こんばんは🌛
     
このページを開いてくださり、
                              ありがとうございます🌱

最近は、じめじめとした日が続いていますね。

皆さんは雨の日にどんな気持ちになりますか？

私は、とても単純な性格をしています。
窓を開けて、‘空が暗い’ と知った途端、
一日がどんよりとした気分になってしまう。。

こんなやるせない雨の日に、
皆さんにお届けしたい曲は、『雨の歌』です。

『雨の歌』として親しまれるこの曲は、
ドイツ生まれの作曲家、
ヨハネス・ブラームスによって作られた、
‘ヴァイオリン ソナタ 第1番 作品78 ’ です。

ブラームスと言えば、

「威厳たっぷり」
「粘り強い」
「信念が揺るがない」

私はこのような強烈な印象を持ちます。

しかし、ある時、オーケストラの授業で指揮の先生はおっしゃいました。

「ブラームスは誰よりも愛情に溢れた、
                                       心優しい人なのだよ」

その

「愛情」
「心優しさ」
「温かさ」

が表れている曲が、
正にこの『雨の歌』だと感じました。

人生の酸いも甘いもを知っている彼が、
ここで作り出したメロディーは、私たちに、
ぱらぱらと降る雨や、したたる雫を連想させます。

皆さん、この先は ‘ブラームスの雨の歌’
を流しつつご覧いただけたらうれしいです。

ここに、
私の心に届いた『雨の歌』を記録します。

～♪音楽スタート♪


待ちに待った今日は、休日。
１週間を乗り切った私の、至福のひととき。

日々騒音に呑まれる社会で生きいるからこそ、
こんな日の静寂は私を潤わせてくれる、
ちょっと特別な空間。

部屋にある年季の入った壁がけの時計が、
午後4時を指した時、私は窓を開けた。

その瞬間、ポタポタと冷たい雨の雫が、
私の手の甲に落ちてきた。

部屋の中が暑かった訳ではないのに、
なんだかその雫がとっても気持ちよくて、
身体なのか心なのか、潤いを求めるかのように私は外へ飛び出した。

部屋着にパーカーを羽織っただけの格好に、
傘だけを手に持って。

こんな中途半端な時間に、散歩に出向くこともしない私が、何故か分からないけれど、
今日の雨になにか惹かれたのだ。

私の小さな一軒家は、道なりに小坂が続き、
その先に川がある。緑に囲まれた田舎町。

雨の日はどうしてこんなに自然の香りが濃いのだろう。

その香りが新鮮で、嬉しくて、
勝手に足取りは軽くなった。

さぁ、少し散歩に出かけよう。

地面にはね返る水滴が色んな景色を映して、
キラキラと七色に染まっている。

なんて美しいのだろうか。


途端に、私の頬にも水滴が滴って、
自分が流した涙だと気がつく。

私は記憶の向こうへと想いを馳せた。


･･･

この坂道を今は亡き母と手を繋いで歩く、
幼稚園の黄色い園服を着た私の姿は、幼稚園で教わったばかりの ‘雨の日の歌’ を口ずさむ。

今でも完ぺきに覚えているその歌に、
私は、その当時は気づくことのなかった ‘感動’ に気がついた。

思えば、母は自分のもうひとつの肩を犠牲に、私と手を繋いでいてくれた。

「夜ご飯は何を食べたい？」

と聞く母の問に、

「なんでもいいよ」

と答え、母を困らせる私。

母の近くにいると感じるあの温かさと、
ほのかな母の香りが雨の日は薄く感じるから、少し遠くに居るみたいで、ちょっと寂しかったみたいだ。


･･･

記憶の中の母の手が段々と冷たくなって、
気がついたら一人、家を飛び出したばかりの私がいた。

幼い頃の温かすぎる記憶は、時に、私のどこかを冷静に、冷たくさせる瞬間がある。

それでもやっぱりポタポタと落ちる雫は美しくて、どこか可愛げがあるように見えた。

小さな雫が一滴一滴、楽しそうに、儚げに、
地面に落ちて、水たまりが出来上がっていく。

その過程が、
例えると小さなアリ達がよいしょこらしょと一歩一歩、せっせと食べ物を運び、行進をする。そんな健気にも立派なことを成し遂げる姿を連想させた。

この世界では、大きなことを成し遂げるまでにやっぱり時間ががかる。
雨の雫やアリ達のように、小さなことを毎日毎日健気に謙虚に重ねていかなくてはならない。

それはある時、止まりたくなるし、
変わらない景色に、飽きてくる。

違う方法があるのではないかと今までの道のりを疑って、諦めようともする。

それでも諦めなかった時、信じきった時に、

きっと何かが見えてくるのだろう。

ある本に書いてあった。
「人生が分からなくなったら自然を見てみなさい。そこに全ての答えがある。」

あぁ、日々の生活で忘れかけてた大切なことを教えてもらうなんて。

なんだかとってもロマンチックなことだな。



少し先に、川が見える。
いつもの澄み渡った穏やかな流れとは違って、
今日は幾分か黒くて、荒い流れだ。

お鍋が沸騰して、フツフツと燃え上がるように、川もフツフツと何かにイラついているかのように見えた。

どす黒い水の色は、人の感情のよう。

恨みだとか妬みだとか、それが濃くなって憎しみに変わり、一度抱いたその感情は、そんじょそこらの処方箋では元に戻らない。

その怒りは行き先を見失い、心の内に留まることなく溢れ出て、フツフツと燃え上がるお鍋の中の水みたいに日常に姿を現す。

なんてことないことに、引っかかってしまい、
相手が正しいと分かっていても受けいられず、きっとそんな日の帰り道は罪悪感で沢山だ。

そんな時、誰とも目を合わせられず、下を向いて歩く私はきっと足元に咲く雑草と目が合うだろう。

誰から手入れを受けるわけでもなく、厚いお世話をしてもらっている訳でもない。

それなのに、花壇の花のように美しく、
花壇の花以上に強く、たくましく育っている。

どんな処方箋も効かなかった私のどす黒く燃えた心の中に、ようやくほんの少し、温かみが戻ってきたのだ。


私の視界に映る全ての景色が、再び、
キラキラと輝き出す。

幼いあの日、‘雨の日のうた’ を口ずさむ私が感じていた、あの母の優しさやしなやかな強さが今の私に、そっと寄り添って、

「大丈夫。」

とほほ笑みかけるように、
少しずつ少しずつ、向こうの空の方から太陽が顔を覗かせている。

さぁ、もう少しで美しい虹が姿を現す。

七色に染まった淡いその虹は、奇跡の一瞬かのように、タイムリミットを持って、
私たちの前に姿を現す。

その姿を見られる人は、雨の日の休日の夕方に傘だけを持って外に駆け出した、
そんな「変わり者」だけだ。

変わり者であることを恐れずに、
誰よりも謙虚に、日々を積み重ねた人にだけ、訪れる幸福がきっと、あるはず。

そんなことを確かに感じて、希望を持った、
午後4時半。

私の傘を閉じると共に、この曲を締めよう。

                                                                  ～♪