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職業欄

 定年退職し、晴れて念願の無職となった。とうとう待ちに待った卒業だ。ともかくこの日を待っていたが実に長かった。もう誰にも気をつかうことはない。
 先日、甥坊が我が家に来て、就職したので保証人になってくれないかと頼まれた。可愛い甥坊の頼み、二つ返事で承諾してやった。
 今だに保証人を求めるなんて、こういう会社もまだあるんだと思っていると、後日、甥坊が無職の者は、保証人にはなれないとすまなさそうに言ってきた。
『ん?無職は保証人の資格が無いだと?!』
仕事をしてないとダメという事が何故か釈然としない。少ないながらも二か月に一度の年金という定期収入もあるし、わずかばかりの蓄えもある。借金等の負債も無い。大企業とはいかないまでも、会社なら優良中小企業だろう。
別に保証人になりたいわけではないが、社会の一般人として何か足りませんよと言われたような気がした。
 気分が悪いまま、旅先に行ったホテルに泊まった。
するとチェックインの際、またもや職業欄があった。
「チッ」と舌打ちしながら、今、子供の一番なりたい職業「ユーチューバ」と書いてやった。
これなら文句なかろう!
 しかし、明日から何をどうすりゃあええねん。

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