は、ワクチンの前臨床(動物)および臨床評価において、一過性で主に可逆的でした。

  • しかし,既往症のある人や免疫不全の人等特殊な集団では,肝影響が長引く可能性や肝細胞に対する自己免疫反応が拡大する可能性が否定出来ません。

  • COVID-19ワクチンのファーマコビジランスでは、免疫後の胆汁うっ滞性肝炎や自己免疫性肝炎の多くの事例が示されており[9]、現在、肝組織学を伴ういくつかの臨床例報告が完全に公表されています[10,11]。

  • しかし、これは因果関係を証明するものではありませんが、肝損傷のリスクが高い被験者、既存の肝疾患を持つ被験者、肝臓や胆道系の自己免疫疾患(例:自己免疫性肝炎や原発性胆道炎)等の特別な集団におけるmRNAワクチンやウイルスベクターの安全性を確認するための更なる調査を必要とするものです。また、重要なこととして、免疫不全の被験者、例えば、現在または過去のHIV感染者、臓器移植者、慢性免疫抑制剤治療を受けている者等が挙げられます。

  • 規制当局には、予防接種後の薬剤安全性シグナルと被接種者の免疫不全の状態を調査し、更なる調査が必要な潜在的相関関係を分析することが求められています。

  • ワクチンは、医学における大発見であり、寿命を飛躍的に向上させてきました。

  • しかしながら、遺伝性ワクチンは新しいものであり、既往症を持つ被験者のワクチンの安全性を確保するために、特別な集団における包括的な評価は必須です。

  • 今後、特殊集団における新規(mRNAまたはウイルスベクターベース)COVID-19ワクチンの禁忌や安全性リスクが確立されれば、世界中で展開されている非遺伝子製剤戦略も含めたCOVID-19ワクチン製品になります。

  • 例えば、全不活化ウイルスワクチン(Covaxin、Valneva、Sinopharm、Sinovac)または組み換えタンパク質COVID-19ワクチン(Novavax、Vidprevtyn)は、特別な集団の有望な代替品になることが出来ます。

【参考文献】

  1. Aldén, M.; Olofsson Falla, F.; Yang, D.; Barghouth, M.; Luan, C.; Rasmussen, M.; De Marinis, Y. Intracellular reverse transcription of Pfizer BioNTech COVID-19 mRNA vaccine BNT162b2 in vitro in human liver cell line. Curr. Issues Mol. Biol. 2022, 44, 1115–1126. [CrossRef]

  2. 2Grünvogel, O.; Esser-Nobis, K.; Windisch, M.P.; Frese, M.; Trippler, M.; Bartenschlager, R.; Lohmann, V.; Binder, M. Type I and type II interferon responses in two human liver cell lines (Huh-7 and HuH6). Genom Data 2015, 7, 166–170. [CrossRef] [PubMed]

  3. Merchant, H. Inadvertent injection of COVID-19 vaccine into deltoid muscle vasculature may result in vaccine distribution to distance tissues and consequent adverse reactions. Postgrad. Med. J. 2021, Epub ahead of print: 29-09-2021. [CrossRef] [PubMed]

  4. Merchant, H.A. COVID vaccines and thrombotic events: EMA issued warning to patients and healthcare professionals. J. Pharm. Policy Pract. 2021, 14, 32. [CrossRef] [PubMed]

  5. CHMP. COVID-19 mRNA Vaccine (Nucleoside-Modified). Available online: https://www.ema.europa.eu/en/documents/ assessment-report/comirnaty-epar-public-assessment-report_en.pdf (accessed on 2 March 2022).

  6. Pardi, N.; Hogan, M.J.; Porter, F.W.; Weissman, D. mRNA vaccines—A new era in vaccinology. Nat. Rev. Drug Discov. 2018, 17, 261–279. [CrossRef] [PubMed]

  7. Zhang, L.; Richards, A.; Barrasa, M.I.; Hughes, S.H.; Young, R.A.; Jaenisch, R. Reverse-transcribed SARS-CoV-2 RNA can integrate into the genome of cultured human cells and can be expressed in patient-derived tissues. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2021, 118, e2105968118. [CrossRef] [PubMed]

  8. Hidden Viruses in the Human Genome. Genomic Education Program, NHS Health Education England. Available online: https://www.genomicseducation.hee.nhs.uk/blog/hidden-viruses-in-the-human-genome/ (accessed on 2 March 2022).

  9. Coronavirus Vaccine—Weekly Summary of Yellow Card Reporting. Research and Analysis, Medicines and Healthcare Regulatory Agency. Available online: https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-vaccine-adverse-reactions/ coronavirus-vaccine-summary-of-yellow-card-reporting (accessed on 2 March 2022).

  10. Lodato, F.; Larocca, A.; D’Errico, A.; Cennamo, V. An unusual case of acute cholestatic hepatitis after m-RNABNT162b2 (Comirnaty) SARS-CoV-2 vaccine: Coincidence, autoimmunity or drug-related liver injury. J. Hepatol. 2021, 75, 1254–1256. [CrossRef] [PubMed]

  11. Zin Tun, G.S.; Gleeson, D.; Al-Joudeh, A.; Dube, A. Immune-mediated hepatitis with the Moderna vaccine, no longer a coincidence but confirmed. J. Hepatol. 2022, 76, 747–749. [CrossRef] [PubMed

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