何かに、迷った。

土日休みは車かバイクか作曲か、たまにガーデニングとお菓子作り。 投稿内容は、絵本の中の…

何かに、迷った。

土日休みは車かバイクか作曲か、たまにガーデニングとお菓子作り。 投稿内容は、絵本の中のお伽噺風の世界観で書いた曲(インスト)を投稿する予定です。

マガジン

  • 此岸のラボラトリー

    絵本の中のファンタジーな世界をイメージした楽曲集です。 イメージが伝わりやすいようにそれぞれの曲には物語風のフレーバーテキストが付いています。他のマガジンと世界観を共有していますので、お時間があれば合わせてお読みください。

  • 御伽噺は人形たちの前日譚の雪の花

    同じ世界観で作った曲たちのまとめです。 学生時代に書いた物語(自分で読んでてキュッとなるタイプのやつ)をフレーバーテキストとして入れたりしています。絵本の世界のようなちょっと子供っぽくぼんやりとした曲たちが多いです。

  • おぼろげな寵愛を受けて

    絵本の中のファンタジーな世界をイメージした楽曲集です。イメージが伝わりやすいようにそれぞれの曲には物語風のフレーバーテキストが付いています。他のマガジンと世界観は共有しているので、お時間が合わせてお読みください。

  • 玩具箱の中、魔女探し

    別マガジン『瓶の中の蒼い国』から続く続きものです。絵本の御伽噺風の世界をテーマした自作曲集となります。それぞれの曲にちょっとあれなフレーバーテキストが付いています。気が向いたときに聞いていただけると嬉しいです。

  • 瓶の中の蒼い国

    別マガジンの『青い希望を求めて』から続く世界観で書いた曲の纏めです。一曲一曲に読み返すと顔を覆わずにいられないフレーバーテキストが付いてます。癖の強い曲のばかりですので、ぜひ一曲一曲を噛んで味を楽しん頂ければ嬉しいです。

最近の記事

11,彼岸のイニティウム

シリーズもの11曲目です。 エンディング風のつもりです。 『研究者とメランコリー』のアレンジになります。 テンポ遅めに感情の抑揚も少なく淡々とした始まりから、急に『研究者とメランコリー』のメロディが入ってくる所がお気に入りです。 元々はシリーズ全曲のお気に入りメロディ全て詰め込んだエンディング風の曲を考えていたのですが、収拾がつかなくなったのでやめました。 以下この曲の物語。 「拾ったボロボロの本は辛うじて数ページだけ読むことが出来た。長い間波に打たれ、この海岸に打ち上げられた後も日光に焼かれたであろうその本は乾燥してページを捲る度にばらばらと崩れる。脱落し散らばったページも可能な限り集めて鞄にしまった。 この駅で降りたのは気まぐれだったのだけれど、こんな再会を果たすとは思いもしなかった。掠れて読めないページは可能な限り復元を試みてみよう。海を漂った割に妙に状態が良いのは製本に使われた素材のお陰か、はたまた書き手の思いが強く乗っていた所為か。 かつて父と呼び慕ってくれた彼を思いながら、僕は海岸を後にした。」

    • 10,海岸に流れ着くメモリア

      シリーズもの10曲目です。 『花と記憶の林道』より『猟奇的メモリア』のアレンジです。 といっても、フレーズを流用しただけですが…。 何にも左右されない波に流されて揺蕩うイメージで書きました。今はただ波に運ばれて、どこかに流れ着くその日まで身を任せて眠りたい…。眠い。 以下この曲の物語。 「書き手を失った1冊のノートが海の中をただ流されていた。かつて書き手の居た場所は今は海の底で瓦礫の山。旅の途中で拾った貝と藻類を栞代わりに本は何処までも流される。やがて本は海岸にたどり着く。小さな駅がある、とある海岸に。」

