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腸内細菌と私 第3章 微量元素と腸内細菌 


腸の吸収のしくみ


前項で土と作物の生命の連鎖を見てきました。では作物と人間との生命の連鎖あるいは受け継ぎはどのように展開されているのでしょうか。次にそれを見ていきましょう。
食べ物を食べるとそれは食道・胃を通り小腸の中に入ります。小腸では食べ物の成分のうち約9割が吸収され血液の中に入ります。植物の根毛にあたるものが人間の小腸にもあります。それは「絨毛」と呼ばれるもので、一つ一つがきわめて小さな指のようなカタチをしていて、小腸の内壁にひだのようにして無数に寄り集まっています。
食べ物は分解されて小さな分子となり、この絨毛の内側の細胞に入り込みます。そこから毛細血管に吸収されて肝臓に運ばれ、さらに細かいカタチにされた栄養分は体の細胞に送られます。小腸を通過した食べ物は大腸で最後の消化吸収が行われ排泄されます。
小腸の絨毛で吸収するには植物の根と同じように酵素を必要とします。この酵素は3000種以上が腸内でつくられており、腸内でも植物と同じように自分に必要なもの、不必要なものを選択吸収しています。
腸の消化・栄養摂取ではそこに棲息している微生物(腸内細菌)が重要な役割を果たします。約100種100兆個あるといわれるこの細菌のうち、人間にとって益となる細菌「善玉菌」は有害物質をつくらないでタンパク質・炭水化物・脂肪などをアミノ酸やブドウ糖・脂肪酸等、小さな分子になるまで分解してくれる酵素をつくり出し、ビタミンK、ビタミンB複合体など重要な栄養素を合成します。また、善玉菌のフローラ(細菌叢)が腸の働きを活性化し、腸の環境を整備してくれます。

酵素と微量元素


私たちがものを食べると、それを善玉菌がおなかの中で分解する過程で消化酵素がつくられます。この酵素が消化活動の主役なのです。
では、酵素と微量元素とはどんな関係にあるのでしょうか。
酵素は、分解・合成・切断の補助をしますが、これらはホルモンとも深い関係があるのです。ここで作用という言葉を使って説明します。
酵素とホルモンは力を合わせて、(酵素作用・ホルモン作用の働きで)各分子を合成し脂肪やタンパク質をつくります。この段階で、多種のミネラルは、触媒として、大いに活躍しています。
ミネラル・微量元素は、ほんの少しの量で、大きな力を発揮するのです。車でいうなら、エンジンオイルの役割を担っています。
人間は、食べ物を摂取したからといって、その食べ物がそのまま私たちの細胞になるわけではなく、脂肪酸・アミノ酸・グリコーゲンという細かい分子まで微生物の力を借りて分解しています。
これを切断と呼ぶのですが、ここまで小さく分解する過程でも、ミネラルの力が必要なのです。ここを上手く説明するには、化学式がたくさん並ぶので今は止めておきましょう。
これらの小さくなった分子を腸で吸収し、再合成して各細胞としたり、エネルギー等、いろいろな働きの糧にしているのです。合成の過程でもミネラル・微量元素が重大な名脇役を担っているのです。
ミネラル・微量元素は酵素の仲介役ともいえます。ミネラル・微量元素の多くは、体の中で酵素の働きを盛んにする活性基と呼ばれる物質として機能しています。酵素は、体の中のさまざまな反応を促進させる触媒(仲介役)の役割をするタンパク質で、人間にはおよそ3000種類もあるといわれています。その酵素のうちよく知られているものに、消化酵素があります。先ほど述べましたが、私たちは食べ物から栄養をとっていますが、食べ物はそのままの状態では吸収することができません。ある程度の大きさに分解してやる必要があります。
この分解する過程を消化といい、消化酵素が非常に大切な役割を果たしています。こういった消化酵素はミネラル・微量元素を含んでいなければまったく機能しません。例えばアミラーゼ・ペプシンにはカルシウム、リパーゼには亜鉛など、これらが欠乏すると消化がスムースに行われないのです。
人間は土で育つ作物から土の成分であるミネラルを得ているのですが、土壌が衰えれば当然、作物もひ弱です。それをとっている私たち現代人はミネラルが不足し、体の不調を訴えているのは最初に見たとおりです。そのためせっかくの酵素も生かしきれていないのが実情なのです。

内なる大地と腸内細菌
◎100種100兆個の腸内細菌


おなかは「大地」である。
人の生命活動の根本は、そう考えるととてもわかりやすいのではないでしょうか。
栄養の吸収と排泄という生命活動の根本を人は腸で行っています。おなかは人の生命を育み守る母なる大地なのです。
豊かな作物の実りは、たゆまぬよい土壌づくりによってもたらされるように、人の健康と幸せも、おなかという大地の活性化から始まります。
土に含まれている成分(ミネラル成分など)は動・植物の生命の源となり、それら動・植物を食べることで、その栄養分をもらい、私たち人間は生命を維持しています。
おなかでは動・植物から得た栄養分を自分の血肉とするのに腸内細菌の力を借りています。腸内細菌は約100種100兆個あるといわれていますが、重量にしてたかだか1キロです。しかしそれを一つ一つ横に並べたら地球を2周して余りが出ます。土中微生物の中の菌群が、植物にとってなくてはならない重要な存在であるように、腸の中では腸内細菌がビタミンをはじめ各種アミノ酸を合成し、栄養素を分解する重要な役目を果たしています。肝臓が楽に仕事ができるように、腎臓が楽に仕事ができるように、そういう縁の下の力持ちが仕事をしてくれているからこそはじめて、人は生き生きと生きられるのです。

