実数の連続性公理

とある数学の動画を見ていてふと思った。
「上に有界な非減少数列は極限値を持つ」この主張を「あ」とする。
これは直感的には当たり前だ。
でもそれを示すには実は実数の連続性が関わっている!
(本によってはこれを公理とみなすものもある。)

でも実数は連続性を持つことは広く知られている事実だと思います。
そうでないと「数直線」で表現することが出来ないですしね。

ところで、その連続性はどうやって示すのでしょうか。

デデキント切断

私はこれが一番直感的であると感じている。

定義
実数の集合の部分集合A、Bの組(A,B)が次の2条件を満たすとき、
デデキント切断という。
1.A,Bはいずれも空でなく、$${{A}\cup{B}=\mathbb{R}}$$
2.$${{x}\in{A},{y}\in{B}}$$ならばx<y,特にA,Bは共通点を持たない。

まあつまり「数直線をもってきてはさみで切ることを考える」ということを数学的に言っているだけだ。
そこで「隙間がない」状態をどのように表現しようかなーとなったときに次のようなことを考える。

(A,B)がデデキント切断ならば、集合Aが最大値を持つかまたは集合Bが最小値を持つ。

これは非常によく「隙間がない」状態を表せている。
そしてAの最大値とBの最小値が同時に存在することはないので、
切断が必ず一つの実数を定めている。
この主張を「い」とする。

最後にもう一つ
「空でない実数の集合Aが上に有界ならばその上限supAが存在する」
これを「う」とする。

すると以下のことが分かる。

実は…

「あ」と「い」と「う」は同値である。

つまり一つを公理として定めてあげればすべて成立してくれる。
そしてすべて同値なのだからどれを公理としてもよい。

そしてこの公理から様々な重要な定理を得られるがそこは省略。

これらの公理は数3で何気なく使っているはずである。
というか数直線の考えそのものが連続性だし。

あとがき的な

実数の連続性なんて当たり前すぎて気にしてなかったが、案外調べてみると面白かった。
何気なく使っていたCauchy列の話もここから出発しているし、背景にこの公理たちがいてくれるから議論が進むんだ!ということを覚えておきたい。

注意点?として
「あ」では極限値を持つことまでしか分からない。
例えば「あ」の状況で極限値が2だったとする。
そこで有界の範囲を4や100ととっても「あ」の仮定は正しい。
イメージはもとの数列はすべて2以下になっているとして、
それって4や100より小さいですよね?
と言っているようなもの。
確かにそれは正しいのだが、
でもそれは極限値と直接的な関係があるかは分からない。

その動画でも「有界の範囲を変えれば極限値が二つになる!」といったコメントがたくさんあった。

でもそれは連続性公理を理解していない。
そしてそれ以前に重要な定理を見落としている。

定理
収束する数列の極限値はただ一つである。

これは「収束する」ことの定義から当たり前のように出てくるはずである。
一応スケッチだけ示してみる。

一つであることを示すときは「二つ存在すると仮定して、上手くしていけば実は同じでした!」ということを言えばよい。

proof
$${a_n→α}$$かつ$${a_n→β}$$と仮定する。
ε>0を任意にとる。
すると仮定から自然数N、N’が存在して

n≧Nのとき$${|a_n-α|<\dfrac{ε}{2}}$$
かつ
n≧N’のとき$${|a_n-β|<\dfrac{ε}{2}}$$
となる。
ここでN’’=max{N,N’}とすれば、n≧N’’となるとき

$${|α-β|≦|α-a_n|+|a_n-β|<ε}$$よって$${α=β}$$

ただし最後は三角不等式を用いた。

もちろん与えられたものに対して疑問を持つことは必要だと思う。
そして動画投稿者さんもしっかりとその点にも言及するべきだったと思う。
でもその動画ではそこが本質ではなかったと思うし、それ以前に当たり前だと思って言わなかったのかもしれない。

なんで?と聞く前にこんなに当たり前なことは調べたら出てくるのだから調べたらいいのに、、とも思った。

参考文献

上記 第7章「実数の連続性再論」

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