      • 09,ストゥディウムの怪物

        シリーズもの9曲目です。 ちょっと戦闘曲っぽい和風(?)の曲になりました。シンプルに半音ずつ下がるイントロはこんなテンポの遅い曲でも緊張感を出してくれている気がします。テーマは愛着に囚われた怪物です。可愛らしくドロドロとした曲を目指したつもりですが…難しいですね、人生経験不足かも。 以下この曲の物語。 「08-01 何故こんな状況で私はこのノートを開いているんだろう。そして、なぜ私は書くことをやめられないんだろう。…わかっている、これは現実逃避だ。逃れる事の出来ない現実を前に、ここに今の思いを綴ることで逃げている。 誰かが私たちの研究成果を勝手に使用した。選りに選ってあの方に。まだ私たちの機械は完成していない。使用した結果どうなるかまだ何の保障もない。…結果は今の現状が全てだが。 あの方は心を深く閉ざして、誰の声も届かなくなった。目に映る研究者達を次々と手にかけているらしい。警報と現状を映し出す私の部屋のモニターから、私の部屋のある区画が完全に隔離された事と、あの方がこの区画にいる事がわかる。 あの方を救うための研究が、あの方の心を閉ざして私たちを殺すのだ。日々あの方、父の事を考えて研究をして生きてきた。私たちにとって全てであり、私たちの崇拝対象であり、私たちの産みの親。 モニターについているスピーカーからあの方の言葉が聞こえる。こんな状況になっても私が縋るのは父だけだ。私の希望に私は殺される。」

        • 08,此岸のラボラトリー

          シリーズもの8曲目です。 此岸とは、仏教用語で彼岸の対義語に当たる言葉だそうです。様々な修行の果てにたどり着く悟りの境地である彼岸に対して、迷いや悩みに満ちた私たちの住むこの世界は此岸。そんな此岸のイメージをちょっと機械的な雰囲気で纏めてみました。確かに現世は迷いや悩みに満ちて、たまに生きること自体辛く感じる瞬間もありますが、一つ一つの迷いや悩みを紐解くように解決していけば、いつかは彼岸にたどり着けるのでしょうか。 以下この曲の物語。 「07-42 私たちの研究が芽を出し始めた。他者の意識に介入、精神を仮想的な世界として具現化させる仕組みが出来つつある。すでに試作機の試運転で2度被験者の精神の可視化、物質化に成功している。 全ては順調だ。何も問題なんてない。記録は全て正確に私たちの方向性に誤りがない事を示している。 次の実験で私たちは精神の直接操作を試みる。これを成功させなければ私たちは目的を達成できない。大丈夫だ、誰も何も間違ってなどいない。 偉大な成功を前に、どうやら私は少し臆病になっているようだ。お気に入りの珈琲を入れよう。かつてあの方が私に振舞ってくれたものと同じものが確かあったはずだ。楽しかったあの頃が思い出しながら、今は心を落ち着けるとしよう。」

        11,彼岸のイニティウム

        11,彼岸のイニティウム

        マガジン

        • 此岸のラボラトリー
          11本
        • 御伽噺は人形たちの前日譚の雪の花
          19本
        • おぼろげな寵愛を受けて
          10本
        • 玩具箱の中、魔女探し
          11本
        • 瓶の中の蒼い国
          11本
        • 二次創作
          1本

        記事

          07,繋がるデリバラブル

          シリーズもの7曲目です。 ちょっとスペーシーな曲になった気がします。物語に散りばめられていた点と点が繋がり出した、そんな転換期をイメージして書いた曲です。ループ前の盛り上げるメロディ、結構自信作。 以下この曲の物語。 「06-02 今回の報告会で私は先の探索の結果報告を行った。評価は上々、この結果を基に新たなプロジェクトの立ち上げも決まった。今までの努力が報われた喜びと、先の見えなかった研究が一つの終着点にたどり着いた安堵で今日はよく眠れそうだ。 もう一つの研究チームの報告も驚くべきものだった。あの遺体から採取した細胞と再製した記憶から、初となる蘇生体を生み出すことに成功したのだそうだ。実物を見る事は出来なかったが、資料と写真から彼らの自信がよく伝わってきた。 そして、私の報告と彼らの報告から両チームの研究が最終的に一つに収束する事も再認識した。私たちの新プロジェクト、精神への直接干渉は彼らとの合同研究となる。 もう少しで私たちの目的は達成される。全てが報われ、私たちは役目を全うするのだ。」

