幸せを捕まえる

網を持った男が家の前にいた。
朝のニュースでは熱中症に気をつけるように言っていた気がする。

私は携帯している、レモン水を飲み、その男が何をしているのかをじっくりと見つめていた。

男は、精一杯背を伸ばしたり、素早く動いたりしながら、空中に網をかけていた。蝶々でも探しているのだろうか。

私は不審な気持ちになり、男に訪ねてみた。

「何をされているんですか?」

「幸せを捕まえているんだ。すぐ

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空想の世界をカタチにする(次男の登校刺激)

次男が学校に行きたがらない時、先輩ママさんから「学校に行きたくなる仕掛けをしてみたら?」といろんな案をもらった。

例えば、、、
・登校するとシールを貼ってもらえる。それを集めたくて登校するかも。
・お気に入りの人形を先生に隠してもらってそれを見つけに行く。ゲーム感覚が楽しくて登校するかも。
などなど。

ただ、残念ながら、どれも次男には合わない。
収集癖はないので「なんでシールを集めるの?」と

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ジャイアンをやっつけろ!

文・次男くん
絵・私

制作秘話

この話は、1日1ページ学校に持って行って、先生が製本してくれました。
詳細はこちら~

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炭酸水

うだる暑さが都内を駆け巡っていた。密度の異なる大気のせいで陽炎になり、窓から見える都会の街並みが歪んで見えた。今朝のお天気お兄さんが、昼頃には猛暑日を記録するだろうと言っていたのを思い出した。俺は、昨日の夜に壊れたクーラーを恨めしそうに睨む。リビングにいつ買ったのか覚えていない扇風機を引っ張り出してきた。年代物の扇風機は狂ったように首を左右に振り続けている。首振りのところが壊れているのだ。俺は、自

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カップの向こうに

落ち着きがないことに定評がある私でも、本と珈琲、それから座り心地の良いソファーがあれば、たぶん同じ場所に何時間でもいられる。

幼い頃からとにかく本が好きだった。

学校から帰ったら図書館に行って17時のチャイムがなるまで本を読みあさり、一度に借りられる上限まで本を自転車の前カゴに詰め込んでは家路を急いだ。

どんなに分厚い本を何冊も借りてきても、3日もすればすべて読み終わってしまう。学校の図書室

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「ゴールドラッシュ」続き16

「はい。私も初めてバーで見たときから気になってたけど、希子と結婚しちゃったから。」
心の底から溢れ出た喜びが梢の全身を満たし外に放出していった。
「耀にも会わせたいから、今度一緒に食事でもしようよ。」
「うん、そうだね。前に希子と伊勢原でご飯食べた時、耀君とも会ったことあるんだ。」
「へーそうなんだ。知らなかった。」
「映画、希子と二人で観に行ったよ。女医の役かっこよかったじゃん、ハマってたよ。」

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良いことあるから吸うんじゃない?

ふー…っと白い息。
とはいえ寒い冬ではなく。ただの煙。
日々積もりゆくなんとも言えないだるさを煙とともに吐き出すと、なんとなーく気が軽くなるような気がする。『ため息つくと幸せが逃げるよ』なんていうけれど、深呼吸のゆっくり吐く部分、あれはきっとため息と同じ。そして煙を吐くのもまた。

「タバコふかして良いことあんの?」
隣に座る友人が、汗をかいたアイスコーヒーをカランコロン鳴らしながら聞いてきた。

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「ゴールドラッシュ」続き13

梢は、ホステスの仕事も完全に辞めた。約七年の在籍だった。
同期だった希子もお店を辞めていたので、お店が終わった後支配人と数人の女の子達が、梢のためにカラオケ店でお別れ会を開いてくれた。
今までがむしゃらに突っ走ってきた梢にとって、帰り道に夜空をゆっくり見上げることは初めてだった。
都会の空は星がよく見えない分、地上では遅い時間まで煌びやかな灯がつき華やかさを演出しているのかもしれない。そして夜空の

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「ゴールドラッシュ」続き10

(やっぱり、モデルは気分がのらない。)梢は家に帰ると浅はかな自分を反省した。のらないということは最初からうまくいかないのだ。
(自分が譲れないプライドは何なのだろうか?)掴めそうで掴めない梢はもがいていた。
気持ちを入れ替えようと、梢は簡単に出来るしょうが焼きが食べたくなりスーパーへ買い出しに行った。
しょうが焼きにそえるキャベツが欲しくて、梢はキャベツを手に取った。そのキャベツは緑の葉が瑞々し

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