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手裏剣から考える六角形の不思議

私はいくつかの手裏剣を使って稽古をしているが、大会や練習用に「誰もが平均的に使いやすい手裏剣」をコンセプトとして私が企画した手裏剣は六角形を採用している。
これは工場で大量生産をするにあたり一番効率よくコストを抑えられる素材を探した結果でもある。一般的によく使われ継続して安定供給出来ること、加工の手間をあまり掛けないこと。これがコストを抑える上では重要で、その条件に合ったものの中で手裏剣に使える素材として選んだ。
さらに、私は焼き入れをせずに使っているが、もし焼き入れをしようとした時にきちんと焼きが入る素材であることも重要なポイントだった。つまり、将来性というか、さらに進化する「遊び」を持たせたかったのである。
私が選んだ素材は一定の炭素量がある所謂「炭素鋼」であるため、焼きを入れることも出来る。

六角形の金属棒は現代の精密加工業では頻繁に使われている。
六角形は無駄がない形なのだ。
多角形はいろいろあるが、六角形や四角形は平面のみならず立体の箱に収めてもスキマが出来ず綺麗に収まる。スキマがないということは強度が高いということである。六角形が規則正しくぴったりと並んだ構造は「ハニカム構造」と呼ばれ、最も安定した力を発揮すると言われている。
また、工場で加工に使うマニピュレーターは3点で固定をするから3の倍数である6つの辺と頂点を持つ六角形は非常に使い勝手がいい。
以上の理由から、生産の現場では重宝されており、これを基本としている。
非常に面白いことだが、6というのは偶数でありながら奇数で構成されている数字でもあり、奇数と偶数どちらの面も併せ持っていると言える。
人工的な形のように思われるが自然界において六角形は頻繁に見られる。
有名なところではハチの巣などは六角形がぴったりと並ぶハニカム構造で形成されているし、蜘蛛の巣なども中心部は六角形からスタートする。虫は誰に教えられるでもなくこの最も安定した構造を理解して自らが最も大切な場所を作る。
水晶などの結晶は六角形で形作られる。結晶と言えば雪の結晶を顕微鏡で見てみればこれもまた六角形である。
六角形は人工的なものではなく自然発生的に形作られたとても優れた形状であると言える。
自然とむすび付きの強い六角形はスピリチュアル的にも非常に縁起のいい形状でもある。
日本において六角形は亀甲と呼ばれ吉祥文様としてよく知られている。
亀の甲羅が六角形であることから「丈夫で強い」「硬く身を守る」から転じて「財を守る」とも言われる。さらに亀は長寿の象徴でもあるため、長寿吉兆の願いも込められている。
構造が持つ合理性から生産現場で使われている六角形だが、その合理性は自然法則とも物理法則ともむすび付きが強くとても興味深い。

この六角形を手裏剣に採用したのは効率を求めた結果であるが、偶然だとしても六角形は非常に都合のいい手裏剣になった。
平面との馴染みがいい六角形の手裏剣は手馴染みが非常にいいのだ。手裏剣というのは基本的に包み込むように持つ関係で手のひらや指の様々な部分と点で接する。そのそれぞれの点が上手く面に接してくれるからそう感じるのかもしれない。
私は大きさも様々に四角形や八角形の手裏剣も使う。それぞれにメリットやデメリットがあるが、六角や八角と言った多角形はそのデメリットが比較的少ない。さらに多面のものもあるが、例えば12画以上になれば6で構成されるように、基本的なものは八角以下のものの延長線上にあるものと捉えてよさそうだし、12、24…それ以上多角形になればほぼ丸の領分となる。
六角形というのは伝統的な手裏剣の形状からはやや外れるので私は自分で試作を作ってみて初めて使ってみたが、これからさらに発展していく可能性を十分に感じさせる素材であることは間違いない。
ちなみに伝統的な形状からやや外れるというのは、六角形の手裏剣は存在するし、古い資料でも目にしたことはあるが絶対数が少ないのだ。
手作りで立体を作ると考えればわかりやすいが、一番作りやすいのは円だろう。手作業で真円は難しいとしても、それに近い円は比較的簡単に作ることが出来る。そして、打ち延ばす作業工程から考えても作りやすいのは四角形だ。四角形が出来ればそれを面取りすれば八角形作りやすい。逆に、手作業で三角や六角形は作りにくいから伝統的な手裏剣に六角形は少ないと考えられる。
しかし現代では素体としてすでに用意されているからこれを活用していくことで今後さらにおもしろい発展をしていくのではないかと、期待や様々な願いを込めてしまう。

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