          07,繋がるデリバラブル

          07,繋がるデリバラブル

          06,忘れ去られたフラグメント

          シリーズもの6曲目です。 怪しげなピアノから始まり、幼さと寂しさを感じるメロディへつながっていく曲です。断片化した記憶、または記録です。微かに残っている小さい頃の思い出が、過去に己が書いた手紙や日記を見つけて急に鮮明化していく…そんなイメージで書いています。 以下この曲の物語。 「05-25 興奮が収まらない。想像していたよりも大きな収穫を地底湖のそこで見つけてしまった。裁定機が世界の構造の解明を決めた理由がこれではっきりした。私もそれを考えていなかったわけではないが、こんな事実を突きつけられて落ち着いていられるわけがない。こんな状態ではまともに報告書もかけない。一度落ち着こう、この雑記はその為のものでもあるのだから。 落ち着く為にも、報告書にまとめる前に見つけた事実を此処に書き出してみよう。 ・湖底にたどり着くまでに50ほどかかった。計ったから間違いない。 ・湖底は完全に平らに均されており、明らかな人工物で覆われていた。 ・祭壇の跡地を複数見つけた。 ・石碑を7つ見つけた。書かれている内容は全て同じだった。 ・私たちによく似た遺体を見つけた。 ・磁気テープを見つけた。 ・日記を見つけた。 この日記が今回見つけたものの中で一番大きな収穫だ。水に浸かっていたにも関わらず崩れることなく、読むことが可能な日記。間違いない。あの字を見間違えるはずがない。父の日記だった。内容も父から聞かされた事のある過去の話ばかりだ。そして問題なのは、日記に書かれた私たちの知らない過去の話だ。この世界の成り立ちと、父の思いと、御伽噺の様な記録の数々と。 それが御伽噺ではない事を私は知っている。父がそういう存在だと、最初から私たちは知っているじゃないか。 だめだ、文章がまとまらない。見つけた事実がいくつも抜け落ちている。 落ち着く為に一度眠ることにする。この分厚い日記は私たちにとって大きな発見であり、絶対に父に見つけたことを知られてはならない。」

          06,忘れ去られたフラグメント

          06,忘れ去られたフラグメント

          05,想像世界のエピセンター

          シリーズもの5曲目です。 真面目な雰囲気を出すためにベースで低音を固めつつ、気が抜けるようなフルート(?)っぽい音で雰囲気を柔らかくしてみました。うーん…ちょっと想像とは違う曲になってしまった…。 以下この曲の物語。 「05-24 地底湖は想像していたよりも大きい。そしてそれを取り囲むように散らばる人工物の数に圧倒されている。 多くの有益な情報の為に予定は大きく遅れている。これまで仮説でしかなかった数々の説は次々と事実に置き換わり、私は時間を忘れて調査に没頭した。 今日書くべき報告書は全て書き終えた。すべての探索を終えるにはどのくらいの日数がかかるだろうか。幸い、食料や飲料水にはまだ余裕がある。 明日は地底湖を潜ってみようと思う。これまで集まった情報からするときっとそこが全ての始まった場所。私たちの神様が想像の果てに作りあげたこの世界のエピセンター。 どのような場所なのかは想像がついている。私たち研究者は皆、生まれたその日に父の手の中にある世界そのものを見ているのだから。」

          05,想像世界のエピセンター

          05,想像世界のエピセンター

          04,地中深くの未探索エリア

          シリーズもの4曲目です。 今までとはガラッと雰囲気を変えて(自分が思う)ダンジョン風です。 電子音っぽい音をメインにして書き上げました。地底に広がるランダム生成のダンジョンをイメージして書いています。 以下この曲の物語。 「03-14 探索部隊が帰ってきた。 今回は私の研究の要となる彼らに欠員が出る事がなくて本当に良かった。 報告によると巨大な地底湖を発見したらしい。そこにはこれまで発見されてきたものと類似性のあるシンボルがいくつも発見されたのだそうだ。スケッチを確認したが、人工的な構造物の上に描かれた今まで以上に複雑なシンボルがあった。これまでの調査で地底の重要性は明らかだったが、今回の発見により具体的な報告が出来そうだ。 ただし、あまりに広大な地底湖は一度の探索では全てを調査する事が出来なかったとの事で、2度目の探索を計画中だ。今度は私自身も探索に参加する。 危険性は十分に承知の上だ。だが、これ以上机に噛り付いているのも性に合わないのだ。持っていけるだけの装備を鞄に詰めた所で、自身が浮かれている事に気が付いた。」

