山本ジャーニー

2012年に世界の「食」と「料理」をテーマに世界一周へ。世界一周の中で食べた料理の数、…

山本ジャーニー

2012年に世界の「食」と「料理」をテーマに世界一周へ。世界一周の中で食べた料理の数、「1165」。その1165皿の一部を再現・アレンジした「旅食」をメニューに秋葉原旅食ダイニングJourney×Jounreyを2015年にオープン。小説Journey×Journeyも執筆、完成

マガジン

最近の記事

Journey×Journey.1 五十嵐信夫の冒険

「僕の名はリチャード」 と、リチャードは言う。 「他に何が知りたい?」 ご存知のとおり、麻衣子と観た『ザ・ビーチ』の冒頭のシーンだよ。この頃のレオナルド・ディカプリオはまだ若かったし、我々も同様に若かった。と言っても、あれからまだ4か月しか経っていないけれども、卒業間際の高校生3年生と入学から4か月経った大学生とじゃ、同じ4か月にしてもわりと変わるもんだ。我々、と言うか、麻衣子がすっかり変わってしまったようにね。すっかり大人びてしまった麻衣子にとって、僕なんて竹槍を両手

    • Journey×Journey.2 朝生麻衣子の冒険

      裏切った私に対し信夫が送りつけてきた、断罪とも言える長いメールを私は時折、見返すようになった。劣等感にまみれながらも人を見下すかのように嘲り、暗澹としながらもどこか開き直っているかのような、病的に深く重く、絶望的に幼い、その薄気味悪いメールは当初の私には読むに堪えかねるもので、しばらくの間、読み通すことができずにいた。しかし、その一方で私の裏切りが彼に刻んだものは相当に深刻であるという罪の意識は容易に消化できるものではなく、それは翻って、私自身にも刻まれる形となった。だからこ

      • Journey×Journey.3 進藤雪見の冒険

        高校生の頃、父の仕事の都合でドイツの首都ベルリンに住んでいた。ベルリンだけではなく、ライン河流域のデュッセルドルフやドルトムントにも多くの日系企業が進出し、日本人学校も多くあったが、両親はインターナショナルスクールに通うことを勧め、私もこれに賛成した。そのハイスクールは世界各地からの留学生も積極的に招き入れ、講義だけでなく、生徒と交流しているだけで多種多様の文化と価値観を学ぶことができた。休憩時間も放課後も全てが有意義な授業であった。 その高校時代が今の私の大部分を形成して

        • Journey×Journey.4 綾瀬遼の冒険

          「リョーって意外と好き嫌いないよね?」とガールフレンドによく言われる。一時期付き合っていたスペイン人にも、アイルランド人にもそう言われた。日本人の女の子にだって言われたことがあるし、先日、クラブで声をかけたシンガポール人にも同様の感想を抱かせたようだ。 「意外と、って?」 「リョーみたいな人って、食べ物の好き嫌いが激しそうなイメージあるから」 遼はここで溜息をつき、信号を青から黄色に切り替える。 「俺みたいな人、って?」 韓国人のガールフレンドは目を合わせずに、指先

        Journey×Journey.1 五十嵐信夫の冒険

        マガジン

        • 小説Journey×Journey
          7本

        記事

          Journey×Journey.5 金子鉄成の冒険

          長きに渡ったこのブログの最後を迎える前に私は15年前に食べたチーズケーキのことについて触れなければならない。あのチーズケーキを食べなければ私はこんなふうに世界中を放浪することはなかったかもしれないし、少なくとも、その放浪のゴールにこの地を選ぶことはなかっただろう。 そのチーズケーキを食べたのはインドのプリーという町だった。15年前に訪れた街であり、そして、今、私がいる町でもある。 プリーはインドの南東部に位置するオリッサ州の町であり、ヒンドゥー教の四大巡礼地の一角として挙

          Journey×Journey.5 金子鉄成の冒険