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鎧を探す旅(3)

いつまでだらだら書いているのか。

気持ちも新たに元のフロアに戻って転職活動の相棒となるコートを探します。
いやもう、あんな高い服を見た後なので5万円のコートとも気楽に接することができるはず。魔法が効いてるうちに決めてしまおう。

さっきからずっと気になっているグレーのようなブラウンのような素敵な色のコート。あの色いいなあ。
でも形がトレンチコートなんだよな。
トレンチコート似合わないんだよな。
昔、あまりにも似合わなくて試着室の鏡見てびっくりしたもんな。
撫で肩だからなのか、着た瞬間にガンダムみたいになった。
上半身がロボットみたいだった。
春先にみんな着ているベージュのトレンチコートがなんで私だけこんな不自然?おかしいなあ?

苦い思い出が蘇ったものの、それでも気になるので思い切って店員さんに声をかけて試着させてもらいます。

「すみません。これ、試着してもいいですか?」
「はい。こちら、色がいいですよね。グレーに少しカーキが入っていて。」
「そう!私もこの色いいな、と思って。」

おお、私、大丸のおしゃれな店員さんと自然に会話できてる!すごい!
そうか、この色カーキだったのか。言われてみればそうかも。

鏡の前で着せてもらったところ、首や肩のまわりがゆったりしたデザインだからなのか、ロボット感がなく自然な感じ。これは良い。

「ここのボタンをとめると風が入らなくて暖かいですよ。」
と言われ、そうそう、ボタンが少ないコートは防寒機能が心配なんだよ。気にしてるの私だけじゃないんだな。と納得。

防寒機能も心配ないし、トレンチコート似合わない問題も解決したし、何より色がすごくいい。これにしましょう。書いましょう。

お会計してもらいながらも店員さんとお話しました。
「今日はお仕事帰りですか?」
「いえ、実はこれから転職活動するのですが、普段スーツを着ない仕事なのでスーツに合わせられそうなコートを持っていないので探しに来たのです。」
「難しいですよね。失礼になってはいけませんものね。」
「そうなんですよね。普段着ないもので、何が失礼になるのかもよくわからなくて。難しいですね。」


根っから貧乏人で普段は高い買い物をしないので、私にとって高級品の並ぶデパートは場違いで、そこで働くおしゃれな店員さんは雲の上の存在でしたが、この日は自分でも意外なほど自然に会話できました。
目的を持って予算を決めて挑めば私にもできるものなんだな、と自信をもつことができました。ただ買い物しただけですけどね。
良い社会勉強ができました。

帰りに紳士服売り場の店員さんがアンガールズのジャンガジャンガらしき動きをしてクスクス笑い合っているのを見て、大丸がぐっと身近な存在になりました。

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