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日本の楽器屋体験記


私とエレキギター

私リンジェ、実は下手ながら一応エレキギターとベースを弾く。弾けるとは言わない。弾き方はある程度知っている、といったレベルだろうか。

上の記事でも書いた通りなのだが我が家は音楽一家で、父は私が子供の頃からアコースティックギターをそばで弾いてくれていた。その父の兄弟は有名ミュージシャンだった。彼はギターブランドも持っていて、自身がプロデュースするアーティストさんたちにも使ってもらっていた。そのアーティストさんたちのうちに私が大好きなバンドがいて、そこのギタリストさんと同じモデルのストラトキャスターを作ってもらった。それが私が初めて手にしたエレキギター。当時14歳だった。

ギタリスト兄弟はよく楽器の話をしていた。既存のメーカーのモデルの問題点や良いパーツの選び方、そして調整の仕方。それを聞いていた私は「なんかうまいこと組み立てれば自分でも作れそうだな」と思い、高校の卒業プロジェクトは【自分でギターを1本作る】ことにした。
叔父のメーカー御用達のアメリカの会社に部品を発注し、父に半田ごての使い方だけ教わり、イギリスから本を取り寄せ、あとは配線の仕方をネットで調べて自分で組み上げた。
結論から言うと素晴らしい出来栄えだった。叔父は旅行で私たち一家を訪れた際に試奏して「これ、めちゃくちゃいいじゃん」と言った。
後から聞いた話だが、叔父は父に「リンジェをギター工房によこしてくれないか。初めてでほぼ手伝いなしであんな楽器を作るなんて普通じゃない。」とスカウトメールを送っていたらしい。

ベースは15歳で始めた。日本人学校の吹奏楽部に所属していたのだが「メロディラインも忙しくないし、弦も少ないしできそう」と軽い気持ちで「やります」と宣言してから父とベースを買いに行った。地元近くのどマイナーなギター工房の中古ベースだったが、試奏するととてもよかったのでそれにした。

弦の買い替え兼聖地巡礼という謎コース

と言うわけで楽器3本を所有しているわけだが、弦をギターは一度帰国時に張り替えて最近また張り替えたのだが、ベースは如何せん弾いてなさすぎて放置だった。それを思い出した頃、私の推しグルのチャンネルがこんな動画を出した。

ほう。これは聖地巡礼を兼ねて行ってみてもいいかもしれない。彼の買ったベースもどんな感じか試してみよう。他にも気になるギターがあったら弾いてみよう。そして弦を買おう。ついでに記念としてステッカーももらってこよう。
いざ渋谷へ。

初めての楽器屋in Japan

イケシブの3階にあるGrandey Bass Tokyoに着くと、まず推しの試奏したベースを探した。店員さんに「何かお探しですか?」と声をかけられたので「OWVの動画を見て来たんですけど…彼の弾いてたモデルってこれですかね」と少し奥まったところに展示されていた真っ黒なフェンダーを指差した。「ああ、そうですね。出しましょうか?」と店員さんが言ってくれたので早速試してみることにした。店員さんがセッティングをしてくれた。

にしても驚いたのは楽器屋の様子が私の通っていたドルトムント(だったかな?)の楽器屋と全く違うこと。
店員さんは「何かお探しですか?」「2本目でお考えですか?」「僕はエリクサー(弦のメーカー)使ってるんですけど、こっち(別メーカー)だとラウンド(弦の作り)に近くなりますかね」と色々と気にかけながらアドバイスをくれる。
「試奏したい」といえばチューニングしてくれて、調整が必要な楽器はメンテをした上で貸してくれる。至れり尽くせりだ。
向こうではとにかく放置だ。「これ弾いてみてもいいですか?」と聞くと初めて「もちろん。向こうにアンプあるよ」と教えられるくらいだ。
そして何より設備がいい。アンプも種類が選べてエフェクター付きのものも置いてあるし、チューナーまで置いてある。衝撃的なのが備え付けのよりどりみどりのピックたち。置いてないだろうと思って自前のを持って来てしまったではないか。しかしこれなら好みのピックで弾けるし、初心者ならどんなピックが使いごことがいいか試すこともできて合理的だ。

推し活開始

というわけでFenderのFSR Traditional 60s Jazz Bass(All Black)(Ikebe Original Model)を試奏させてもらった。(多分)ロングスケールで、ネックまでブラックに塗装されていて、確かになかなかかっこいい。
弾いた感想としてはいたってスタンダードなジャズベースで、私はネックがサテン仕上げのものしか弾いたことがなかったので、カラー塗装はペタペタして少し不思議な感じだった。本田くんは手がサラサラなのだろうか。でもちょっと推しのベースを借りたような気持ちになれてなかなか面白い体験だった。

動画ではショートスケールのベースの紹介もあったので店員さんにオススメを聞いてそちらも試奏してみた。
塗装が少し透けていておしゃれ。私の所有しているギターは2本ともショートスケールなのだが、やはり弾きやすい。手の小さい女性でも弾きやすく、弦を押さえるのも、チョーキングにも力があまりいらないのでおすすめ。音は低音がちょっと軽めだがなかなか素敵な楽器だ。2本限定とのことなので興味のある方はイケシブさんへダッシュ。
ちなみにまさに自分が弾いたベースがPsychederythmさんのXで紹介されていたのでリンクを貼っておく。

全身写真が撮れるコーナーもしっかり体験して来た。この写真ブースなかなか面白くて、フレームやお店のロゴを選ぶことができる。せっかくだから推しと同じロゴにしてみよう。

