等差×等比型を考える

数列を習っていると必ず出てくるであろう問題だ。
様々なサイトを調べていると「公比をかけてずらして引く」「微分する」といった解法が出てくる。
もちろんそれが悪いわけではないが次のようにも考えられないだろうか。

部分分数分解の復習

まずは典型的な部分分数分解だけを考える。

$${\sum\limits_{k=1}^{n} \dfrac{1}{k(k+1)}}$$を計算せよ。

これは有名な問題で簡単に解ける。
$${\dfrac{1}{k(k+1)}=\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}}$$と変形できるのでこれを用いると、

$${\sum\limits_{k=1}^{n} \dfrac{1}{k(k+1)}\\=(\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{2})+(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{3})+…+(\dfrac{1}{n-1}-\dfrac{1}{n})+(\dfrac{1}{n}-\dfrac{1}{n+1})=1-\dfrac{1}{n+1}}$$

と変形できる。
このように積の形だったものを和の形に直すことを部分分数分解という。
(この手の問題において)部分分数分解する目的は最初と最後の項以外消えて簡単な形で書けるからだ。これは数3の極限でもよく出てくる。
(積分で出てくるのは積分できる形にするため)
逆にこれを応用してやろうというのが今回の趣旨だ。
上の式を一般化してみよう。

一般化してみる

$${\sum\limits_{k=1}^{n} (f(k+1)-f(k))=f(n+1)-f(1)}$$

$${f(k)=\dfrac{1}{k}}$$と思えば(符号に注意して)これは先ほどの問題と同じになる。
この式を用いて等差×等比型の計算をしてみよう。

これを使って解いてみよう!

$${\sum\limits_{k=1}^{n} (2k-1)3^k}$$を計算せよ。

まず上手い$${f(k)}$$を探してくる必要がある。
よって以下の恒等式を考える。
$${(p(k+1)+q)3^{k+1}-(pk+q)3^k=(2k-1)3^k}$$・・・①
(p,qは定数)
これは$${f(k)=(pk+q)3^k}$$としたときの
$${f(k+1)-f(k)}$$を考えていることに他ならない。

ここで①を解いてみると簡単な計算で
$${p=1,q=-2}$$と分かる。
これで上手い$${f(k)}$$が求まった。
すなわち、
$${f(k)=(k-2)3^k}$$より
$${\sum\limits_{k=1}^{n} (2k-1)3^k\\=\sum\limits_{k=1}^{n} (f(k+1)-f(k))=f(n+1)-f(1)=(n-1)3^{n+1}+3}$$

あとは$${n=1}$$などを代入してあっているか確かめればよい。

従来の解き方でも十分であるし様々なサイトで紹介されていないことを考えると「この解法はあまり有用でないように感じる」かもしれない。
よって最後にこの解法を使うことの利点を述べておく。

まず計算のしやすさが最大の利点だろう。
$${f(k)}$$が求まればあとは$${n+1}$$と$${1}$$を代入するだけで求まってしまう。
さらに$${f(k)}$$を求めるステップには恒等式を用いているので計算ミスの発見がが容易である。
まとめると従来の方法より簡単に解けて、計算ミスも発見しやすい。
慣れてしまえばメリットしかない方法だろう。

あとがき的な

この手の問題が入試で必須であるかと言われると微妙なところだと思う。
でもこの考え方自体はよく使う部分分数分解と似ている!と認識することが大切だろう。
ひとつの問題について複数のアプローチ方法を持っているのは検算などにおいて便利だ。
この考え方もストックしておくと良いと思う。

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