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#010_方向転換は突然に 〜俺は仮面ライターになる!〜

もう2月も終わる。

先月、大好きな大相撲も初場所も終わってしまった。
しかし、今場所の千秋楽は良かった。
久々に本当に見応えがあって、観終わった時は心地よい疲労感が充実感となっていた。

あぁ、なんて素敵な言葉だろう。千秋楽。
楽日という言い方も粋な感じがして好きだ。

幼少期からテレビ観戦し続けている大相撲。

去年会社を辞めてから3場所目だから、
無職歴も半年に差し掛かっているということだ。

大好きな相撲の話はまた別の機会するとして、
相撲はシンプルで奥が深いところが好きだ。
が、人生はまったくシンプルではない。

今回はそれを改めて実感した話です。

さて、弁護士に退職代行を依頼し、
抱えていた仕事も、会社にあった荷物もすべて放り投げて
いきなり出社しなくなったのが9月11日。

その日から年末年始までは、
自ら好んで出口のないトンネルに入ったくせに
モヤモヤ、イライラした気持ちを繰り返し、
あらゆることをネガティブに考えるという後ろ向きな時間を過ごしていた。

それが年明けから風向きが変わってきた。

まず、ライター仕事が立て続けに舞い込んできた。
そして、知人から出版関係者を紹介すると連絡が入る。
それとほぼ同時に、地元で世話になった恩師から
仕事を手伝ってほしいと依頼のメールが届く。

急にバタバタしてきた。
が、これはいいバタバタだ。
そうだ。ハッピー・バタバタと呼ぼう。

そんなハッピー・バタバタの中で青天の霹靂があった。
出版社に再就職が決まってしまったのだ。
50代の俺をぜひ雇いたいというのだ。

「嘘でしょ? なんか裏があるよね?」

と、まったく素直に受け入れない自分。

ことの始まりは、セコくて卑怯な自分が、
フリーライター・編集者として独立したことを隠し、
失業保険を受給するために
せっせとハローワークに通っていることだった。

受給するためには、
就職活動をしていなければならない。

だが、会社員に向いていないことに50歳を過ぎてから
気づいたトンチンカンな自分にとっては
完全に形だけの就職活動でしかない。

どうせ、50歳を超えたジジイを採用する出版社なぞない。

それがわかっているから、フリーになることにしたのだ。

だが、一ヶ月に求人サイトで2社にエントリーするだけで
条件はクリアできる。超簡単だ。
なぜなら編集職の募集は、どこの求職サイトにもてんこ盛りだから。

ところで、毎月天引きされていた失業保険料を受け取るのは当然の権利であるはずだ。

しかし、就職活動をしていないと払わないというシステムになっている。
まったく意味不明である。

働いていないのだから、無収入なのは明白。
そうなることを想定しての保険なのだから
すぐに払うのが当然であるべきだ。

でも、このシステムを変えることに注力するより
求人サイトに2社エントリーする方がはるかに面倒がない。
ごちゃごちゃ言う方が無駄だ。

で、エントリー!

で、予想通り、不採用のゴールドラッシュ!

「慎重に検討を重ねましたが、ご希望に添えない結果となりました」

100%、このデフォルトのコメントが返ってくる。
予想通りとはいえ、この手の「あんたなんぞ必要ありません」というコメントに
ダメージを受けてしまう自分がいる。

起業家やビジネスマンとして日本経済を引っ張っているのも、
働き手として求められているのも20代から30代だ。

人手不足が深刻化しているから、ギリギリ40代にお目溢しはあるが、
50代に用はないだろう。

ただ、自分に変なプライドがあるのか、
就職サイトからの不採用のメールに対して、
社会や世の中から拒絶されているとか、不要な人材だと烙印を押されているとか
そんなシリアスな受け止め方はしていなかった。

で、何を思ったか、
この状況を逆に面白がってやろうと、
出版社だけでなく、編集職を募集している会社に
片っ端からエントリーしてみた。

さっき数えたら95社にエントリーをしていた。

編集職の求人って思った以上にあるんだねえ。
というか、どうやら文章を書ける人が不足しているようだ。

生成AIが文章を書くから、より一層文系の人間は必要なくなる、
なんてことを聞いたような気がしたが
必ずしもそうではないようだ。

そりゃそうである。
生成AIにちゃんとした文章を書かせるには、
それを命じる人間の能力が関係するのだから。

何をどんな視点で書かせるか。
どんな展開にしたら興味深く読めるか。

そういった企画力や創造力、そして何より文章読解力がなければ、
AIにおもしろいものを書かせるなんて無理なのである。

立て続けに舞い込んだライター仕事にも
chat GTPが書いた原稿を読みやすくリライトしてほしいという依頼があったが、
「結局、人間が書くのかよ!」というツッコミの前に、
「どんな指示をしたら、こんな文章になるんだ?」と感じる方に意識が向いた。

