見上げた空は
息子がショッピングモールに併設されているコーナーの、クレーンゲームで遊んでいた。
普段、クレーンゲームはしないので初めて(?)だと思う。
空間把握能力の低い母と、クレーンゲームが得意じゃない父から生まれた子どもなので、もれなく息子も下手だった😨
「ドラクエのキングスライム」に熱烈アプローチして挑んだのだが、惨敗の惨敗… キングスライムを連れて帰ろうと、1000円も使ってしまった。
通信簿の「A評価」が一つあれば500円あげる、という約束で彼は、年度末の通信簿のA評価を11個もらってきた。
そして約束通り5500円を手に入れたのだった。
普段、お小遣いをあげていないので「カラーテストで裏表100点だったら100円、小テスト100点で10円」という細々とした金額で、友達と遊ぶ時のジュース代やコロコロコミックを買うというやりくりをしている彼にとって、5500円は大金過ぎだ。
たまたま訪れたショッピングモールのクレーンゲームでキングスライムのぬいぐるみに出会ってしまい、「6回¥500✕2」を支払ってしまった。
お金を入れる前は、「えー取れるかなぁ…」と自信なさげを口にしていたが、期待で胸は弾んでいたはず。
だって、クレーンゲームを初めてするといっても、家族の中で一番ゲームセンスがあるのは自覚しているし「ひょっとしたら取れるかも!?」と自惚れもあったと母は思う。
キングスライムは確かにかわいい。コロンと丸くて大きい。両手で一抱えはある。
クレーンゲームのアームは3本。
毎回、一度はアームでスライムを掴むのだが、アームが上に登りきった時の「ガシャンッ」という衝撃でぬいぐるみは落ちてしまう。
そして無惨にも、あっちコロコロこっちコロコロして取り出し口から遠ざかっていく。
母に似て、お金はちびちびと使っていたのに、まさかクレーンゲームに1000円も突っ込むとは思わなかった。
帰っている時もずっと落ち込んでいて、「タラレバ」の話しをしていた。
「クレーンゲームよりも、ガチャをすればよかった…」とか、「最初からメルカリでぬいぐるみを探せばよかった… 」などブツブツ言っていた。
気持ちは分かるがそんなにしつこくネチネチ言うタイプとは思わなかったので、一緒に帰っていて驚いた。
ははーん… 息子のこういうところを主人は女々しいと言っていたのだな、と思った。
主人がいたら絶対に怒られていただろうなという泣き言をずっとブツブツ言っていた。
私は優しいから「うん、うん…」と聞いてあげていたけど。
しかし挙げ句の果てには「買い物について行かなきゃよかった…ママが止めてくれれば…」なーんて、もう訳わかんないこと言って来たのでムカついた。
泣きべそをかきそうな顔になり落ち込む息子。
(私のせいなのか!? なに言ってんだ!!)
まるで私に怒られたみたいにトボトボ重い足取りで歩く。
ショボイなぁ…と、ムカついたがそれだけ欲しかったんだろう。かわいそうだけどしょうがない。
人生なんてそんなもの。
「最悪な春休み最後の日やん…」と彼はつぶやき、急に立ち止まり、壁に登って寝そべりだした。
目の前は道路なので、車の人や歩行者が息子を見ている。
私「おーい、どした??」
息子「………」
私「帰ろうよ!」
息子「………」
一向に動かない彼を私は写真に収め、突っ立って待っていた。
しばらくすると、気が済んだのか、壁からスルッと降りてきた。
彼なりに考え、気持ちを切り替えたのたのだろうか。見上げた空には何か見えた??
空は果てしなく広くて、自分の落ち込み加減がショボいと気付いたのだろうか…
それからの足取りは軽くて、私と二人で冗談を言い合う普段通りの彼だった。
明日はいよいよ新学期。
私もドキドキしている。
楽しい一年になるといいね。
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