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爺さんの一日、一景、一笑 #6白菜

四分の一切れ90円。その隣には、二分の一切れ160円。
湯豆腐に白菜と思い買おうとしたところ、さて、どちらを買おうかと悩む。
四分の一さえも食べきれないので、90円でいいかと手を伸ばす。
『待てよ、どうせ一度に食べれないのなら、割安の方がいいだろう』
と今度は160円の方に手が出る。

「また、どうせ腐らすのに二分の一も買って、安物買いの銭失いって言うのよ」
と、機嫌の悪そうな奥様の顔が目の前に浮かぶ。

四分の一に手が出る。
『待て待て、ここに四分の一があるとは知らないだろう。腐らす前に食えばいいし、聞かれたら初めから二分の一しか無かったと言えばいい』
何故か、言い訳ばかり考える。
やはり、お得で割安な二分の一の白菜を掴もうとする。
と、一瞬早く、隣にいた叔母さんがその白菜をスッと掴んで持って行った。
それも最後の一個。

とても損をした気分で帰宅。
四分の一を台所に持って行く。
「何?これじゃあ少ないでしょう!自分だけで食べる気?」
二十円の差の決断を、さっさとしなかった自分がやけに情けなかった。


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