たぶん、検索サイトに入力するキーワードがざっくりしているくせに、
早く答えをほしがるタイプの人が書かせたのだろう。

ひどい言い方になるが、自分で考えることをしない人に
どんなにハイスペックな道具を渡しても、
使いこなすことは絶対にできないということのような気がする。

まあ、それは横に置いといて、
編集職というのは、探してみるといろいろな業界・分野の会社で
求められていたということだった。

特にWebライターのニーズは、
フリーでも、正社員でもかなり多かった。

そんなことを感じながらエントリーを続けていたら、
「一次面接にお越しください」という返事を送ってきた
危篤な会社がいくつか出てきた。

でも、これは怪しい。

定年まで10年もない人間を採用したいなんて、
何かワケがあるに違いない。

概ね、何らかの理由で社員の定着率が低く、人手不足が深刻化していて、
もう年齢がどうのこうの言っている場合ではないような会社だろう。

定着率の低さの原因は
膨大な時間外労働や人件費をケチるなどの経営者がアホなケースか
人間関係だ。

で、その「会社名+評判」で検索してみる。

ほーら。
真偽のほどはさておき、悪意に満ちた書き込みがドッサリ。

中には、その会社から受けた嫌がらせなどを暴露するブログ記事なんかも出てくる。

その会社のホームページをのぞくと、
サイト全体に漂う胡散臭さがそれらの書き込みを裏付けているように感じる。

書き込みの真偽は定かではないが、
ここまで書かれているのは、何かネガティブな理由があるのだろう。

そして、無駄に煽るだけの安いキャッチコピーと
ひと昔前なら「ちょうちん記事」と言われるような
薄っぺらい文言の羅列に騙されるほど、
こちらもピュアじゃない。

うーん。どうしようか。
時間あれば面接を受けてみるのもおもしろい。
何かのネタになるはずだ。

ただ、せっかく発注してくださったライター仕事を差し置いてまで
行くほどではない。

で、申し訳ないが辞退した。
もうブラック企業は満腹だ。
辞めたばかりの会社を合わせて3社も経験したからね。

そして、なんてたってフリーで生きていくことに決めたもんね!
だって俺は会社員には向いていないんだもん!

ところが、どうもそうじゃなさそうな会社から
面接の連絡が来た。

メールの文面を読むと、人手不足で困っているのは
ほかの会社と同様なのだが、
どうやら事情が違うらしい。

ちょっと気になるな。
と思っていたとき、
カミさんが深刻な顔つきで、突然不安を吐露してきた。

フリーライターで生計を立てることは
いつになったら実現できるのか? と。

「まあ、できるだけ早くとは思っている」としか答えられない。

それでは不安であるとカミさんはいう。
その気持ちはよくわかる。
半年前までそんな不安は微塵もなかったのに
夫が無職で、稼ぎもほぼなくなったのだから。

貯蓄も多くはない。
そのほとんどは息子の学費に消えることが確定している。

大金は必要ないが、毎月ベースとなる収入はほしい。
フリーでそのベースとなるものが、いつできるのか?

さて、どうしようか。。。。。
あっ、面接に呼ばれていた会社があった。

ちょっと調べてみる。
書き込みは可もなく不可もない。
会社のホームページにも胡散臭さや浮ついた感じが少ない。

とりあえず、面接を受けることにした。
ネット情報からでははっきりしないことが多すぎる。

面接の感じは悪くない。ブラックな会社ではないことはわかった。
給与面には納得できないが、それ以外にハードルとなる点は見つからなかった。

ただ、本当に50歳超えのジジイを採用したいと思っているのか、
だとしたら、それはなぜかが気になる。

それを率直に質問すると、納得の答えが返ってきて驚いた。
(答えの内容を書くと会社特定につながる可能性があるため伏せます)

すると、なぜか二次面接に進み、採用内定の連絡が届くではないか。

もうここまで来たら、流れに乗るのも面白い。
会社員というシステムは、生活して上では便利で楽ではある。

ならば、今の自分が選択するのは
「会社員をしながらライター業もやる」の一択だ。

そうだ「仮面ライター」になるのだ。

で、2月からノコノコ出勤しています。

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