          04,地中深くの未探索エリア

          04,地中深くの未探索エリア

          03,相反する2つのイリスサングイン

          シリーズもの3曲目です。 最初のベースを船の汽笛っぽくしたくて謎に頑張った曲でしたが、テンポと拍子の所為で最終的にはそんなことどうでもよくなりました。イメージしたのは相変わらず海。海の上で揺蕩いながらも、これからの行先への不安が拭えない…そんな感じ。 以下この曲の物語。 「01-03 裁定機が出した結論の詳細が今日正式な書類として配られた。あの時は先延ばしにしていた結論がようやく出たと安心と喜びを感じていたが、今は不安に押しつぶされそうだ。 そもそも、私たちの研究はたった一人の為に進められている。愛する人を失い追い詰められて、自分で物事を考えることも決めることも放棄した人。その人は私たちの研究対象であり、同時に私たちの産みの親である。その人に何があったかは他の資料に書かれているから、ここに書き残す必要はないだろう。その人の心を救う事が私たちの最終的な目的だ。その為に私たちは生まれたのだから。 裁定機は目的を達成するために研究を二方向から進める事を決めた。一つは死者の論理的な蘇生の研究。もう一つはこの世界の構造の解明だった。 一つ目は解りやすい。あの人の失った人を誰が見ても納得するように蘇生する研究だ。見た目が同じだけだとか、同じような振る舞いをしているだけだと言わせない完全な蘇生の研究を進めるのだろう。問題は二つ目だ。この世界の構造の解明とあの人の心の救済に何の関わりがあるのだろうか。…思い当たる事が全くないわけではないが、少なくとも目的達成のためには遠回りな結論だと言わざる負えない。しかも私はこの二つ目の研究の責任者になるらしい。全く気が乗らないが、あの裁定機の結論に従うと皆で決めた以上は仕方がない。 …この雑記も、愚痴を書き記すだけのものになるかもしれないな。」

          03,相反する2つのイリスサングイン

          03,相反する2つのイリスサングイン

          Re01.御伽噺の雪の花

          リメイク1つ目です。 新しい環境があまりに楽しくて、勢いに身を任せて過去に書いた曲をリメイクしてみました。『御伽噺の雪の花』のアレンジです。元曲に対して少し輪郭がはっきりした曲になったと思います。物語中に出てくる伝承のようなイメージで書いています。 せっかくなので、元曲の記事にあった物語を乗せておきます。 「好きな絵本があった。 寝る前によく母が読んでくれた、一人で留守番しているときによく眺めていた、未だに持っている古い絵本。 タイトルは『雪に消え、未だ幸せな物語』。 『…昔々、この世界にはいくつも大きな国がありました。 世界は栄華を極めましたが、国々はいがみ合い、戦い合い、悲しい出来事がたくさんありました。 神様はそんな国々を憂い、世界中に雪を降らせました。 人々は雪に見とれ、雪に沈んでいきました。 国は衰え、人々は数を減らしましたが、世界は暖かく優しくなりました。』 人々が神様が降らせた雪の美しさに魅入られながら雪に沈んでいく姿はさみしくて、切なくて、きれいだと感じた。 語り部の言葉は優しくてやわらかい絵で描かれていた為、全体的に暗い物語にも関わらず、優しい気持ちになれる絵本だった。 最後のページが印象的だった。見開きのページに白い花が描かれセリフが一言。 『最後に白い花だけが、人々がいた証となりました』 大人になった今でもこのセリフの意味は分からない。 ただ描かれた花は実際に存在しているらしい。 それはとても珍しいもので、ある特定の地域にしか咲かないらしい。 昨日であった旅人が教えてくれた。 しかも、その特定の地域は私が住んでいる街も含まれているらしい。 私は花を探すことにした。」