微生物に生かされる


本来、人の体は元気に生活できるようにできています。本能的にそういうものを与えられているのです。植物がグングン上に伸びる。花を咲かせ、種をつけ、子孫を増やそうとする。これは植物の持っている本質です。それは目に見えない土の下の世界(土中微生物)に支えられています。土の上にだけ農薬をかけてうまくやってやろうと思っても、根っこが腐れていたらどうしようもありません。
そのような視点、つまりすべての生きものにとって一番基本的な微生物の原理を束ねている発想が今まであまりなかったと思います。
大きな川を笹舟が風に揺られながら上流から下流に流れてきているイメージを思い浮かべてみてください。笹舟を浮かべている水、それが微生物だというとらえ方なのです。微生物がほとんど枯渇してしまうと笹舟は海まで届くことができません。生涯を全うすることができないわけです。人間はこの小さな小さな生きものたちの働きのおかげで生を営むことができる。人間は自分自身で生きているつもりでいますが決してそうではありません。もし微生物というものがいなかったら、私たちは実際に生きていくことはできないということです。そのことに思いをはせるとき、私は深い敬けんの念に打たれます。

おなかの土がやせていないか
◎腸内環境汚染


人間はおなかに畑と同じ環境を持っている。つまり私たちの内なる大地であるおなかは豊かに肥えた自然の土壌と同じであるということです。しかし私たちはこの畑の土をなおざりにしていないでしょうか。ましてや生産者が土づくりにとり組むように、衰えたおなかの土壌をよみがえらせる努力をしているでしょうか。
化学肥料などを使って土が固くなりやせてくるとバクテリアや微生物が働かなくなってきます。そのようなときに有機肥料や堆肥を入れて、微生物がそこでしっかり働けるようにしてあげます。また酵素製剤を入れて土をふかふかにしてあげます。
私たちのおなかの中も防腐剤や食品添加物、塩素殺菌された水道水などで環境汚染されています。すなわちそれは腸という「土」が固くなってダメになっている状態だということです。腸内細菌は、食物せんいやミネラル・微量元素がそろった腸内環境でなければ十分に働くことができません。
土の中の微生物が仕事をしていないから元気な野菜が育たない。それと同じことが私たちのおなかの中で起こっています。だから、いくらいい薬を入れてもなかなか効きませんし、副作用も出てきます。土の中の微生物が仕事をしていないために作物が根腐れを起こしている状態と同じです。だからあの健康食品がいい、これがいい、と持ってきてもその効果には限界があります。
◎水道水の問題
ずいぶん前の体験ですが、縁日の金魚すくいをしてとってきた金魚を水道水の中に入れるとすぐに死んでしまったので、私はてっきり金魚すくいの金魚はもともとすぐ死ぬやつが入れてあるのだろうと思っていました。でも子どもはそんなことは考えていません。何とか工夫してそのときの金魚を立派に育てています。「水道の水に入れたらすぐ死ぬのは当たり前」といわれたら、水道水を一晩おくとかの工夫をして生かすことに成功することができるのです。こういうことが当たり前だと思ってしまった時点でもう感覚が麻痺しているのではないでしょうか。金魚を水道水という毒水につけているのと同じように私たち人間も腸の中に毒水を入れています。これでは私たちの腸の細菌が死んでしまうのは当然です。
それに加えてビタミンやミネラルの含有量が少ない弱々しい野菜や、果物、体に良くない成分が含まれた食材や健康的にみて誤った料理法をしていれば、腸の状態はますます劣悪になってしまいます。
◎土が再生すれば生きるものすべてが再生する
せんい質が不足すると便が排泄されるまでの時間が長くなり、腸内の腐敗菌が繁殖し始めます。それはさまざまな腸のトラブルや腸以外の慢性的な疾患の原因となります。腸は痛みを訴えません。その重大な疾患に気づいたときはもうすでに数年分のつけを支払わされるはめになるのです。
腸の健康を回復するための手段・方法はいろいろありますし、このような状態にならないための予防法もあります。
私たちは「土が再生すれば生きるものすべてが再生する」というモットーのとおり、内なる大地すなわち「腸」の根本的な「土壌改良」によって人間の生命そのものを生き生きと再生させることがいかに大事かをわかっていただきたいのです。

https://oyakudachi.kenshogroup.jp/intestinal-top/   お役立ち文庫

https://element-body.com/  下痢の改善相談室

次回は 第4章 元気を支える腸内善玉菌  お楽しみください

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