オールブラックフェンダーと一緒に。なかなかいい感じ。

あとは弦の購入にあたり店員さんに相談に乗ってもらい、ライトゲージでコーティングありのエリクサーを選んだ。「ステッカーまだありますか?」と聞くと「ありますよ」とのこと。
支払いを終え、とりあえず推し活終了。

かと思われた。

ギターフロアでの遭遇

イケシブは1、2階にギターが置いてある。まず2階のギターフロアを見てみることにした。
メーカーごとにコーナーが分かれていて、まずはGibsonコーナーのフライイングVを丁寧に観察。
私が自作したギターも実はフライイングVなのだが、設計に大失敗をして、ピンがロック式じゃないせいでストラップはすっぽ抜けるし、24フレットあるのにボルトオンネックで高音がめちゃくちゃ弾きにくいし、出力ジャックをなぜかVシェイプ内側の下になる部分に設置したギターを作ってしまったのだ。
ご存知の方はお察しかもしれないがフライイングVはVシェイプの内側に足を挟んで弾くため、内側にジャックがあると足に刺さって引けない(L時のシールドでなんとか回避はできる)。超絶大失態である。
そこでストラップをつけて弾こうとすると今度はネックがボルトオンネックになっていて、本来ストラップピンがあるはずのところに金属のプレートがついている。ネックのすぐ横にストラップピンをつけたのだが当然バランスのせいでストラップが綺麗に抜けてしまう。高校生にして下調べの大切さを学んだ。

続いてFender。叔父がライブでテレキャスターを引いてるのを見て以来「どんなもんだろう?」と思ってずっと弾いてみたかったのだ。
せっかくなので少しお高めのFender USAを試奏。するとどうだろう。どうもしっくり来ない。本体が鳴っている感じがせず手にレスポンスがない。どうしたUSA。父も「ひどい音だね」と酷評。
店員さんに「あまり本体が鳴らないですね?」と話すと「そうですね。モダンギターだとどうしてもピックアップの特性の方が強く出てしまうかなと思います。」と教えてくれた。一本しか引いてないのに言うのもなんだがFender USAにはがっかりだ。本当にこれでいいのか。半値以下の10万円でも買わないぞ。

他にもIbanezなども並んでいて「やっぱり変形ギターかっこいいな」とフロア内を練り歩いているとまさかのコーナーを発見してしまった。東海楽器のコーナーだ。
東海楽器といえばTALBOというアルミ製のギターが有名で奏者では元P-MODELの平沢進さんやGLAYのHISASHIさんで知られている。私はGLAYの大ファンでHISASHIさんは憧れのギタリストの一人である。そんな彼のサイン入ポスターなどが展示された東海楽器コーナーは私の心を掴んで話さなかった。

東海楽器コーナー。TALBOとEVOが並んでいて圧巻だ。

「これがあのTALBOか」
アルミ色に輝く一本のネックを掴みパラパラ高音フレットを押さえていると「弾いてみますか?」と店員さんが声をかけてくれた。「お願いします。」そう言うと「今お使いのギターは何ですか?ストラトならこれもストラトスケールなので違和感なく弾いていただけると思います。ボディがアルミの分レスポンスは早いと思いますよ。HISASHIさんや平沢さんが使っているのはもっと細かくカスタマイズしたモデルですね。」とセッティングしながら解説してくれた。
弾いてみると確かにレスポンスが早い。ボディもしっかり鳴っている。もっとキンキンした音がするのかと思ったがそうでもない。ストラトスケールだからなのか、弾きやすく違和感が少ない。弾いた感じ、正直「これが運命の一本だ!」とはならなかったが憧れのギタリストと同じメーカーのものを触れて感慨深かった。

念願のTALBOとここでも記念撮影。

しばらくして1階へ戻った。そこにはFERNANDESのZOシリーズなど少し変わったギターがディスプレイされていた。

円形のラックの中にギターがびっしり飾られている。

その中で私の目を引いたのが中央にあるESP社のedwards。(OWVの動画にも冒頭で画面中央に写り込んでいるのが見える。)ESPのギターは叔父に言わせると出来が悪いことも稀にあるそうなのだが、元バンギャとしてはESPの変形ギターには憧れがあった。
店員さんに試奏したい旨を伝えると、調整が必要なので時間が欲しいと言われた。なんて丁寧なんだろう。

アクリル製でずっしり重いがかっこいい。

ESP社で採用されているようなロックナットは得意ではないので個人的な選択肢には入ってこないが(ロック式ペグの方がよっぽどおすすめ)、如何せん見た目がかっこいい。これでイカツいギターソロなんか弾けたら超かっこいいだろうなー!とKe$haのDie Youngを弾きながら考えていた。

気がついたら滞在時間は二時間を超えていた。楽しい時間はあっという間だ。

接客態度は財産

にしても日本の接客態度はやはり素晴らしい。

最近は「そこまでしなくても」と言う風潮があるようだが、大きな財産だと思う。大切にしてほしい。と言うのも失われた技術を取り戻すのは難しいからだ。
たまに思うのだが日本の人は傾聴力が高い。人のニーズをよく聞いてくれる。言ってることが意味不明でも、こちらの話を一生懸命理解しようとしてくれて、「聞くに値しない」と突き放したりしない。

もちろんサービス業なのでお給料は丁寧な接客の分弾んであげてほしい。良い接客ができる人にはぜひそれを賃金として還元してあげてほしい。
接客の大変さが叫ばれ、「親切さ不要論」が出てくるのも賃金が上がらないからなのではないだろうか。

接客大国、日本に幸あれ。

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