あんずの花は咲いてるかい?

春は

お別れの季節だ

と言っても
慣れないや、やっぱり。

あの日
食堂に集まって お別れの会をした
「おめでとうございます」
という代わりに 握手して 
こくんと頷いて 優しい眼が
微笑んでいた
もう
あの席には いないんだなと
ふっとなんとも言えぬ思いを抱いた
職場の別れ
面白かったよ
仕事してて 面白かった
さみしさには慣れなかった

それから 数多の別れの繰り返し
作り笑いだけはうまくできるようになったけど
過ごした日のきらめきの欠片を
いっとき 集めては 無理に記憶の向こうへ
追いやって なんでもないよな顔をして
遣り過ごした うんと昔のこと

ああ
きみとの別れも突然だった

ねえ
信濃にまた杏が咲くよ
きみの好きだった花
桃色の林のね。

「やっぱり 関西に帰るの?」
やっと 口からでたかすれ声に我ながら驚いた
「うん」と言いながら 遠くを見てた
きみの横顔 忘れない

暇さえあれば山に行って
学生時代
寝袋で松本の駅に泊ったことを
口癖のように話して聞かせた
槍のてっぺんではらばいになって
下を見下ろしてたきみの笑顔の
写真がひとつ

雪山に登りたいんだ
槍が裸身にまとった
ベールのような雪を見たいんだと
吐息交じりに つぶやいて

そして 登ったんだね
下りてきて それは嬉しそうだったな
それもこれも 遠い日のこと

「杏は咲いてるかい?」
今でも
そんな電話をくれそうな気がするんだ
中央ハイウェイを走ってくる音がするよ
ロックをガンガンかけて
鼻歌交じりに飛んできそうな気がする
そこにいるような気がする

「杏は咲いてるかい?」

見においでよ
それほどいうなら

一斉に信濃の国を 淡いピンクに
染め上げるのを 見においでよ

行くよ
飛んでくよ
並んでみよう
花の下で 寝転がってさ
きっと 青い空と 薄紅色がきれいだよな

待っててね
必ず行くよ

信濃は まだ名残りの雪がちらついてる



さちのみっけ植物図鑑

あんず

花の特徴葉の展開に先立って花を咲かせる。 花の色は淡い紅色で、花びらは5枚である。 花びらの形は丸い。 萼は紅紫色で反り返る。

葉の特徴葉は幅の広い楕円形で、互い違いに生える(互生)。 葉の先は短く尖り、縁には不揃いな細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。

実の特徴結実期は6月ころである。 実は直径3センチくらいの球形の核果(水分を多く含み中に種が1つある)で、黄橙色に熟する。 果実はジャムや乾果物として食用にされる。

この花についてウメと似ているが、樹形が直立していることや、樹皮に縦の筋が入ること、また萼片が反り返ることなどで区別できる。

その他日本には奈良時代に伝えられたと言われ、万葉集にも唐桃の名で登場する。 耐寒性があり、長野県や青森県で植栽されている。 英名のアプリコット(Apricot)としても知られている。 種子には青酸配糖体や脂肪油、ステロイドなどが含まれており、杏仁(きょうにん)と呼ばれる咳止めの生薬となる。 漢字では「杏子」とも書く。 俳句では、「杏」が夏の季語、「杏の花」が春の季語である。 属名の Prunus は「plum=スモモ」を意味する。 種小名の armeniaca は「杏色の」という意味である。

生育地栽培植物のタイプ樹木大きさ・高さ5~10メートル分布原産地は中国の北部名前の読みあんず分類バラ科 サクラ属学名Prunus armeniaca

出典



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