          Re01.御伽噺の雪の花

          Re01.御伽噺の雪の花

          02,探求するサブマリン

          シリーズもの2曲目です。 水底に沈んでいくイメージで書きました。水底とか海底っていうテーマが大好き過ぎて、気が付くと水っぽい雰囲気の曲を書いている今日この頃。抑えられない知的好奇心と共に沈んでいく、そんなイメージの曲です。 以下この曲の物語。 「01-02 今日の会議でやっと私たちの方向性が決まった。私たちに与えられた課題はあまりに漠然としていてどのように調査と研究を進めればよいのか決めかねていたが、あの裁定機のお陰でもう悩むことはない。機械開発部と心理研究部が共同で開発したそれを最初に見たときは嫌な顔をしてしまったが、今は感謝している。今後、物事の最終決定は全てあの裁定機に委ねることにしよう。私たちはもうあの方の機嫌を損ねることを恐れることはない。どのような結果になろうとも、全てはあの裁定機が決めた事なのだから。」

          02,探求するサブマリン

          02,探求するサブマリン

          01,研究者とメランコリー

          シリーズもの1曲目です。 新しい作曲環境になり、テスト的に書いた曲です。エフェクトは抑え気味で乾いた音で纏めました。パートも少なめ、シンプルオブベストな曲です。 以下この曲の物語。 「00-01 最初に、この冊子は実験記録でない事を記す。 実験や研究は結果として出た値を優先して残すべきであり、根拠のない不確かな予測や憶測は最小限で有る必要があると私は考えている。しかし私たちの研究対象は精神的で抽象的なものだ。予測や憶測でしか語れない事も多く、値で語れないものも多い。研究を進める上での手がかりとして私自身の思いを此処に残そうと思う。 これは雑記であり、私の日記である。」

          01,研究者とメランコリー

          01,研究者とメランコリー

          10,狼頭は旅をする

          シリーズもの10曲目です。 シリーズとしてはこの曲で最後になりますが、エンディングっぽくなく次があるんじゃないかって期待したくなるような前向きな曲を目指しました。この曲を最後に作曲環境が変わるので、個人的には今の環境へのお別れ曲です。 以下この曲の物語。 「私の旅立ちは意外にもすぐに実現した。まるで旅立つことが事前に予定されていたかのように新たな服や必要な道具を渡され研究所から送り出された。旅立ちに立ち会ってくれた何人かの研究者からの別れの言葉を思い出す。 "図鑑を渡したから、野草や動物を食べる前に毒性や食べ方を確認するように" "言葉が通じそうな相手と出くわしても、ちゃんと遠くから様子を見て安全を確認するように" "移動しながら目印を見つけて、細目にメモを残すように" "もし寂しくなったら、いつでも戻ってくるように" …いつか本で読んだ旅立つ息子を送り出す親のような言葉の数々。今まで、それこそあの"レンカ"という研究者が部屋から出してくれるまで誰も声なんてかけてくれなかったのに。 でも、それらの言葉はこれから始まる未知への冒険の不安を和らげた。」

          10,狼頭は旅をする

          10,狼頭は旅をする

          09,風に流されるままに

          シリーズもの9曲目です。 爽やかなにシンプルに書いたつもりが、結構重量感のある曲になった気がします。力を抜いて流れる風に身をゆだねるイメージで書きました。 元々は新たに導入した新音源のテスト用にさらっと書いた曲だったのですが、思いのほか出来が良かったので今まで使っていた音源用に書き直しました。 以下この曲の物語。 「私は持ち出した本を読み進めた。あのよくわからない彼について知るため、言葉の言い回しに至るまでじっくり考えて読んだ。わからない所は研究者に聞いたら丁寧に教えてくれた。…教えてもらった内容を紙にまとめて束にしたら、それは持ってきた本と同じくらいの厚みになった。 本から得られる情報を全て得たと思う。その上で、私はまだ足りないと感じていた。それは知識だけじゃない。その時何を感じ、なぜそうしたのか…心の動きがまだ完全に理解できない。それを知るには私自身が経験を積むしかない。 許されるなら、私はこの研究所から外に出て彼が形作ったという世界を見て回りたいと思う。具体的な目的や目標はない。ただ見たものを見たままにあるがままに感じて、そこから心を学びたい。この施設から出たことのない私には、きっと必要なことだから。」

