三乗根ω入りの問題

インスタを見ていた時に出てきて懐かしいなと思いつつ、今ならもっと簡単に解けるのでは?と思ったのでやってみる。

復習

まず三乗根について復習すると、方程式$${x^3=1}$$の$${1}$$でない解の一つだった。
もちろんこの方程式は実の範囲では解は1しかない。だが次の定理に注意するとほかに解を持つことを確認できる。

代数学の基本定理

複素係数のn次方程式の解は(重解を許して)n個存在する。

まあつまるところ「複素数を許せば」n次方程式はn個解があるよ
ということで、証明は実は複素関数論を使ってできる。
明らかに代数の主張なのに解析でできてしまうのは面白いと思う。

さらに実係数の方程式が虚数解を持てばその複素共役も解になることも簡単にわかる。

よってωの置き方は複素共役分しか違わない。基本的にはどちらで置いても同じになる問題ばかりだが、必ず同じになるわけではないことに注意する。

問題

以後ωは上記のものとする。

次の値を求めよ。
1 $${ω^3}$$
2 $${ω^2+ω+1}$$
3 $${ω+\dfrac{1}{ω}}$$

典型的な問題ですらすら解けてしまいそうだがそれはいったん置いておいて解いていく。

まず1は流石に1とすぐに解ける。
これはωの定義そのものだから。
数式として確認してみると、
$${ω=e^{i\frac{2\pi}{3}}}$$または$${ω=e^{i\frac{4\pi}{3}}}$$だから三乗すると確かに1になる。

次に2だが、これは典型的には因数分解をして解かれると思う。
$${0=ω^3-1=(ω-1)(ω^2+ω+1)}$$として$${ω≠1}$$より、0とわかる。
といった感じだろうか。

でもこれはそれぞれをベクトルと思うと明らかに釣り合っているから0とすぐにわかる。
そもそも複素数はほぼベクトルと同じだからこちらの考え方も紹介すればいいのにと思うが、紹介されていないのは、複素平面をやっていないと見えにくいところがあるのかなと思った。

最後に3
これは第二項の分母分子に$${ω^3}$$をかけると$${ω+ω^2}$$となって2と合わせて考えれば-1となる。

だが複素数において$${\dfrac{1}{z}}$$は反転を表すということと、先ほどの複素共役の話から$${ω+ω^2}$$は自然に出てくるのではないかと思う。
(ただしこれは絶対値が1であることに注意する。)

以上3つの問題を解いてみた。
どれも初歩的な問題だったが、この手の問題を解くほぼすべてが詰まっていたのではないかと思う。
結局与えられた式を上手く変形して先ほどの形を作るゲームだと思う。
その意味では漸化式に似ているが、これは1さえ押さえておけばそこからすべて導けるという点は異なる。

あとがき的な

結局受験生の頃と比べて劇的に簡単に解けているかと言われたらそんなことはなさそうだが、反転など見やすくなって、思いつく必要性が減ったことは大きいと思う。

受験でその場で考えることはとてつもなく不利を強いられていると思う。
もちろん京都大学などの入試はみんながその場で考えているだろうからそんな不利になることはないと思う。
だが、多くの大学では典型問題が多く出題されていて、ここで悩んでいると、本当に時間をかける問題に挑戦できなくなってしまう。
ここで解法暗記のようなものが必要になってくるわけだが、当然覚える量は少ない方がいい、そしていろいろな知識と結びついている方がよい。
その意味では、今回の問題はそういうことを教えてくれる問題だったと言える。

なんか記号が出てきていやだなぁではなく、こんだけなんか!となって頂けたら幸いです。


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