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候補者選びに予備選を

岸田政権の今後を占う衆議院議員選挙の補欠選挙が公示され、選挙戦に入っています。その一つが東京15区です。

この東京15区で前回立候補して落選した立憲民主党の元候補者が、立候補に至ったいきさつをX上に公開しています。公示の二週間前に突然、ほかの選挙区から15区に移ることになったというのです。元候補者はこれについて「候補者は有権者が選ぶ前にすでに政党組織のブラックボックスの中で選ばれている。このブラックボックスに焦点を当てなければ良質な政治は担保されない」と指摘しています。

市議会の選挙は、定員が多いのでわたしのような組織のない無所属の候補もがんばれば当選することが可能です。しかし同じ議会選挙でも、定数が限られる政令指定都市や都道府県議会の選挙はそうはいきません。政党によって「指定席」が事実上決まっており、政党の候補者になることが決定的に大事です。政党の候補者になった時点で当選への道が開かれますが、そうでなければよほど個人的な人気がない限り、当選はおぼつきません。

それは衆議院の選挙区選挙にも言えます。わたしは二大政党が切磋琢磨できる体制が好ましいと考えているので、中選挙区制よりいまの小選挙区制の方がよいと考えています。しかし一人しか当選できない小選挙区制では、何人かが当選できた中選挙区制のように無所属で戦うことは事実上不可能です。その選挙区での政党の候補者になることが最大の関門になる訳です。「候補者が有権者ではなく、政党幹部に向いている」と批判される所以です。

アメリカは違います。二大政党制で知られるアメリカですが、民主党と共和党でそれぞれ予備選挙が行われます。わたしは留学中、民主党の連邦下院議員の事務所でインターンをしたことがあるのですが、後継者として立候補した現職議員の息子は本選挙はおろか、予備選挙で負けてしまったのです。世襲が多い日本とは大違いです。

前回のニューヨーク市長選挙も予備選挙がし烈でした。リベラルなニューヨーク市は民主党の牙城であるだけに共和党候補と争う本選挙よりも、民主党内での予備選挙の方が大変です。実現は難しいとは思いますが、政治の信頼を取り戻すには、政治家を強くするには、候補者選定が公明正大な予備選挙の仕組みが大事なのではないかと考えています。

ただ2021年の市長選挙も予想外の展開となりました。当初、知名度も高い新進気鋭の実業家、アンドリュー・ヤン氏が優勢でしたが、予備選挙を勝ち抜いたのは、元警察官でブルックリン区長だったエリック・アダムズ氏でした。アダムズ氏は本選挙も勝利します。世界最大の国際都市でも、結局、地元に根差した政治家がいちばん強いのかと痛感させられました。選挙のやり方には工夫が必要だと思う一方、選挙のもつ本質は古今東西、なかなか変わらないのかもしれません。

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