          09,風に流されるままに

          09,風に流されるままに

          08,羊頭狗肉な放浪者

          シリーズもの8曲目です。 コミカルで掴み処のない曲です。一見接しやすく親しみやすそうなのに、その実態はなんだかよくわからないなにか。でもなぜか傍にいると落ち着くような、そんなイメージで書きあげました。 以下この曲の物語。 「部屋に戻ると"それ"はまるで当然のように部屋の真ん中に立っていた。白い部屋の真ん中に佇む甘い赤色のローブを羽織った者。それが誰か、すぐにわかった。私の手の中にあるこの本を書いた張本人。私が捧げられる相手で、私が生まれた理由。名乗られた訳でもないが、その異様な存在感と私の中の何かがそうだと確信させた。 "自惚れが全ての原因だとしても、認めたくなんてない" "夢見がちな僕が得た答えがどんなものか君には想像できるかい" "もがこうにも足が絡まってうまく動けない" あまりに突然声を発した所為でそれが誰の声なのかわからなかったが、それは部屋の真ん中で佇む彼の声。その声に抑揚はなく、まるで物語を読んでいるかのようだった。 意味の分からない事を突然言われて、何を返せばよいのかわからない私はただ彼のほうを見つめる。彼はゆっくりと視線を動かし、部屋を見渡すと一言 "ここまでするなら、最初から僕が迷う必要はあったのか" と呟くと静かに消えてしまった。 突然現れ、意味の分からない事を言い、最終的には何もしないで姿を消した。 どうやら、私の生きる理由である彼を理解する道のりはとても長そうだ。」

          08,羊頭狗肉な放浪者

          08,羊頭狗肉な放浪者

          07,水びだしの本の部屋

          シリーズもの7曲目です。 不穏でちょっと神聖な雰囲気も醸し出すような始まり方をする曲です。灯りの少ないジメっとしたとても本の保管には適していると思えない書庫で本を読み漁っているイメージで書きました。こういう捻くれたイメージで曲を書くのが仕事のストレスを発散させる一番の方法…。 以下この曲の物語。 「新たな情報を求めて施設の中を彷徨っていると、鉄とガラスの扉ばかりの廊下の奥に一つだけ木製の扉を見つけた。細かく模様が彫りこまれたその扉は、まるで色の無い一枚の絵画のようだった。金色の繊細な細工の施されたノブに手を添えて扉を開けると奥から水の匂いと黴臭さが溢れる。 扉の先は暗くてよく見えない。恐る恐る部屋に足を入れるとぽちゃりと湿った音が木霊した。思わず足を引き靴裏を確認する。足裏は確かに濡れていた。屈んで部屋の床に手を入れると手首まで水に浸かった。先の見えない水びだしの部屋。不気味で純粋に危険を感じるが、好奇心に抗えず私は部屋に改めて足を踏み入れた。 壁に手を添え、恐る恐る足を進めると部屋の奥に灯りを見つけた。そこには丸テーブルと椅子が置かれ、照らし出すように電球が天井から吊るされている。テーブルの上には分厚い橙色の本が置かれていた。本の表紙には何も書かれておらず、一見すると何の本かわからない。椅子に腰かけ、本を開くと中にはぎっしりと手書きで文字が書き込まれていた。 それは日記だった。日付とともにタイトルが2ページ毎に書かれ、日々の思いが綴られている。それは少年の物語。夢見がちな少年が、宝物の杖と共に日々を過ごしていくそんな日記。日記は進むにつれ文章量が増え、感情表現が豊かになっていく。とても幸せな日々を過ごしていたことが手に取るようにわかった。本の中程、半年ほど進んだあたりから内容に変化が現れる。今まで書かれていた日付は無くなり、タイトルも簡素なものになった。ただ、内容はより感情的になり、文字も形が崩れて所々読めない。ある夜杖が世界を壊して、全てを瓶の中に閉じ込めた、何十ページにもわたって書かれた文章を要約すると、きっとそんな内容だ。 これが誰が書いた日記なのかは分かった。杖を手にして世界を閉じ込めた、もとい世界を作り変えた存在。これは、きっと神様の日記だ。あの研究者が言っていた内容を思い返すといくつも一致する記述があった。だとすると、この本は私が求めていた情報の塊そのもののはず。どうやら、神様は彼女のいう通りとても純粋な心の持ち主のようだ。 私は本を抱えると、水びだしの部屋を後にした。」

          07,水びだしの本の部屋

          07,水びだしの本の部屋